死者と竜の交わる時

逸れの二時

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第五章

帰郷

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カルムからゴラドの村へと地図上で線を引くと、その途中でゲルナードの村を通りかかる。ザルムの指輪のお礼も兼ねて、四人はフィオナの家によって行くことにした。

戸を叩くと元気よくフィオナが出てきて顔を綻ばせてくれる。

アロイスとザルムは新しい仲間たちを紹介し、旅の途中でお礼に寄ったと伝えると、お礼を言うべきなのはこっちなのにと彼女は困惑しながらも家に招き入れてくれた。

カテジナは元気になっており、せっせと家事をしている最中で、アロイスとザルムの来訪に気付くと手を止めてハーブティーを淹れてくれた。

カイネがユリアンに初めましてですと挨拶する傍らで、ザルムはカテジナに指輪の礼を言う。

「カテジナさんからもらったこの指輪、本当に助かってます。ありがとうございます」

「いいえ。指輪がお役に立っているというのは嬉しいことですけれども、私と娘にしてくださったことを考えれば大したものではございません。こちらこそ、改めて感謝します。ザルムさん、アロイスさん」

「カテジナさんのお元気そうなお顔を拝見できて冒険者冥利に尽きる思いです。あれから体調を崩されることはなくなりましたか?」

「はい、おかげさまで。それよりもアロイスさんたちは随分と活躍されているそうですね。何でもジェルグの村ではアンデット絡みの事件を解決なされたとか」

「あれは参りましたよ。痛ましい事件だったので心身共にやられてしまって」

ザルムがハーブティーをすすりながら険しい顔をするので、カテジナは控えめな微笑みを浮かべる。

「それは大変でしたね。優秀な方たちでも苦労は絶えないことでしょう。ですが新しいお仲間ができて心強いのではありませんか?」

「ええ。マデリエネさんとカイネさんはそれぞれ素晴らしい能力をお持ちなので、仲間ながら感謝が絶えないのです」

「よほど信頼していらっしゃるのね。これから洞窟の探索に行かれるというお話でしたし、どうか無理をなさらず」

「もちろん気をつけて行って参ります」


フィオナの家に挨拶がてらに寄ったら、あとはゴラドの村まで一直線。ジャバウォックを倒した塔を横目に進むこと六時間ほど。夕刻になるまでの時間の経過と引き換えに、彼らはゴラドの村にたどり着いた。

まず初めにザルム以外は宿の手配をする。

大都市から遠いこともあってあまり人通りが少ないのだろう。宿は村に一軒しかなかったが、そこまで粗末と言うことはなく、それなりの広さはあった。

宿屋の親父さんは中堅クラスの冒険者が村まで来たと言うだけで愛想良く対応してくれる。

お金の問題だけではなく、単純に自分の宿に人が来てくれると言うだけで嬉しいのだろう。

ザルムはというと、もちろん実家に泊まることにした。質素な家だが竜族の家系だ。他の民家よりは少し大きめの家である。

それだからこそ、火事のときには苦労したのだろう。屋根は雨を何とかしのげるような粗雑な作りで柱も少し欠けている。

一応四人で押しかけてはみたものの、結局宿屋までいって話をすることになった。なにせザルムの家はさらに三人を家に入れることを想定して作られてはいないのだ。

ザルムが冒険者になると言い出したとき、意外にも両親は賛成していた。

もちろん我が子が命を落とすのではないかという恐れはあったが、それよりも自分のしたいことをしてほしいという思いの方が強かったのだろう。さらに言えばザルムの努力を知っていたというのもある。

「火事の前までは外に出てはいけないなんて言っていたけど、あれは間違いだったわね。毎朝剣の訓練をしていたけど、その努力が実ってお母さんは感動したわ」

「そうだなあ。こんなに立派な竜戦士になって俺も誇らしいよ」

ザルムの両親はしみじみと穏やかな目線を向けてくる。ザルムはそれに応えるかのように提案した。

「応援してくれた親父とお袋のおかげでもあるんだぜ? だから家の改装費用を出したいんだ」

そんなことはしなくていいと二人ともザルムを止めるが、ザルムは一向に引かない。結局家の改装費用を出すことになったザルムはそれに携われないことを悔やんだが、今はやりたいことを優先しなさいと両親に言われてここはその通りにすることにしたらしい。

軽く全員に挨拶をしてから、ザルムは両親と共に家に帰って行った。後に残った三人は羨望と憂いを混じった目をしてしまう。

両親にそれぞれ思うところがあるのだ。今日は早めに休みましょうかというマデリエネの言葉に残りの二人は賛同し、三人は各自の部屋へと入っていった。
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