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我が家の一大事
しおりを挟むばたんっ……。
「えっ……」
「ええっ!?」
「ルカ?」
「「おい、ルカっ?」」
『ルカ様ぁーーっ!!』
ウォルター家のアイドル。天使様ことルカが顔を赤くして床にバタリと倒れて寝てました。
「ヨハン、い……医師を……」
「ですが、本日はナイトリンガー殿下がやって来る日で御座います」
「しかし熱が……」
ハイネは血は繋がらないが愛しい息子のルカを抱っこして困っていた。この国だけではないが子供が熱を出したら命の危険と同意なのだ。
「父上、殿下はルカの兄でございましたし、ヤブの医師よりは詳しいのでは?」
「旦那様。ルカちゃんには申し訳ないですけれど、私もそうした方がよろしいと思いますわ。今まで隠してきたルカちゃんの素顔などバレては元も子もないですし……」
「そうだね……。とりあえずルカには我慢してもらって、殿下が来るまでは寝かせてあげよう」
そうしてルカは自室のベッドに運ばれ、寝巻きに着替えさせられた。
◆
「殿下、よくいらしてくださいました。手狭かとは思いますが第2の家と思ってお寛ぎ下さい」
「ランドルフ伯、ありがとう」
玄関の扉が閉まり、殿下を乗せた王族の馬車と護衛騎士達が敷地内から去るのを確認すると同時に俺はガシッと殿下の肩を掴んだ。冷静になるとちょっと慌てていた気もしなくはない。本来ならば不敬ではあるが、彼は王族を退いた。それでも来客にすることではないのだが、彼は少し驚きつつも笑っていた。
「もしかしてルーが倒れでもしましたか?」
「で、殿下……。急に申し訳ない。その……」
ルカの部屋に案内すると玄関にいたものがゾロゾロと俺達2人の後ろに付いてこようとしたのでヨハンは「仕事に戻りなさい」と注意した。
「おーい。ルー、起きろ~?」
ベッドで寝ているルカの頬を軽くペチペチと叩いて起こす殿下の姿に皆は不安そうに見つめていた。
「うきゅぅ~……あ、にぃ~っ! ふえぇ、頭いたい、喉いたい、寒いよぉ、コンッ、コンッ……セキ~……」
「あぁ、わかったわかった。わかったから、落ち着け? 食欲は? ご飯食べたか?」
ふにゃぁ~……と静かになっただけで彼は理解したらしい。
「ルー、お前は体温計持ってる? あー、無いのか……。うーん、俺は料理用の温度計しか持ってないんだけど……。それでも良いか?」
頷いたので殿下は見たことのない太い針のようなものを取り出してルカの口、舌の下へ入れた。
「クリーン。なるほど、完全に風邪ひいたな……。お前、トンネル作るの無理しただろ……。と言うか薄着でいたろ……」
「だってぇ~……」
涙目でそう言うと彼はため息をついた。艶々の長い綺麗な銀の髪を1つに纏めると上着をそっと脱いだ。コートの下は王族貴族の華美なキラキラしい実用性の無い服ではなく、華やかではあるが騎士服のようなラフなものだった。
「グレン殿、ティーカップにぬるま湯をお願いできるかな。あと、桶かなにかに氷と水を……。あとはタオルを宜しく」
「グレンで結構ですよ。畏まりました。すぐに用意しますね」
テキパキと指示をすると皆は動き始めた。
「…………あぁ、そう言えば俺はジップの袋を持ってきてたような……」
透明な袋2枚ほどどこからか取り出すとグレンに小さめの氷と水を少しいれてもらって空気を抜くようにして閉じたものの外に残りの袋を重ねて二重にし、タオルを巻いてからルカの頭の下に敷いた。
見たことのないやり方だが熱があるときは気持ち良さそうだ。
「殿下、用意ができました」
「ありがとう。ルー、ご飯の前に薬をまず飲もうな?」
「あい……」
どこからともなく殿下は以前の胃の薬と同じようなものを取り出して封を開けた。
「ところでルー? お前、今何歳だっけ?」
「えーっとね……」
ステータスを開くとそこには堂々と13歳と書かれていた。
「あれ? ………………13歳? あれ? 誕生日来たはずなのにな……。まぁ、いいや……。13歳だよ?」
そう言うと殿下は紙を取り出して半分だけ薬を取り出した。
もしかして年齢で飲む量が違うのだろうか……。
「ほら、飲みな?」
「はーい」
と返事したルカは手慣れたもので、湯を口に含んでから粉を口にそのまま入れてゴクッと飲んだ。殿下に良い子良い子と褒めるように頭を撫でられたルカはそのまま横にされた。あれ? 溶かさなくても飲んで良いものなんだ……?
「じゃぁ、兄ちゃんはお粥作ってくるから、ルーは良い子にしてちゃんと寝てるんだぞ? いいな?」
頭を優しく撫でると額に濡らしたタオルをおいた。
「あい……」
大人しいルカの姿なに皆は大丈夫なのか心配そうだが殿下は何てことない顔をして振り返った。
「ランドルフ伯、すまないがキッチンを借りてもよいだろうか」
「え、ええ……。隣にルカのミニキッチンがありますからそこをお使いください」
その言葉にありがとうと言うとジャケットを脱ぎ、シャツの袖をまくりながら彼はスタスタと歩き出した。
…………あれ?
「旦那様、殿下は料理ができるのでしょうか?」
「うん、今同じことを思っていたよ……」
思わず皆はキッチンが気になったらしくそっと覗くとそこは戦場でもなんでもなく、ただただ優雅に料理をしている姿があった。
「~♪」
聞いたことのない歌を口ずさみながら鍋を見つめている彼に皆は不思議そうに見つめていた。
「~♪ ~~……ん? どうかしましたか?」
「殿下は今、何を……?」
「あぁ、ルーは風邪をひくとご飯類を一切食べないんですよね……」
鍋を匙でかき回している姿は何故だか手慣れた様子。
「いえ、殿下は料理が出来るのですか?」
「ん? ……あぁ、出来る方だと思うよ? だから逆に城で出る食事を食べたくなかったとも言えるんだけど……」
どういうことかと聞けば口にいれて美味しくない場合、自分が作った方が絶対に美味しいだろうな──と思ってしまうかららしい。因みに今作っているのはルカが作った陳皮というミカンの皮を乾燥させた漢方や生薬らしいのだが、それを煮出したものでつくる「かゆ」と言うものらしい。ミカンの皮って使い道あったのか……。
「とりあえず嫌でも何か腹に飲み込ませないと……」
「やはり殿下もルカも文明が発達した国でお過ごしだったのですね」
「まぁ、ざっと見て今の国の約300~400年後くらいかなぁ……。でもジャンルによってはもう少し短い気もするし、よくわかんないけどそんくらいじゃないかなぁ……」
「んなっ……」
そんな未来から……? 言われてみればルカも殿下もこちらの生活が便利になるようなことを言う気がする。遠く離れた未来から来たのだとしたら文明の差があっても仕方ない。逆に不便ではないのだろうか?
「不便を感じたことは……」
「んー、あると言えばあるけど……。うちというか我が家は特殊だからなぁ……。ルーはゲームが出来ないのがストレスだろうけど、料理とか魔法とかゲーム感覚で開発してるだろうし? 俺はルーが居ないことだけがストレスだったし……。ついでに俺はこの国から出ていく気満々だったから、それまで暇だし色々と複写してしまおうと思ってね……。なかなか楽しかったかな」
え、今、なかなか怖いことを聞いた気がするんだが……。何を複製したんだ? 宝物庫の国宝とか言わないよな。でも確か少し前に城中の酒を複写してルカに手渡していたような……。
「殿下……」
「ねぇ、ランドルフ伯。俺、もう王族じゃないから殿下呼びは不敬じゃないかな」
「いや、しかし……」
「ヤト。ヤトで良いよ。ナイトより反応できるから……」
そう言うと彼は小さな匙で鍋の中を少し掬うと口に含んだ。
「ん、完成っと……。紙皿に少し入れてフ・クシャに預かってもらうか……。朝御飯にもってこいだし……」
途中、よくわからないことを言うと手にあった皿は消え、でん……ヤト様は残りをティーカップに入れた。
「あー、久しぶりに作ったから量の加減間違えたわぁ~……。やべぇ、作りすぎたぁ~……」
「あ、あの、でん……ヤト様、味見をしてもよろしいですか?」
「ん? あぁ、味見? ふふ、毒味じゃないんだねぇ……。うん、どうぞ。伯爵達はもしかして米は初めてなのかな?」
こめ? こめ? こめってなんだ でん……いや、ヤト様が残りの物を幾つかのカップに入れていた。
「はい、ランドルフ伯。どうぞ」
彼は盆を手渡すとルカの物を手に持って行ってしまった。
「ルー、起きれるか? お粥出来たぞ?」
「けほ……うん……。いただきまふ……」
「フーフーして冷ましながら食べろよ?」
その言葉にルカは匙に掬ったものをフーフーと息を吹き付けて冷ましながら食べていた。小さい子みたいで可愛い……。しかも殿下の話し方も小さい子にする話し方で可愛い……。というか、2人とも可愛すぎる!
「ふにゃ……。兄のお粥美味しい……」
「はいはい、ありがとう。食べたら少し寝ような?」
「あい」
その姿を見た俺とサラは盆の上の「かゆ」というものを見つめてゴクリと唾を飲んだ。あのルカが目の前で美味しいと言うなんて……。
俺達はソファーセットでそっと食べようとするとヨハン達に見つかり、何故か大騒ぎとなり、殿下……。いや、ヤト様にルカにもこちらを顔を向け、しかも不思議そうな表情をして見つめていた。
「パパぁ~……。僕、お兄ちゃんがもう一人ほしいよぉ……」
「良いよ? 殿下のことだよね? よし、領地に行ったら手続きしようね」
「わぁーい!」
喜ぶルカを尻目にヤト様とグレンは諦めたような顔をしていた。おや、なんというか諦めるのが早くないかな? 2人共……。
「えへへぇ~っ♪ これからずーっと、グレン兄さんと兄と一緒~……」
安心したのか嬉しそうにルカが眠ってしまうと確認した後に2人は同時にため息をついた。うーん、どう考えても2人とも恋敵だよねぇ……。ルカは全くといって良いほど気がついていないのだろうけども……。
罪作りと言うか、小悪魔な子だわぁ~……。
「あー、2人とも。ルカが心配だろうけども、ちょっとパパの部屋に来なさい?」
俺はこの2人が喧嘩しないように見守るしか出来ないけど、今は思いきり話をさせてやった方が良いと思ったのは事実。これから旅に出るわけだし、兄弟になったら争い事はない方が我が家のためにもなる。でも俺の思いを押し付けるのはエゴだし、この2人はそこまで子供ではないし、自分勝手な性格でもないのだから話し合いでどこかに折り合いをつけられるはずだ。
「わかりました」
「わかりました。えーっと、ルー付きの誰かいますか?」
ミリアムが「私です。ルカ様付きのミリアムと申します」と自己紹介も簡潔にしかもそつなくしていた。まぁ、彼女がすぐさま答えたのでヤト様はミリアムに看病の仕方を簡単に教えていた。というか、そんな簡単なもので良いのか?
「わかりました。頭の下はルカ様が自ら取るまではそのままで、額のタオルはこまめに取り替えて水を使って冷やして差し上げるのですね?」
「そう。あとはさっき一緒にこれを作ったから、ルーが起きたら少し飲ませてあげて?」
水差しに入った物を指差すとミリアムは「畏まりました」と返事をした。
「あとはなるべく寝かせてあげたいから部屋にいる人は少な目にしてあげてね?」
そう言うと俺の方へやって来た。
「じゃあ、2人とも行こうか──」
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