【番外編完結】婚約破棄された令嬢は忘れられた王子に拾われる

雑食ハラミ

文字の大きさ
17 / 55
2.学園編

第17章 帝国の皇太子

しおりを挟む
アッシャー帝国のロジャー皇太子が学園に3ヶ月の短期留学という形でマール帝国に滞在する噂はあっという間に広がった。とんとん拍子に話は進み、10日もすれば実際に学園に姿を現すという話になった。もっとも、正確な日付けは分かっておらず、だんだん日にちが近づいてくると、今か今かと生徒の期待と不安は最高潮に達した。



「最近学園がざわついているな。アッシャー帝国との交流が再開するだけでも大ニュースなのに、学園が舞台となるんじゃ、みんな勉強どころじゃないだろう」



 グランは食堂を見回しながら呟いた。登下校以外に、男子と女子が出会う場は昼休みしかないので、普段より食堂は混んでいた。食堂で昼食を摂らない者も、皇太子が現れるかもと期待して集まっているのだ。



「殿下は既に皇太子に会ったんでしょう? どんな人でした?」



「うーん……僕の上位互換、かな」



 マクシミリアンは皿から顔を上げず、うつむいたままぼそっと答えた。実際、数日前にアレックスと一緒にロジャーに会ったが、余り皆に教えたくなる話ではなかった。



「何をおっしゃいますの。殿下は殿下ですわよ。ワンアンドオンリー、唯一無二、世界に一つだけの花ですわ」



「最後のは何なんだよ。ところで、殿下は皇太子の相手をせずに俺たちとここにいていいんですか?」



 ドンがクラウディアに突っ込みを入れつつ、マクシミリアンに尋ねる。



「うん。アレックスが一人でやるからいいと言われた」



 実際は、父には「二人で協力しろ」と言われたが、後でアレックスに「お前は何もするな」と言われたのだ。マクシミリアンを気遣ったというよりも、拒絶に近い言い方だった。



 にわかに食堂の入り口が騒然とした。すごい人だかりができている。周りの生徒がヒソヒソと「来たぞ」「今日だったのか」と会話している。



「おっ、来たな。帝国の皇太子サマが」



「これじゃいい見世物ね。もう皇帝の補佐として働いているというのに、今更学園で何を学ぶのかしら。これから3ヶ月ずっとこんな感じですの?」



 クラウディアは余り興味がないらしく、呆れたようにため息をついた。マクシミリアンに関係なければどうでもいいらしい。



 やがて、クラウディアたちのいるところからも、人の群れの隙間から皇太子一行の姿が見えるようになった。どんな人込みでもロジャーがぱっと目立つのは、身長が頭一つ抜けているからだけではない。まだ若いというのに生まれながらにして皇帝として生きるべく運命づけられた風格のようなものが備わっていた。人を威圧するような堂々とした佇まい、よく引き締まった体躯、肩まで伸ばした髪は後ろで一つにまとめ、片耳には金のピアスをしている。端麗さと精悍さを兼ね備えた容貌は、女子生徒の目を引きつけた。アッシャー帝国人に特有の、漆黒の髪と瞳はマクシミリアンのそれと同じなのに、与える印象はまるで違う。肌も王国人よりは浅黒く野性味あふれ、王子様のイメージぴったりなアレックスと並ぶと二人は好対照だった。ただ、ロジャーの方が自信と威圧感を備えており、この場の空気を支配しているのは自分だと自覚しているようである。アレックスの説明に笑みを浮かべながら聞いていても、鋭い目力は隠していないし、アウェーの場所にいることをむしろ楽しんでいるようだった。



 彼らは、貴族の中でも身分が高い者が多く集まる日当たりのいい窓際のエリアに向かった。まあ一番いい場所を案内するよねとのんびり眺めていたら、そこから引き返してこちらの方にやって来たから驚いてしまった。



「やあ、マックスはここにいたのか。姿を見ないからどうしたのかと思ってたよ」



 まるで長年の友達かのような気さくな口調で、ロジャーがマクシミリアンに話しかけた。しかしマクシミリアンは平静を装いながらも、どこか硬い様子を崩さずに返事した。



「アレックスに任せることにしたんだ。僕の方から挨拶に行かなくてすまないね」



「いや、そんなのはどうでもいいよ。君の友達も紹介してくれないかな?」



 マクシミリアンはクラウディアたちを紹介して、彼女たちも挨拶を返した。



「へえ! 君がアレックスの元婚約者で今はマックスの世話係をしているという、クラウディア嬢か!」



 ロジャーはクラウディアと握手をしながらとびきりの笑顔になった。



「ええ。前半は合ってますが、後半は語弊がありますわ。わたくしが何もしなくてもマクシミリアン殿下はご立派な方です。むしろわたくしがお願いして話相手になって頂いてますの。とても気さくで優しい方です」



 クラウディアは礼節を保ちながらも、言うべきところははっきり言った。



「そうなんだ。君が色々裏で動いたって聞いたけど……まあいいや。時間はたっぷりあるからまた後で話を聞かせてね。じゃまた」



 そう言って、ロジャーはアレックスたちの方へ戻って行った。



「引っかかる言い方ですわね。お世話係なんて」



「しーっ! お嬢様、聞こえるよ!」



「でも本当のことだよ。僕はクラウディアには頼ってばかりいる。それを見透かされたんだろうな」



 マクシミリアンは、王宮で謁見した時のことを思い出していた。ロジャーは、アレックスとマクシミリアンを比べてどちらが王位に相応しい人物か見極めようとしているのでは、という印象を持った。自分は王太子になる気はないと明言しているのに、ロジャーは、アレックスと同じ基準で彼を見ることをやめなかった。そんなの幼少期から王太子教育を受けてきたアレックスに勝てるはずがない。嫌でもコンプレックスを刺激されてしまった。それに、表向きはフレンドリーだが、父以外に許していない愛称を勝手に呼ばれるのも気に入らない。(クラウディアも呼んでくれないのに……)マクシミリアンはロジャーと接するうちに自分が値踏みされているような不安感を感じた。また、髪と目の色はともかく自分は父似だと思っていたが、ロジャーを前にすると思ったより顔立ちが似ていることに気が付いた。自分はマール王国人だと主張しても、何かと帝国と結び付けられる答え合わせができた気がしてモヤモヤした。



 その日から学園は上へ下への大騒ぎになった。ロジャーは、何の前触れもなくひょっこり授業に顔を出すので、遭遇した者は一様にびっくりした。流石に女子のクラスには現れないため、ロジャーの美貌に射抜かれた多数の女子生徒は文句を言っていたが。ある日など、アッシャー帝国史の講義にも現れ、緊張で固まる教師をよそに、アッシャー帝国の歴史観の解説を行った。皆静かに傾聴しており、マクシミリアンが一言言っただけで教室がざわめいた時とはまるで違った。サミュエルも黙って聞いている。



(やってることは変わらないのにみんなの態度が全然違う……説得力が違うんだろうな。僕は頼りないから……)



 今まで自分と他人を比べることがなかったのに、今回ばかりはどうしても劣等感が掻き立てられるのが不思議でならない。どこか自分と似ているあの顔を見ると心がざわめく。王太子教育を受けていたとしても自分はあのようになれただろうかと馬鹿馬鹿しいことを考えてしまうのだった。



 お昼の鐘が鳴り、マクシミリアンはいそいそと食堂に向かった。クラウディアたちとゆっくりお喋りができる唯一の時間だ。なぜか今日は、いつにも増して彼らに会いたい気持ちが募っていた。



 しかし、いつもの場所にクラウディアの姿はなかった。



「お嬢様なら夜に大事なお客を接待するからと、午前中で早退したよ」



 グランの言葉にマクシミリアンはがっくり肩を落とした。心のモヤモヤを誰かに聞いて欲しかったのに。



「俺たちじゃ駄目ですかね、やはりクラウディアがいないと」



 ドンが気を使ってくれたが、残念ながらその通りだった。



**********



 その頃、クラウディアの家は、急な来賓の訪問に大慌てで準備をしていた。



「夜の招待なら何も早退しなくたっていいじゃありませんか。一体どれだけの重鎮が来ますの?」



 クラウディアは使用人たちに具体的な指示を出しながら、兄のコリンに不満を言った。



「そりゃな。なんでもアッシャー帝国のロジャー皇太子だから万全の準備をしておけという意味なんじゃないか」



「えっ、ロジャー皇太子?! そんなの聞いてませんわ!」



「あ、クラウディアには直前まで内緒にしとけって言われてたんだった。まずかったな」



 どういうことだろう? 学園でいくらでも顔を合わせることができるのに、わざわざ家を訪問するとは。父と会いたいだけなら娘のクラウディアまで巻き込まないで欲しいものだ。確かに貴族の子弟は、家の用事があると学園よりそちらを優先させる傾向がある。しかし、学園にはマクシミリアンがいるのだから、今のクラウディアはできることなら学園を休みたくなかった。



 時計が午後6時の鐘を鳴らして間もなく、玄関のベルが鳴り父に伴われロジャーがやって来た。



「あれ、クラウディアは驚かないね。さてはコリンが喋ったな。既に学園で会っているようだが改めて。アッシャー帝国皇太子、ロジャー・シェパード殿下だ。殿下、ようこそ我が家へ」



 クラウディアとコリンは、うやうやしく礼をして歓迎の言葉を述べた。



「今日はお忙しいところをお招きいただきありがとう。ブルックハースト家は代々重鎮の家臣を輩出していると聞いています。二国間の友好のためぜひ貴殿にも協力していただきたい」



 ロジャーは学園にいる時よりも爽やかさや謙虚さを前面に出していた。年長者に接する態度というのを心得ているわね、父に対しては皇帝オーラを隠しているのね、とクラウディアは分析した。やがて、一同は食事のため部屋を移動した。ロジャーは、博識さを披露しつつもそれを鼻にかけることなく、相手を立てることも忘れない気配りを見せ、更に話し上手で何度も笑い声が起きた。頭の切れる若者という前評判はかなり当たっている。



(悔しいけどこやつできる……! 人の心をつかむのが上手なのね。人の上に立つ者は必要なスキルね)



「クラウディア嬢は学園でも屈指の才媛と聞いたが、会話の端々からもそれが伺えますね」



 いきなりクラウディアに話の矛先が向いたので、慌てて身構えてしまった。



「いいえ、とんだじゃじゃ馬娘で親としては手をこまねいています。普通の令嬢のようにおしとやかにしてくれればいいものを」



 父が謙遜の言葉を口にする。じゃじゃ馬娘をこき使っている張本人のくせに。



「そういえば、ずっと公の場に出てこなかったマクシミリアン殿下を外の世界へ導いたのもあなたというではありませんか。詳しい話を聞かせてくれないかな」



 そう来たか! 心の中でクラウディアは叫んだ。



「わたくしは殆ど何もしていませんわ。殿下とお話した時、植物の知識が豊富でゆくゆくは大学で学びたいと仰っていたので、学園に行くことをお勧めしただけです。国王陛下を説得したり、そのための材料集めをしたのは全て殿下です」



「ふーん、でもマックスに聞いたら『クラウディアがいなかったら今の自分はいなかった』って言ってたよ」



 ロジャーがニヤニヤしながらそう言うと、クラウディアは顔を赤くしながら反論した。



「それは殿下が買いかぶっておられるだけです。わたくしのことを褒めてくださるのは嬉しいですが、余りにも過大評価ですわ」



 マクシミリアンのことだからそれくらいのことは平気で言いそうだが、自分のいないところで変に持ち上げられるのも困ったものだ。



「でもそのせいで、外交にまで大きな影響が出たことに気づいてる?」



 ロジャーは相好を崩さないまま尋ねた。クラウディアは虚を突かれたようにはっとした。



「も……もちろん気づいてますわ。マクシミリアン殿下は微妙な立場だということも。しかし、シンシア妃の真実が明らかになった今、その意味はいささか薄れたと考えております。ロジャー殿下もすでにご存じなのでしょう? うちの家族は皆知っていることなので、ここで話しても大丈夫ですわ」



 これにはロジャーの方が驚いたようだった。傍で聞いていた父とコリンも思わず姿勢を正した。



「驚いたな……あなたの方から切り出してくるとは。確かにシンシア妃の死の謎は、二国間の友好関係において大きな障壁だった。シンシア妃の兄、つまり私の父は、妹をとても可愛がっていたからね。すぐにシンシア妃の死の真相を突き止められなかったマール王国に不信感を抱いていた。大事な妹を嫁がせてまで関係改善を図ろうとしたのに、マール王国の不手際で駄目になったのだから怒りも相当なものだった」



「しかし、国王の憔悴もまた尋常でなかったと聞いておりますわ」



「悲しむ態度なら誰にでもできる。たとえそれが本物だとしても、外から見極めることはできないんだよ」



 すげないロジャーの回答にクラウディアは思わずむっとなったが、何も言えなかった。



「10年以上もそんな緊張状態だったのが、一気に風向きが変わった。不幸な事件によって中断された関係改善のための動きを今こそ再開させようという機運が高まった。そのきっかけを作ったクラウディア嬢に直接会ってみたいと思ったのも、短期留学を決めた理由の一つと言ったら驚くかな?」



 クラウディアは明らかにたじろいだが、なるべく動揺を隠して早口でまくし立てた。



「それならわたくしではなくてアレックス殿下に仰ってくださいな。婚約破棄がなければ、マクシミリアン殿下と出会う機会はなかったのですから。それに、正直なことを言えば、シンシア妃の死因を突き止めたのはマクシミリアン殿下です。もし、今回のことで二国間の関係が改善されれば、マクシミリアン殿下こそ称賛されてしかるべきですわ」



「ははっ。その通りだ。最初のきっかけを作ってくれたのはアレックス殿下だな。あなたご自身から婚約破棄の話題を出させてしまってすまなかった。でもあなたならすぐにもっといい男性をみつけますよ」



 ロジャーはそう言うと、まっすぐクラウディアを見つめた。クラウディアは思わずたじろいだ。深い闇の黒にじっと見つめられて平気な女がいるだろうか。ロジャーがクラウディアに対してある種の興味を抱いているという可能性は考えないようにした。彼の目を見るとそのまま吸い込まれそうな気がして、クラウディアは慌てて目を逸らした。流石に見かねた父が、コホンと咳をして話の腰を折った。



「さて、食事も終わったことだし、部屋を変えましょう。こちらの名物のデルモナのワインを用意したのでどうぞ殿下もご一緒に。明日学園もあるけど、クラウディアももう少し大丈夫かな?」



「え、ええ。大丈夫ですわ」



 クラウディアも気を取り直して答えた。そしてその後は何事もなかったかのように穏やかな雰囲気のまま、晩餐会は終了したのだった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。

望まぬ結婚をさせられた私のもとに、死んだはずの護衛騎士が帰ってきました~不遇令嬢が世界一幸せな花嫁になるまで

越智屋ノマ
恋愛
「君を愛することはない」で始まった不遇な結婚――。 国王の命令でクラーヴァル公爵家へと嫁いだ伯爵令嬢ヴィオラ。しかし夫のルシウスに愛されることはなく、毎日つらい仕打ちを受けていた。 孤独に耐えるヴィオラにとって唯一の救いは、護衛騎士エデン・アーヴィスと過ごした日々の思い出だった。エデンは強くて誠実で、いつもヴィオラを守ってくれた……でも、彼はもういない。この国を襲った『災禍の竜』と相打ちになって、3年前に戦死してしまったのだから。 ある日、参加した夜会の席でヴィオラは窮地に立たされる。その夜会は夫の愛人が主催するもので、夫と結託してヴィオラを陥れようとしていたのだ。誰に救いを求めることもできず、絶体絶命の彼女を救ったのは――? (……私の体が、勝手に動いている!?) 「地獄で悔いろ、下郎が。このエデン・アーヴィスの目の黒いうちは、ヴィオラ様に指一本触れさせはしない!」 死んだはずのエデンの魂が、ヴィオラの体に乗り移っていた!?  ――これは、望まぬ結婚をさせられた伯爵令嬢ヴィオラと、死んだはずの護衛騎士エデンのふしぎな恋の物語。理不尽な夫になんて、もう絶対に負けません!!

「今とっても幸せですの。ごめんあそばせ♡」 捨てられ者同士、溺れちゃうほど愛し合ってますのでお構いなく!

若松だんご
恋愛
「キサマとはやっていけない。婚約破棄だ。俺が愛してるのは、このマリアルナだ!」 婚約者である王子が開いたパーティ会場で。妹、マリアルナを伴って現れた王子。てっきり結婚の日取りなどを発表するのかと思っていたリューリアは、突然の婚約破棄、妹への婚約変更に驚き戸惑う。 「姉から妹への婚約変更。外聞も悪い。お前も噂に晒されて辛かろう。修道院で余生を過ごせ」 リューリアを慰めたり、憤慨することもない父。マリアルナが王子妃になることを手放しで喜んだ母。 二人は、これまでのリューリアの人生を振り回しただけでなく、これからの未来も勝手に決めて命じる。 四つ違いの妹。母によく似たかわいらしい妹が生まれ、母は姉であ、リューリアの育児を放棄した。 そんなリューリアを不憫に思ったのか、ただの厄介払いだったのか。田舎で暮らしていた祖母の元に預けられて育った。 両親から離れたことは寂しかったけれど、祖母は大切にしてくれたし、祖母の家のお隣、幼なじみのシオンと仲良く遊んで、それなりに楽しい幼少期だったのだけど。 「第二王子と結婚せよ」 十年前、またも家族の都合に振り回され、故郷となった町を離れ、祖母ともシオンとも別れ、未来の王子妃として厳しい教育を受けることになった。 好きになれそうにない相手だったけれど、未来の夫となる王子のために、王子に代わって政務をこなしていた。王子が遊び呆けていても、「男の人はそういうものだ」と文句すら言わせてもらえなかった。 そして、20歳のこの日。またも周囲の都合によって振り回され、周囲の都合によって未来まで決定されてしまった。 冗談じゃないわ。どれだけ人を振り回したら気が済むのよ、この人たち。 腹が立つけれど、どうしたらいいのかわからずに、従う道しか選べなかったリューリア。 せめて。せめて修道女として生きるなら、故郷で生きたい。 自分を大事にしてくれた祖母もいない、思い出だけが残る町。けど、そこで幼なじみのシオンに再会する。 シオンは、結婚していたけれど、奥さんが「真実の愛を見つけた」とかで、行方をくらましていて、最近ようやく離婚が成立したのだという。 真実の愛って、そんなゴロゴロ転がってるものなのかしら。そして、誰かを不幸に、悲しませないと得られないものなのかしら。 というか。真実もニセモノも、愛に真贋なんてあるのかしら。 捨てられた者同士。傷ついたもの同士。 いっしょにいて、いっしょに楽しんで。昔を思い出して。 傷を舐めあってるんじゃない。今を楽しみ、愛を、想いを育んでいるの。だって、わたしも彼も、幼い頃から相手が好きだったってこと、思い出したんだもの。 だから。 わたしたちの見つけた「真実の愛(笑)」、邪魔をしないでくださいな♡

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

処理中です...