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第二章 救いを追い求めて
侵入
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荒廃した大地。朱くも見える砂の吹きすさぶ地に、小さくて細長く尖った緑の植物がささやかに紅の花を咲き誇らせる。
一点、また一点と離れ離れに咲く花々は、風を纏って砂が舞う平坦な景色に彩りを添える。遠くに見える山々はその大きな姿を蜃気楼に歪ませて、微かな背景となって辺りに溶け込んでいた。
空中に浮くカイルはそんな景色の中を苦も無くスイスイと進んでいる。吹き付ける砂混じりの風も、太陽から来るうだるような猛暑も、自身を包む球形の魔力の防護壁で防いでいる。
特に何事もなく長いことそのまま進めば、やがて目的の地へと到着する。デコボコな三角形の形をした巨大な岩山に、人間の生み出した建造物が融合する古代の遺跡が鎮座する場所。岩を切り出して見事に造形されたそれは、神殿のような柱とそれを彩る独特な装飾で構成されている。
その色彩は朱い土の色ほぼ一色といって良いのに、精密に作られた建物の技術と砂の僅かな明暗が生み出すグラデーションで、不思議と飽きを感じることはない。自然を上手く取り込んで作り上げられたこの遺跡は、人類の遺産といっても良いものであった。
カイルはその遺跡の入り口、縦に長い空洞から浮遊したまま中に入ろうとする。ところがすぐさま遺跡の入り口の両端にいた二人の男が彼を呼び止めた。恐らくずっとそこにいたのだろうが、取るに足らない存在が故に、カイルの目には全く入っていなかったようだ。
「お、おい、そこのお前。堂々と人様の領地に踏み込むとはいい度胸だな」
「兄貴! コイツ、う、浮いてやがるぜ……。さてはお前、魔術師だな!?」
彼らはオロオロしながらも、カイルが浮遊していることに驚きを隠せないようだ。だがカイルはそんな彼らの様子に微塵も構うことなく、あまりにも自然な動作でいきなり彼らの命を奪い去った。
【凍てつく棺】
それぞれの足元に展開された魔法陣から即座に、周囲に冷気を放つ氷が現れて彼らの体を足から覆っていく。慌てふためいて、もはや何を言っているかわからない男たちは、なんの抵抗もできずに徐々に凍りついていく。
そして透き通る氷はものの数秒の内、男たちを完全に閉じ込めてついに彫刻のように固めてしまった。カイルはそれを横目で眺めながら、何の反応もせず改めて遺跡の中へと入っていった。
薄暗く見えた遺跡の中はランタンや松明が至る所に設置されていて実際はそれなりの明るさが確保してあり、進むだけであれば苦労することはない。外から見た岩山が巨大だったこともあり、奥行きもかなりあって高さも十分。広い空間が岩の壁で区切られて非常に複雑な内部構造になっているようだ。
カイルはなぜか道を知っているかのように全く迷うことなく中央の最も広い通路を選んで、遺跡の中心部を目指し始めた。明かりは確保されてはいるものの、ランタンと松明の火の光ではさすがに通路の遥か先まではなかなか見通すことができない。
不気味な暗がりが広がる中、壁際に取り付けられた松明の火は先ほどから微かに揺れて、カイルの影もそれに合わせて蠢いている。入り口の他にも外に続く場所はあるようだが、風の流れから考えてカイルが進む通路の先というわけではなさそうだった。
くぐもった土の匂いが漂って来る通路。その先からはずっと小さな振動が低い鼓動になって響いてきているが、カイルは臆することなくそこを一定の速さで進んでいる。
するとしばらくして先の方から足音が反響して聞こえてきた。おそらく三人だと思われる足跡はどんどんとこちらへと近づいて来ているようだ。おそらく彼らはカイルの存在には気付いていないのだろう。何か他愛もない話をしながら無警戒にもやってくる粗野な身なりの男たち。
彼らは、わき道から大きな通路に出た途端に、なんといきなりカイルからの不意打ち攻撃を受ける。
【黒曜石の投槍】
光沢を放ち黒光りする大きな槍が空中から三本射出される。それらはすべてドスッという、人間の体をいとも簡単に貫く音を立てて後ろの地面に突き刺さる。
カイルと邂逅した人間たちは、心臓や喉を貫かれたことで声も出せずに瞬時に絶命した。彼らから滴り流れる血をものともせず、カイルは浮遊してそれらを飛び越え、さらに先へと進んでいった。
相変わらず、人を殺しても無表情のままで。
一点、また一点と離れ離れに咲く花々は、風を纏って砂が舞う平坦な景色に彩りを添える。遠くに見える山々はその大きな姿を蜃気楼に歪ませて、微かな背景となって辺りに溶け込んでいた。
空中に浮くカイルはそんな景色の中を苦も無くスイスイと進んでいる。吹き付ける砂混じりの風も、太陽から来るうだるような猛暑も、自身を包む球形の魔力の防護壁で防いでいる。
特に何事もなく長いことそのまま進めば、やがて目的の地へと到着する。デコボコな三角形の形をした巨大な岩山に、人間の生み出した建造物が融合する古代の遺跡が鎮座する場所。岩を切り出して見事に造形されたそれは、神殿のような柱とそれを彩る独特な装飾で構成されている。
その色彩は朱い土の色ほぼ一色といって良いのに、精密に作られた建物の技術と砂の僅かな明暗が生み出すグラデーションで、不思議と飽きを感じることはない。自然を上手く取り込んで作り上げられたこの遺跡は、人類の遺産といっても良いものであった。
カイルはその遺跡の入り口、縦に長い空洞から浮遊したまま中に入ろうとする。ところがすぐさま遺跡の入り口の両端にいた二人の男が彼を呼び止めた。恐らくずっとそこにいたのだろうが、取るに足らない存在が故に、カイルの目には全く入っていなかったようだ。
「お、おい、そこのお前。堂々と人様の領地に踏み込むとはいい度胸だな」
「兄貴! コイツ、う、浮いてやがるぜ……。さてはお前、魔術師だな!?」
彼らはオロオロしながらも、カイルが浮遊していることに驚きを隠せないようだ。だがカイルはそんな彼らの様子に微塵も構うことなく、あまりにも自然な動作でいきなり彼らの命を奪い去った。
【凍てつく棺】
それぞれの足元に展開された魔法陣から即座に、周囲に冷気を放つ氷が現れて彼らの体を足から覆っていく。慌てふためいて、もはや何を言っているかわからない男たちは、なんの抵抗もできずに徐々に凍りついていく。
そして透き通る氷はものの数秒の内、男たちを完全に閉じ込めてついに彫刻のように固めてしまった。カイルはそれを横目で眺めながら、何の反応もせず改めて遺跡の中へと入っていった。
薄暗く見えた遺跡の中はランタンや松明が至る所に設置されていて実際はそれなりの明るさが確保してあり、進むだけであれば苦労することはない。外から見た岩山が巨大だったこともあり、奥行きもかなりあって高さも十分。広い空間が岩の壁で区切られて非常に複雑な内部構造になっているようだ。
カイルはなぜか道を知っているかのように全く迷うことなく中央の最も広い通路を選んで、遺跡の中心部を目指し始めた。明かりは確保されてはいるものの、ランタンと松明の火の光ではさすがに通路の遥か先まではなかなか見通すことができない。
不気味な暗がりが広がる中、壁際に取り付けられた松明の火は先ほどから微かに揺れて、カイルの影もそれに合わせて蠢いている。入り口の他にも外に続く場所はあるようだが、風の流れから考えてカイルが進む通路の先というわけではなさそうだった。
くぐもった土の匂いが漂って来る通路。その先からはずっと小さな振動が低い鼓動になって響いてきているが、カイルは臆することなくそこを一定の速さで進んでいる。
するとしばらくして先の方から足音が反響して聞こえてきた。おそらく三人だと思われる足跡はどんどんとこちらへと近づいて来ているようだ。おそらく彼らはカイルの存在には気付いていないのだろう。何か他愛もない話をしながら無警戒にもやってくる粗野な身なりの男たち。
彼らは、わき道から大きな通路に出た途端に、なんといきなりカイルからの不意打ち攻撃を受ける。
【黒曜石の投槍】
光沢を放ち黒光りする大きな槍が空中から三本射出される。それらはすべてドスッという、人間の体をいとも簡単に貫く音を立てて後ろの地面に突き刺さる。
カイルと邂逅した人間たちは、心臓や喉を貫かれたことで声も出せずに瞬時に絶命した。彼らから滴り流れる血をものともせず、カイルは浮遊してそれらを飛び越え、さらに先へと進んでいった。
相変わらず、人を殺しても無表情のままで。
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