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第5章 引っ越した報告してないけど、まぁ~いっか。

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「うわぁ、凄く美味しそうな香りだね~……」
「うん、まぁ揚げ立てだからなぁ~……」

 と兄が答えたが最初の台詞は俺ではありません。
 兄もなにか変だと感じたのか俺を見つめ、俺は静かに首を横に振った。
 俺と兄は無言でドアの方へ振り返ると既に油切りも終えた完璧な状態のエビフライを食べようとしていたアンドレアさんのパパ殿がそこに居りました。

「おかしいな……。邪魔されないように鍵をちゃんとかけたよね……」
「あぁ、それならマスターキーで開けたよ?」

 マスターキー。そうか、無いわけがないか……。
 やはり今度から土壁で覆ってしまおう。立ち入り禁止!
 とりあえず追い出し……いや、この人は一応。うん、一応は家主なわけだし、摘まみ食いなど好き勝手やり始めたこの人に強く出れない俺達がそこにはいました。

「うっわぁ~……サクサクで美味しい~!」

 えーっと? なんなんでしょうか……。俺達は何を見せられてるんだろ?
 エビフライを食べてる僕、すごく可愛いでしょ? と体で表現しているお父さんの年齢の美少女が目の前にいるのですが……。
 目を輝かせては片頬に手を添え、口をモグモグ動かしながらもハニカミは忘れず、可愛い動作を常日頃が研究している女子みたいなオーバーアクション。
 スマホがあったら絶対に冷めるまで写真撮りまくってるタイプ。

「僕、苦手だわ……」

 思わず呟くと兄も「同意」とげんなりした様子で呟いた。

「あれ? おかしいなぁ……。こんな風にしてるとみんな顔を赤くして黙るのに……。君達珍しいね」

 なんと、彼の行動はわざとの様だ。
 理由を聞く(実際には聞く気はなくスルーしようとした)と幼い頃から男に押し倒されてきたらしく身に付けた術らしい。
 まぁ、大きくなるにつれ魔法が安定するので押し倒されることはなく、今では楽しんでからかっていると言うただの腹黒でした。

 そんな話を聞きながら「何となくわかる~っ!」と言いながら俺と兄もつまみ食いしていると遠くからバタバタと走ってくる音が聞こえた。

「ヤトくん、ルカくん! 大丈夫かっ?」

 ーーーーと……。
 大丈夫か? と言われましてもそれは何に対しての「大丈夫」なんですかね……。




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