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第八章
死刑宣告
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アロイスたちが出発してから、その日を含めて二日が経ち、さらに三日目に突入する。もうずいぶん長いこと歩いては休んでを繰り返して迎えたその日、朝から続く曇天からは、太陽の光があまり差し込んでこない。
マデリエネはそれでも時間の感覚を失ったりはしないが、そのおかげで不安を抱えてもいた。アロイスの話では、順調にいけば三日目のどこかで合流できるかもしれないとのことだったのだ。
スレイプニルの足ならば出発した日にはもうテロフィの街に着くくらいで、あとは治療に数時間。それが終わればまたあのとんでもない速さの馬に乗っているはずだ。
しかしこちらも今日という日を迎えてからもうそれなりの時間歩いたのだが、まだ目立つ軍馬の姿は見えてこない。ザルムがそれに気付き始める頃には、彼女の不安は確信に変わっていた。何かがあったのだ。
アロイスがスレイプニルの制御に失敗して予定よりも遅く街に着いたのか。それとも治療に手間取っているのか。治療は終わったが、アロイスが力を使い切って馬を呼べなかったのか。
可能性はいろいろあったが、考えても答えは出ない。こうなってはもうどうしようもなく、今できることをするしかなかった。それはいち早くテロフィの街に着くことだ。
マデリエネは仲間に声をかけて少しペースを上げるように提案した。それによって仲間たちも危機感を覚え始めることになるが、彼らを心配させようがさせまいが事実は、今起こっていることは何も変わらない。聡明な彼女は、こうして正しい決断をした。
司祭の力も限界に近い。アロイスはそう感じていた。
天馬の制御に加え、門番の厄介な質問攻めにも上手く答えた。ここに来た理由、この街の領主の病気の件だって隠し通すことができた。
それなのに肝心の治療がはかどらなかったのだ。もう何日もこの状態で、領主を治すことはできないと思われた。
これは決してイングヴァル司祭のせいではない。領主にかけられた“呪い”が強力すぎたのだ。
司祭が最大まで拡大した10レベル魔法“リカバリー”の魔法でさえ一歩及ばない。これではもうどうしようもない。
しかもかけられた呪いの内容は死を招くもの。力を奪うだけ奪ってさらに命までも奪うというシンプルだが危険な魔法だった。これではまるで死刑宣告だ。
天賦の恵水を余計に汲んでおけばアロイスが思ったとき、入られては困りますと領主の下働きをしていた女性の声が聞こえた。その次には領主の寝室の戸が豪快に開けられる。
強引に入ってくるのはストレンジの冒険者たち。
その彼らはイングヴァル司祭とアロイスが手詰まりに陥っているのはとっくに予測済みだったようで、カイネがすぐにアロイスと司祭の間に割って入った。
それを下働きの女性は止めようとするが、イングヴァル司祭は大丈夫だと言って彼女を下がらせてくれた。
「アロイスさん、ここはワタシと領主様だけにしてほしいです」
「……そうですか。カイネさんがそうおっしゃるのならそうしましょう。では行きましょうか、イングヴァル司祭様」
アロイスがすんなりと引くのを見て、司祭は困惑する。自分でも解呪できないのにどうするつもりなのか皆目見当もつかないのだから。
だがもちろんアロイスには心当たりがあった。彼女には彼女にしかない力がある。あの聖なる力だ。
彼女を信頼してくださいというザルムの後押しもあって、イングヴァル司祭は他の冒険者と一緒に部屋の外に出た。そこからマデリエネは、下働きの女性も含めて全員が領主の部屋から離れるように誘導した。
領主が良くなったときのための食事の用意は出来ているかや、自分たちも休みたいと、少々無礼ながらももてなしを期待する発言をしたのだ。
これによって一応不満そうな顔をされながらも、全員応接間のような場所に通される。
ところがイングヴァル司祭は応接間の上品なソファに座る直前で、大胆にふらついてしまった。
ザルムが素早くその支えに入る。司祭はアロイスの読み通り、長時間の集中で疲労しきっていたのだ。
ゲルセルが気を利かせて下働きの女性に休める場所を聞いてくれる。すると二階に客間があるそうで、とにかくそこに司祭様を運んでしばらく休んでもらうことにした。
司祭様を寝かせてから応接間に戻り、アロイスとその他でお互いに何があったのかを報告し合う。
アロイスは馬で出発したその日にテロフィの街について、そこから司祭と共に領主の状態を確認した。
しかしこれが予想外にも強力な呪いであることがわかり、その日は一旦休んで、次の日にイングヴァル司祭が儀式をすることになった。
アロイスはその儀式の効果を高めて補助するために街で香料や特殊な加工がされた木の枝など、色々と準備に回っていたそうだ。
それでも儀式は上手くいかずに結局解呪は失敗に終わる。そうであっても諦めるわけにはいかず、なんとか呪いの進行を抑えるため、領主の彼に自分たちの力を全力で注ぎこんでいたというのが経緯らしい。
アロイスがそうしていた間、残りのメンバーはテロフィまでの残りの旅路を急いでいたのだが、そのときにカイネがまた天からの声を聞いた。
その言葉はテロフィの領主が呪いに苦しんでいるらしいことや、肝心の聖句について述べていたのだそうだ。領主が苦しんでいる原因が病気ではなく呪いだということがそこで明らかになり、より一層早く着かなくてはという思いが強くなったのだった。
マデリエネはそれでも時間の感覚を失ったりはしないが、そのおかげで不安を抱えてもいた。アロイスの話では、順調にいけば三日目のどこかで合流できるかもしれないとのことだったのだ。
スレイプニルの足ならば出発した日にはもうテロフィの街に着くくらいで、あとは治療に数時間。それが終わればまたあのとんでもない速さの馬に乗っているはずだ。
しかしこちらも今日という日を迎えてからもうそれなりの時間歩いたのだが、まだ目立つ軍馬の姿は見えてこない。ザルムがそれに気付き始める頃には、彼女の不安は確信に変わっていた。何かがあったのだ。
アロイスがスレイプニルの制御に失敗して予定よりも遅く街に着いたのか。それとも治療に手間取っているのか。治療は終わったが、アロイスが力を使い切って馬を呼べなかったのか。
可能性はいろいろあったが、考えても答えは出ない。こうなってはもうどうしようもなく、今できることをするしかなかった。それはいち早くテロフィの街に着くことだ。
マデリエネは仲間に声をかけて少しペースを上げるように提案した。それによって仲間たちも危機感を覚え始めることになるが、彼らを心配させようがさせまいが事実は、今起こっていることは何も変わらない。聡明な彼女は、こうして正しい決断をした。
司祭の力も限界に近い。アロイスはそう感じていた。
天馬の制御に加え、門番の厄介な質問攻めにも上手く答えた。ここに来た理由、この街の領主の病気の件だって隠し通すことができた。
それなのに肝心の治療がはかどらなかったのだ。もう何日もこの状態で、領主を治すことはできないと思われた。
これは決してイングヴァル司祭のせいではない。領主にかけられた“呪い”が強力すぎたのだ。
司祭が最大まで拡大した10レベル魔法“リカバリー”の魔法でさえ一歩及ばない。これではもうどうしようもない。
しかもかけられた呪いの内容は死を招くもの。力を奪うだけ奪ってさらに命までも奪うというシンプルだが危険な魔法だった。これではまるで死刑宣告だ。
天賦の恵水を余計に汲んでおけばアロイスが思ったとき、入られては困りますと領主の下働きをしていた女性の声が聞こえた。その次には領主の寝室の戸が豪快に開けられる。
強引に入ってくるのはストレンジの冒険者たち。
その彼らはイングヴァル司祭とアロイスが手詰まりに陥っているのはとっくに予測済みだったようで、カイネがすぐにアロイスと司祭の間に割って入った。
それを下働きの女性は止めようとするが、イングヴァル司祭は大丈夫だと言って彼女を下がらせてくれた。
「アロイスさん、ここはワタシと領主様だけにしてほしいです」
「……そうですか。カイネさんがそうおっしゃるのならそうしましょう。では行きましょうか、イングヴァル司祭様」
アロイスがすんなりと引くのを見て、司祭は困惑する。自分でも解呪できないのにどうするつもりなのか皆目見当もつかないのだから。
だがもちろんアロイスには心当たりがあった。彼女には彼女にしかない力がある。あの聖なる力だ。
彼女を信頼してくださいというザルムの後押しもあって、イングヴァル司祭は他の冒険者と一緒に部屋の外に出た。そこからマデリエネは、下働きの女性も含めて全員が領主の部屋から離れるように誘導した。
領主が良くなったときのための食事の用意は出来ているかや、自分たちも休みたいと、少々無礼ながらももてなしを期待する発言をしたのだ。
これによって一応不満そうな顔をされながらも、全員応接間のような場所に通される。
ところがイングヴァル司祭は応接間の上品なソファに座る直前で、大胆にふらついてしまった。
ザルムが素早くその支えに入る。司祭はアロイスの読み通り、長時間の集中で疲労しきっていたのだ。
ゲルセルが気を利かせて下働きの女性に休める場所を聞いてくれる。すると二階に客間があるそうで、とにかくそこに司祭様を運んでしばらく休んでもらうことにした。
司祭様を寝かせてから応接間に戻り、アロイスとその他でお互いに何があったのかを報告し合う。
アロイスは馬で出発したその日にテロフィの街について、そこから司祭と共に領主の状態を確認した。
しかしこれが予想外にも強力な呪いであることがわかり、その日は一旦休んで、次の日にイングヴァル司祭が儀式をすることになった。
アロイスはその儀式の効果を高めて補助するために街で香料や特殊な加工がされた木の枝など、色々と準備に回っていたそうだ。
それでも儀式は上手くいかずに結局解呪は失敗に終わる。そうであっても諦めるわけにはいかず、なんとか呪いの進行を抑えるため、領主の彼に自分たちの力を全力で注ぎこんでいたというのが経緯らしい。
アロイスがそうしていた間、残りのメンバーはテロフィまでの残りの旅路を急いでいたのだが、そのときにカイネがまた天からの声を聞いた。
その言葉はテロフィの領主が呪いに苦しんでいるらしいことや、肝心の聖句について述べていたのだそうだ。領主が苦しんでいる原因が病気ではなく呪いだということがそこで明らかになり、より一層早く着かなくてはという思いが強くなったのだった。
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