49 / 84
第五章
竜穴仙の洞窟
しおりを挟む
翌日、宿屋の一階に集合した彼らは、宿屋の親父の笑顔を背にして三時間ほどの距離の竜穴仙の洞窟に歩いていく。
道中整備されていない道ということもあって、オオカミに遭遇したりもしたが、特に迷ったりすることなく問題の場所にたどり着く。
事前に調べた通り、見上げれば頂上が見えるくらいの高さの小さな山に不自然な窪みがあるが、ただ窪んでいるだけで先になんて進めるわけがなさそうに思える。
しかしアロイスが原理の力を見る魔法を使えば、何らかの力が働いているのがわかった。だが解除するのは難儀そうで、そう簡単にはいきそうもない。
マデリエネが窪みの周辺を念のために調べてみるが、原理の力が関係する以上、もちろん何もできることはなかった。
困り果てた彼らはザルムに色々試してもらうことにする。ここが作られた目的は竜剣の技を保管し伝えること。であれば竜族が関係しているのではないかと当たりをつけたのだ。
ザルムが手をかざしたり少し叩いてみたりするが、反応はない。剣を抜いて岩肌を切りつけてみてもダメだった。
もはや祈るしかない。ザルムがそう思ったとき、突然、目の前の岩が色を失っていき、最後には消え去ってしまった。
呆気にとられる冒険者たち。
「何をしたんですかザルムさん」
「いや、何もしてないぞ。なんかもう祈るしかないなって思ってたらこうなったんだ」
「どういうことかしら。前の行動が時間差で効果を発揮したとかかしら?」
「ワタシは祈るが正解だと思うです」
カイネの意見に納得する三人。確かに祈って解決しようなんて熟練の冒険者であればあるほど考え付きもしないだろう。
祈ってどうにかなる状況など経験してこないのだから。
「なんにせよ道が開けたな。剣技目指して進んでみるか」
今回ばかりはザルムを先頭にして口の開いた窪みから中に入っていく。
少し歩いて視界が開けると、それは見事な光景が広がっていた。
真っ先に目に飛び込んでくるのは、澄んでいる綺麗な水が滝のようになって上から流れてくる泉だ。それは大きい音にも関わらず心地良さ生み出しており、細かい飛沫が小さな虹を描いている。
右に見える階段状の段差は魔法によって整備されたのか均一の広さの足場になって上へと続いている。最上段から先は下からでは見ることはできないが、奥へと続いていそうだった。
天井部分は穴が開いていて日の光をしっかりと取り入れているため中は十分すぎるほどに明るい。
「美しい洞窟ね。定期的に見に来たいくらいだわ」
「夏には水浴びできそうだと思うです」
「こんな場所が隠されているとは少し勿体ない気もしてしまいますね」
「ここが故郷の近所にあったなんて驚きしかないぜ」
水の流れる音というのは癒しの効果があるようで、滝壺から少し離れたところで四人は滝を眺めている。
しかしその奥のも気になっているザルムは、右の段差を一段一段上がっていった。
登るにつれて見えてきたのは小さな台座。そこには分厚い巻物がひっそりと置かれていた。
マデリエネはゆっくりと台座に近づいて罠を調べるが、何も仕掛けられていないようで、すんなりと台座の巻物を手に取ることができた。彼女はそれを開けることなくザルムに手渡す。
「罠がないとは思わなかったわ。確実にあると思ったからあなたの代わりに取るところまでやってみたけど」
「助かるぜ。それで中身の方は……と」
ザルムが巻物を広げると、そこには剣を持った竜族の絵が描かれていて、その横につらつらと細かい文字が並んでいる。
さわりの部分だけでもと読み始めたザルムだが、次第に読み進める速度が速くなって結局すべてに軽く目を通す。
しかしながら彼は満足とは程遠い顔をしていた。
「なんだこれ。基礎中の基礎しか書かれてないぞ?」
「本当ですか? それは不思議ですね」
「そんなことがあるの?」
「ザルムさんには竜剣の技術が既に備わっているですか?」
カイネが聞くのにザルムはブンブン首を振る。
「そんな訳ないぜ。竜剣技は一つしか覚えてない」
どういうことか考えあぐねる四人。だがずっと黙っているわけにもいかずにカイネは励ますように言った。
「まだ全部探索終わってないです。もしかしたら他の場所にも何かあるかもです」
「そう……だな……」
しょんぼりと落ち込むザルムを励まして、洞窟全体を調べることにした。
道中整備されていない道ということもあって、オオカミに遭遇したりもしたが、特に迷ったりすることなく問題の場所にたどり着く。
事前に調べた通り、見上げれば頂上が見えるくらいの高さの小さな山に不自然な窪みがあるが、ただ窪んでいるだけで先になんて進めるわけがなさそうに思える。
しかしアロイスが原理の力を見る魔法を使えば、何らかの力が働いているのがわかった。だが解除するのは難儀そうで、そう簡単にはいきそうもない。
マデリエネが窪みの周辺を念のために調べてみるが、原理の力が関係する以上、もちろん何もできることはなかった。
困り果てた彼らはザルムに色々試してもらうことにする。ここが作られた目的は竜剣の技を保管し伝えること。であれば竜族が関係しているのではないかと当たりをつけたのだ。
ザルムが手をかざしたり少し叩いてみたりするが、反応はない。剣を抜いて岩肌を切りつけてみてもダメだった。
もはや祈るしかない。ザルムがそう思ったとき、突然、目の前の岩が色を失っていき、最後には消え去ってしまった。
呆気にとられる冒険者たち。
「何をしたんですかザルムさん」
「いや、何もしてないぞ。なんかもう祈るしかないなって思ってたらこうなったんだ」
「どういうことかしら。前の行動が時間差で効果を発揮したとかかしら?」
「ワタシは祈るが正解だと思うです」
カイネの意見に納得する三人。確かに祈って解決しようなんて熟練の冒険者であればあるほど考え付きもしないだろう。
祈ってどうにかなる状況など経験してこないのだから。
「なんにせよ道が開けたな。剣技目指して進んでみるか」
今回ばかりはザルムを先頭にして口の開いた窪みから中に入っていく。
少し歩いて視界が開けると、それは見事な光景が広がっていた。
真っ先に目に飛び込んでくるのは、澄んでいる綺麗な水が滝のようになって上から流れてくる泉だ。それは大きい音にも関わらず心地良さ生み出しており、細かい飛沫が小さな虹を描いている。
右に見える階段状の段差は魔法によって整備されたのか均一の広さの足場になって上へと続いている。最上段から先は下からでは見ることはできないが、奥へと続いていそうだった。
天井部分は穴が開いていて日の光をしっかりと取り入れているため中は十分すぎるほどに明るい。
「美しい洞窟ね。定期的に見に来たいくらいだわ」
「夏には水浴びできそうだと思うです」
「こんな場所が隠されているとは少し勿体ない気もしてしまいますね」
「ここが故郷の近所にあったなんて驚きしかないぜ」
水の流れる音というのは癒しの効果があるようで、滝壺から少し離れたところで四人は滝を眺めている。
しかしその奥のも気になっているザルムは、右の段差を一段一段上がっていった。
登るにつれて見えてきたのは小さな台座。そこには分厚い巻物がひっそりと置かれていた。
マデリエネはゆっくりと台座に近づいて罠を調べるが、何も仕掛けられていないようで、すんなりと台座の巻物を手に取ることができた。彼女はそれを開けることなくザルムに手渡す。
「罠がないとは思わなかったわ。確実にあると思ったからあなたの代わりに取るところまでやってみたけど」
「助かるぜ。それで中身の方は……と」
ザルムが巻物を広げると、そこには剣を持った竜族の絵が描かれていて、その横につらつらと細かい文字が並んでいる。
さわりの部分だけでもと読み始めたザルムだが、次第に読み進める速度が速くなって結局すべてに軽く目を通す。
しかしながら彼は満足とは程遠い顔をしていた。
「なんだこれ。基礎中の基礎しか書かれてないぞ?」
「本当ですか? それは不思議ですね」
「そんなことがあるの?」
「ザルムさんには竜剣の技術が既に備わっているですか?」
カイネが聞くのにザルムはブンブン首を振る。
「そんな訳ないぜ。竜剣技は一つしか覚えてない」
どういうことか考えあぐねる四人。だがずっと黙っているわけにもいかずにカイネは励ますように言った。
「まだ全部探索終わってないです。もしかしたら他の場所にも何かあるかもです」
「そう……だな……」
しょんぼりと落ち込むザルムを励まして、洞窟全体を調べることにした。
0
あなたにおすすめの小説
推しがラスボスなので救いたい〜ゲーマーニートは勇者になる
ケイちゃん
ファンタジー
ゲームに熱中していた彼は、シナリオで現れたラスボスを好きになってしまう。
彼はその好意にラスボスを倒さず何度もリトライを重ねて会いに行くという狂気の推し活をしていた。
だがある日、ストーリーのエンディングが気になりラスボスを倒してしまう。
結果、ラスボスのいない平和な世界というエンドで幕を閉じ、推しのいない世界の悲しみから倒れて死んでしまう。
そんな彼が次に目を開けるとゲームの中の主人公に転生していた!
主人公となれば必ず最後にはラスボスに辿り着く、ラスボスを倒すという未来を変えて救いだす事を目的に彼は冒険者達と旅に出る。
ラスボスを倒し世界を救うという定められたストーリーをねじ曲げ、彼はラスボスを救う事が出来るのか…?
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
才能は流星魔法
神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎に住んでいる遠藤井尾は、事故によって気が付けばどこまでも広がる空間の中にいた。
そこには巨大な水晶があり、その水晶に触れると井尾の持つ流星魔法の才能が目覚めることになる。
流星魔法の才能が目覚めると、井尾は即座に異世界に転移させられてしまう。
ただし、そこは街中ではなく誰も人のいない山の中。
井尾はそこで生き延びるべく奮闘する。
山から降りるため、まずはゴブリンから逃げ回りながら人の住む街や道を探すべく頂上付近まで到達したとき、そこで見たのは地上を移動するゴブリンの軍勢。
井尾はそんなゴブリンの軍勢に向かって流星魔法を使うのだった。
二日に一度、18時に更新します。
カクヨムにも同時投稿しています。
銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~
雪野湯
ファンタジー
王立錬金研究所の研究員であった元貴族ケントは政治家に転向するも、政争に敗れ左遷された。
左遷先は領民のいない呪われた大地を抱く廃城。
この瓦礫に埋もれた城に、世界で唯一無二の不思議な銀眼を持つ男は夢も希望も埋めて、その謎と共に朽ち果てるつもりでいた。
しかし、運命のいたずらか、彼のもとに素晴らしき仲間が集う。
彼らの力を借り、様々な種族と交流し、呪われた大地の原因である未踏遺跡の攻略を目指す。
その過程で遺跡に眠っていた世界の秘密を知った。
遺跡の力は世界を滅亡へと導くが、彼は銀眼と仲間たちの力を借りて立ち向かう。
様々な苦難を乗り越え、左遷王と揶揄された若き青年は世界に新たな道を示し、本物の王となる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる