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第五章
探究者たち
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「てなわけでこの壁にブチ当たった状態を何とかしたくて環境を変えてみることにしたんだぜ」
「こういうときは気分を変えるために新しいことをするのが一番ですわ」
「冷静に何事もこなせるようにならなきゃいけないものね。過去についてくよくよしてちゃ駄目だもの」
「こんなつまらない話をしてしまってごめんね、ザルムくん」
「いいえ、そんなことはありません。スランプってやつなら誰にだって起こることですよ」
「ふふ、優しいのね」
カティはそう言いながらも、心痛極まれりという表情だった。そうしていると、ギルドに行っていたザルムの仲間たちが帰って来る。
彼らは先輩たちと席を共にしているザルムを見て、何かがあったことは察するも、衝撃的なニュースを予想することはできなかった。
そしてファムとミアは、知っていつつ何もできない。悲しいとも言えないこの状態に、大都市へ行く本人たち以上に当惑してしまうのだった。
歓迎パーティのときと同じように、豪傑の虎亭で送別会が開かれた。あの後、先輩たちはスランプの話をストレンジの残りの冒険者たちにかいつまんで話した。
各々励ましの言葉を述べていくが、それがどれだけ心に響くものだったかはわからない。
ベリウスとザルムは気兼ねなく酒を飲み漁り、カティとアロイスはこんな席でも魔法と錬金術について語り合った。
マデリエネはリュドミーラと今や他愛もないガールズトークまでするようになっていた。
モレノはミアとカイネに囲まれて、ナイフ芸を披露した。カイネが魔法を使って真似をすると、こりゃまいったねとモレノが笑う。
こっそりとミアに渡された手紙を胸の内ポケットに隠しながらだ。
そんな夜が更けていき、いよいよドメラクへの出発の朝、三人は店の前で先輩たちを見送るが、一人だけ自室に籠っている冒険者がいた。
そんなことをするのはアロイスだ。先輩たちがもう行こうとするところで何とか間に合って部屋から出てくる。
「おいおい、アロイス何してたんだ?」
「真面目なあなたが珍しいわね。何かの準備かしら?」
「面白いことしてたですか?」
仲間たちに言われると、アロイスはニコリと笑う。
「ある意味面白いですよ。詳細は秘密ですがおまじないをしておきました。先輩方にはきっと幸運が訪れますよ」
ハッとした顔のザルムとマデリエネにカイネはへえと興味ありげに頷いていた。
「何だかわからねえがありがとうな。それじゃ行ってくるぜ」
「皆さんどうもお世話になりましたわ」
「ファムちゃんもミアちゃんもまた会いましょ」
「またね、皆さん。あっちで名を挙げてくるよ」
火氷風雷の冒険者たちは、そう言って大都市ドメラクへと旅立っていった。
どこか寂しげなファムと悲しげなミアが店内に戻っていくと、おまじないについての質問が始まった。
「なあ、アロイス。どんな古代魔法をかけたんだ?」
「気になるわね。金運上昇とかそんな魔法かしら?」
「いえ、大切なものが見つかるとされている魔法ですよ。それが何なのかは、先輩たちにならわかると思います」
アロイスはそう言って店に戻ってしまった。先輩たちが探しているものが自分たちにはあるだろうかと問うザルムに、経験を積めば何事も問題ないと考えるマデリエネ。
ただカイネだけはなんのことを話してしるのかわからず、首を傾げたまま先輩たちの背中を見送っていた。
先輩たちがドメラクに行ったからといってずっと寂しがっている訳にもいかない。さっそくギルドで収集してきた情報を共有することにした。
暗黙の了解となった席順で椅子に座り、アロイスから報告が始まる。
「今回調べに行った竜穴仙の洞窟ですが、確かに実在することが確認できました」
「斥候ギルドの方でも存在が確認できたわ」
「これで心置きなく捜索できますね。真新しい情報と言えば、秘儀を記したものが保管されているということでしょうか。ですが洞窟には特殊な守りが施されているようで、未だ中に入ることができた人はいないようです。内部がどうなっているのかまでは知識ギルドではわかりませんでした」
「こっちも内部についての情報は無しよ。でも以前探索に行って門前払いを食らった冒険者の手記から正確な位置が割り出せたわ。ゴラドの村から西に三時間のところよ」
「場所まで割り出すなんてすごいと思うです」
「ありがとうカイネちゃん。そういえば聖句については何かわかったかしら?」
「魔族とアンデットに効果がある聖句が何種類かあるってことがわかったです。でも肝心の御言葉がわからなかったです」
「また天から授けられるのかもな。もしかしたら今の時代で聖句を使えるのはカイネだけじゃないか?」
「十分にありえますね。カイネさんの出自のこともありますし」
「だとしたら相当すごいことよね。私まで嬉しくなっちゃうわ」
カイネは何だかくすぐったそうに少し俯いた。耳まで赤くなっているようにも思える。
「と、とにかく洞窟に行ってみるです」
「そうですね。内部の情報がないのは痛いですが、時間はありますしゆっくりと探索しましょう」
冒険者たちは次なる目的のため、冒険の準備を進めていった。
「こういうときは気分を変えるために新しいことをするのが一番ですわ」
「冷静に何事もこなせるようにならなきゃいけないものね。過去についてくよくよしてちゃ駄目だもの」
「こんなつまらない話をしてしまってごめんね、ザルムくん」
「いいえ、そんなことはありません。スランプってやつなら誰にだって起こることですよ」
「ふふ、優しいのね」
カティはそう言いながらも、心痛極まれりという表情だった。そうしていると、ギルドに行っていたザルムの仲間たちが帰って来る。
彼らは先輩たちと席を共にしているザルムを見て、何かがあったことは察するも、衝撃的なニュースを予想することはできなかった。
そしてファムとミアは、知っていつつ何もできない。悲しいとも言えないこの状態に、大都市へ行く本人たち以上に当惑してしまうのだった。
歓迎パーティのときと同じように、豪傑の虎亭で送別会が開かれた。あの後、先輩たちはスランプの話をストレンジの残りの冒険者たちにかいつまんで話した。
各々励ましの言葉を述べていくが、それがどれだけ心に響くものだったかはわからない。
ベリウスとザルムは気兼ねなく酒を飲み漁り、カティとアロイスはこんな席でも魔法と錬金術について語り合った。
マデリエネはリュドミーラと今や他愛もないガールズトークまでするようになっていた。
モレノはミアとカイネに囲まれて、ナイフ芸を披露した。カイネが魔法を使って真似をすると、こりゃまいったねとモレノが笑う。
こっそりとミアに渡された手紙を胸の内ポケットに隠しながらだ。
そんな夜が更けていき、いよいよドメラクへの出発の朝、三人は店の前で先輩たちを見送るが、一人だけ自室に籠っている冒険者がいた。
そんなことをするのはアロイスだ。先輩たちがもう行こうとするところで何とか間に合って部屋から出てくる。
「おいおい、アロイス何してたんだ?」
「真面目なあなたが珍しいわね。何かの準備かしら?」
「面白いことしてたですか?」
仲間たちに言われると、アロイスはニコリと笑う。
「ある意味面白いですよ。詳細は秘密ですがおまじないをしておきました。先輩方にはきっと幸運が訪れますよ」
ハッとした顔のザルムとマデリエネにカイネはへえと興味ありげに頷いていた。
「何だかわからねえがありがとうな。それじゃ行ってくるぜ」
「皆さんどうもお世話になりましたわ」
「ファムちゃんもミアちゃんもまた会いましょ」
「またね、皆さん。あっちで名を挙げてくるよ」
火氷風雷の冒険者たちは、そう言って大都市ドメラクへと旅立っていった。
どこか寂しげなファムと悲しげなミアが店内に戻っていくと、おまじないについての質問が始まった。
「なあ、アロイス。どんな古代魔法をかけたんだ?」
「気になるわね。金運上昇とかそんな魔法かしら?」
「いえ、大切なものが見つかるとされている魔法ですよ。それが何なのかは、先輩たちにならわかると思います」
アロイスはそう言って店に戻ってしまった。先輩たちが探しているものが自分たちにはあるだろうかと問うザルムに、経験を積めば何事も問題ないと考えるマデリエネ。
ただカイネだけはなんのことを話してしるのかわからず、首を傾げたまま先輩たちの背中を見送っていた。
先輩たちがドメラクに行ったからといってずっと寂しがっている訳にもいかない。さっそくギルドで収集してきた情報を共有することにした。
暗黙の了解となった席順で椅子に座り、アロイスから報告が始まる。
「今回調べに行った竜穴仙の洞窟ですが、確かに実在することが確認できました」
「斥候ギルドの方でも存在が確認できたわ」
「これで心置きなく捜索できますね。真新しい情報と言えば、秘儀を記したものが保管されているということでしょうか。ですが洞窟には特殊な守りが施されているようで、未だ中に入ることができた人はいないようです。内部がどうなっているのかまでは知識ギルドではわかりませんでした」
「こっちも内部についての情報は無しよ。でも以前探索に行って門前払いを食らった冒険者の手記から正確な位置が割り出せたわ。ゴラドの村から西に三時間のところよ」
「場所まで割り出すなんてすごいと思うです」
「ありがとうカイネちゃん。そういえば聖句については何かわかったかしら?」
「魔族とアンデットに効果がある聖句が何種類かあるってことがわかったです。でも肝心の御言葉がわからなかったです」
「また天から授けられるのかもな。もしかしたら今の時代で聖句を使えるのはカイネだけじゃないか?」
「十分にありえますね。カイネさんの出自のこともありますし」
「だとしたら相当すごいことよね。私まで嬉しくなっちゃうわ」
カイネは何だかくすぐったそうに少し俯いた。耳まで赤くなっているようにも思える。
「と、とにかく洞窟に行ってみるです」
「そうですね。内部の情報がないのは痛いですが、時間はありますしゆっくりと探索しましょう」
冒険者たちは次なる目的のため、冒険の準備を進めていった。
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