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第5章 引っ越した報告してないけど、まぁ~いっか。

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「んーっ! んーっ!」

 ハッキリ言って苦しいです。
 胃に入れたものを吐き出しそう……。吐かないけども……。
 そうか、これが相撲の決まり手、鯖折りかーー。
 そりゃぁ、某有名格闘技ゲームの技のひとつになるはずだよ。
 ファイヤーダンスではなくヨガでファイヤーは意味解らないけど……。
 あ、苦しくて脱線したのは許してください。
 先程バタバタとやって来た人物にギュッではなくてギュムゥーーッ……と言う感じで抱き締められる時に服が汚れると思って手に持ってきたフライを尻尾手前まで口に含んだものだから俺はちょっと喋れそうにない。
 とりあえずモグモグと口を動かして胃の中にいれようと思ったのだがパンの衣が口の中に刺さるのはちょっといただけない。
 まぁ、そもそも飲み込めない状況なんだけどさ。
 要改良といったところかな……。
 でもトンカツはそんなことなかったのになぁ……と思ったがよくよく思えば今回のパン粉は俺と兄の自作。
 強いて言えば兄が持ってた大根のおろし金でフランスパンをガリガリした。
 人力で行ったわけなので若干のムラが出たのかもしれない。
 ちなみにフランスパン、どうやって食べるのか考えるくらいにカッチカチなのは何でですかーー。
 ソレはソレ。これはこれって事だとしても以前作ったトンカツはヨハンが風魔法で見事粉々にしてくれたパン粉だったのを思い出した。
 あぁ、ヨハンやローラ。ミリアム達は元気かなぁ……。風邪ひいてないといいなぁ……。
 口の中のエビフライは急に味気ないものへと変わっていった。
 まぁ、先程言った通り飲み込めないんですけどね……。

「ゼツさん。すみませんがルーを放してもらえます?」
「え? ……いたっ、ちょ、肩っ、肩が凄く痛いんだけど……。ヤトくん~……」

 そんな声と同時に俺は解放されたが、兄に抱っこされて宥められるように背中をポンポンされた。
 安心して口の中のものを飲み込んでホッとした俺は、ぎゅむ……。効果音としてはそんな感じで抱き付き、大人しくしていると兄とは違う手が俺の頭をポンポンと優しく撫でた。
 誰だろう? そう思って顔を動かすとそこには苦笑いのゼツさんがいた。

「ゼチュしゃん?」
「……あ、確実に今噛んだね」

 シエロさんのその言葉に恥ずかしいやら悔しいやら、会えて嬉しいやらーー。
 俺は複雑な心境になったのは否めない。

「ヤトくん、ルカくん。久し振りだね。ルカくんは随分と可愛くなって……。さっきはごめんね? 無事だったのが本当に嬉しくてつい……。しかも別れたときよりも可愛いからビックリした。髪を切った人を紹介して欲しいくらいだよ」
「兄だよ?」
「え?」

 あれ? 即答過ぎて聞き取れなかったのかな……。

「だーかーらー、切った人でしょ? それならココにいるぅ、僕のぉ、だぁーい好きな『兄』だってばぁ……」

 聞き取れるように物凄くゆっくり言ったのだが、今度はシエロさんまでポカーンとしていた。
 あれ? どうしてだろう? 二人ともカッチカチに固まってしまったーー。




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