死者と竜の交わる時

逸れの二時

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第八章

抗い

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アロイスが儀式をする間、残りの冒険者たちはさらに上のレベルの冒険者に会うために再びギルドにやってきて彼らの居場所を聞いて回った。ところが聞けたのは良くない知らせだった。

全員呪いによって死んでしまったらしいのだ。こうも簡単に高レベルの冒険者が倒されてしまうというだけで事の大きさがよくわかる。相手の計画とやらはかなり念入りのようだ。

「まさか残りの冒険者まであっさりやられるとはな。これはいよいよ世界の終わりかもな」

「そんなのダメです。こうなってしまうのならワタシたちだけでこの大陸を守るです!」

「本当にそうなりそうで困ったものだわ。事前にしっかりと準備しておいた方が良さそうね」

「襲撃に……備える……のか……」

「船団は来ると見ていいと思うぜ。危機に対処できる人間が狙われているのは明らかだからな」

「どんどん追い込まれてはきているけど、カイネちゃんのおかげで襲撃に備えられるのは大きいわ。向こうも予知夢があるとは思ってもいないでしょう」

「どんな備えをするですか?」

「それは私に任せて頂戴。罠を張り巡らせるのは私の得意技なのよ。今まで日の目を見なかったけど、ここで活用させてもらうわよ」

マデリエネが道中にいろいろと使えそうな罠を考えている内に、アロイスがいる宿に着いた。アロイスは援軍が期待できないことにガッカリしていたが、悪魔の力を借りることには成功したようで、さっそくその恩恵を受けていた。

知覚魔法と召喚魔法の応用によって海上に浮かぶ大量の船団の姿を盗み見ることができたのだ。

それを聞いて襲撃があることが確定し、恐ろしくなる気持ちもある。だがどの道把握していようがしていまいが現実は現実だ。彼らは襲って来る船の数をおおまかに認識することができてさらにどうやって対処するかをもう話し合っていた。

言うほど簡単なことではないことはみんな理解している。先輩たちも含めてたった九人で百以上の幽霊船を相手にしなければならない。

小さな船がほとんどだが大型船も数隻あるし、中にどれだけのアンデッドが存在しているかなど想像もしたくない。

だからこそ、目を背けるのではなくて直視するほどでなくてはならないのだ。

先輩たちにも情報を共有しておかなければということになり、再び冒険者の店、ファーストライトまで足を運んだ。

襲撃が実際にあることが確認できたと伝えると、先輩四人は驚く。カイネの予知能力についてもそう。そしてアロイスの魔法の才能についてもだ。

もはや嘘をついている場合ではなくなったため、すべての魔法系統に適性があることと、カイネには聖句という神聖な力を扱うことができるとも話した。

それで呪いの治療が可能だったことも併せて説明すれば納得してもらえる。

強すぎる力を隠していたことによくない反応をされることも覚悟していた二人だったが、そんなことはなくむしろ褒められた。警戒心は冒険者にとって命を救うものだとわかっているからこそだろう。

ともかく、火氷風雷の先輩たちには東のイゼオル海岸を固めてもらい、ストレンジは西のウェレン海岸を守ることになった。アロイスの予想通り、彼の探知魔法は東西からの侵略を捉えたのだ。

船がこの大陸に到着するまで、おそらくあと一か月くらい。ドメラクからウェレン海岸までは四日の距離だ。

それを考えてドメラクで必要なものを揃え、罠の準備をする必要がある。綿密に計画を立てて相手が攻めてくるまでに間に合わせるのだ。

この戦いは間違いなく生きるか死ぬかの戦いだ。だから本当はこのことをこの大陸に住む多くの人に伝えるべきなのかもしれない。

だが冒険者たちはそうしなかった。他の冒険者たちにもだ。

民衆に知らせれば無駄にパニックを生むだけ。実力のない冒険者に応援を求めても、アンデッドにされて戦力として取り込まれるだけなのだ。

誰もそんな素振りは見せないが、気を抜けば絶望感が襲いかかってくる。

しかし先輩冒険者たちは特にいつもと変わらない様子で事に当たっていた。ストレンジの冒険者もだ。

カルムの街に行って自室においてある物を回収しがてらファムにはすべて話していく。唖然とした彼だが、不思議と表情はそんなに暗くなかった。

むしろ是非頑張ってくれと他人事にも聞こえてしまうような口調だ。信頼されていると受け取って、冒険者たちは立てた計画に従って行動を始めた。

とは言ってもアロイスとマデリエネが罠の設置に、その他のメンバーはより強くなるために猛特訓をするくらいだ。

アロイスが罠の設置というのは創成魔法を使ってのこと。物を創りだすというのは疲労が大きく、集中力が削られるのがマデリエネの視点でも伝わってくる。

ところがそれはお互い様で、アロイスの視点からもマデリエネが疲れていくのがよくわかった。罠というのは時には自分を傷つけうることもあり扱いには慎重にならなくてはならない。

さらにはこの罠がのちの命運を決めると思えば相当なプレッシャーもあるだろう。

そういうわけで、お互いに労いながら集中を切らさないように会話しながら、念入りに準備をしていった。
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