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新たに義弟が出来そうです 1
しおりを挟むとある日、ルカが人知れず王都から出ていけるようにとトンネルと言うものを作るのをどうやら無理をしていたのか熱を出し、そして倒れた。熱を出すと言うことは最悪の場合死んでしまう事もあるので俺含め静かにパニックになっていた。
しかし、本日はルカの生前というべきなのか悩むところではあるが、体の中身。つまりは精神が兄上と言うちょっと特殊な感じのナイトリンガー殿下が王子と言う身分を捨て、城から出て一般人として新たな一歩を踏み出す日。
そしてルカのシナリオ通りに我が家に滞在するのが決定している。父上と殿下が人前で一芝居をしたのでルカの目論み通り、噂はアッと言う間に広がった。……と言うかこの子──いや殿下もなのだが、生前は貴族ではなく極々一般的な家庭だったそうだ。でも一般家庭と言うわりにルカが貴族の生態を理解しているのはどういう事なのだろうか……。
何はともあれ、この家にすぐにやって来るだろう殿下にルカを見てもらった方が手っ取り早いし、なんというかこの国の本当に医師なのか疑わしい人物に任せるよりは遥かに安心感が強い。何故ならば彼はこの世界とは違う知識を持っているのだから、この国の医師と呼んでいいのか不明な人と比べる方がおかしいのかもしれない。とりあえず可哀想だが、ルカは殿下が来るまでベッドで寝かせようということになった。
ナイトリンガー殿下は幼い頃からこのフォーリア魔法公国第四王子と言う地位を棄てて冒険者としてルカを探す予定だったらしい。まぁ、ウォルター家の養子になり私の弟となったルカが大正解だったらしいのだが……。なんと言うべきか人生何が起こるかわからないといったところか──。
貴族には派閥と言うものがある。それは王子達で分かれている。第一王子派や第二王子派など……。強いて言えば次世代で自分達が実権を握ると言う私利私欲も含まれている。特に第一王子と第二王子の扱いやすさと言ったらピカ一だろう。ただ、そんなのが即位したら隣国と会談したのを想像するにこちらが不利になること確実。崩壊していきそうだ。
そんなのは一先ず置いていて、派閥の話に戻すと我が家は数少ない第四王子派となる。実際第四王子派は我がランドルフ領とその隣の辺境伯のガルシア領の2つのみ。なぜ少ないのかは簡単な理由で殿下の母が男であり、さらに地位の低い妾だからである。
ナイトリンガー殿下の母君は現ガルシア辺境伯の末の弟君。実は彼には幼い頃から仲の良い婚約者の令嬢がおり、結婚間近と言うところで何故か婚約者の家が不正を働いたとお家取り壊しとなったのだ。なので婚約は破綻した。その時の彼はまだ16歳で急な事もあり、あまりにもショックが強く、その時は身分がわからないまま優しくしてくれた人(王)に騙──いや、のせられていつの間にか妾にされていたらしい。強い酒でも飲まされて酔わされて……丸め込まれたのかな?
悪い大人に騙される形で16だか17で手込めにされて、18の時には魔法で体を一時的に改造され、19の時に殿下を出産。噂では出産時立ち会うことのない国王が自ら立ち会い、その時にかなりの辱しめを与えられながらだったらしい……。
その話をルカが以前聞いてきたことがあったので仕方なしに教えたらかなり怯えていた。まぁ、自分も怯えるくらい恐ろしい仕打ちだと思う。
冤罪で家を取り壊して手に入れたくせに普通そんなことするか?
これが普通の常識はある人の感想だと思われる。その為、殿下の母君は王をかなり恨んでいるとも聞いている。16のデビュタントで王が彼に一目惚れをしたらしく、手に入れようと画策したと言う噂もあるのだ。その一つが婚約者の家の取り壊し。王族という権力を使って冤罪を作ったと言うことになる。
嫌だわぁ……。王様の男好きも嫌だけどやることが全て最低最悪すぎる……。
しかも父上達が言うにはそんな最低最悪のヤツが8歳の俺に狙いを定めたとか言うから更に嫌だわぁ。王が俺のこの歳までなにもしてこなかったのはどうやって手にいれるか作戦を練っていたからなのだろうか……。
俺は魔法の属性が水属性だったことで子息子女から爪弾きにされていたので婚約者がいなかったから、男妾と同じ手は使えなかったのだろう。そしてルカが言うには確実に手に入れるために近しいゼノかアンドレアを使う予定だったんだと思うよ? と……。個人的には可愛い顔でそんな怖いことを言わないで欲しかった。しかし言われてみれば東の森に討伐のために遠征に行った時、赤いランプの毒で苦しんでいた俺は全員に側に来るなと言ったのにも関わらず、ノコノコとやって来たゼノを捌け口にしようとした。しかし予想外にルカが来たことで申し訳ないがルカを捌け口にしてしまったのだが……。
後々話を聞けば王の使いがとうやら偵察に来ていたらしく、ルカが来なかった場合、ゼノを抱いた報告できっと脅され、ゼノが俺の代わりに玩具にされる。そして堕ち具合というか、頃合いを見てゼノが俺の代わりに玩具にされているのを俺に見せつけるのだろう。筋書き通りにゼノは俺の大事な親友だからきっと俺は王の望む台詞を言うのを見越して……。
私がゼノの代わりになりますからゼノは解放してくれ──。
と言うのだろう……。あのゲスな王のシナリオ通りに進むかと思うとヘドが出る。思い返せばルカには気付かないところで助けられているのだな……と少し自己嫌悪。しかし父上の話だとナイトリンガー殿下にも助けられていたのがわかった。
そもそも父上達が俺が王に狙われているのを知ったのは5歳の殿下のお陰なのだとか……。そして殿下は父上に火よりも水の方が役立つと思うと笑顔で言われ、日にちを開けて会った時には、魔法の属性はただの個性だから気にしなくて良いのでは? とまで言ったらしい。水のイメージからすると出す水が清んでいるならば心が綺麗な証拠で、とても素晴らしい属性だよと……。まぁ、第一王子のなぜか畑を広範囲で燃やすという放火事件も記憶に新しいからだと思われる。父上がパーティーの後、殿下に会うたびに水属性だからと嘆くことはないとそう言われたそうだ。確かに初めて会ったパーティーの最後、母上が無理に食べさせた料理で今にも泣きそうな殿下のお願いによりこっそり水を出すと彼は毒味もさせずに躊躇なく飲み干した。魔法で出した水は美味しくなんてないのに……。
それからと言うもの会う機会は全くなく、第四騎士団に入ってからはちょこちょことすれ違う程度だが話をするようになった。話とは言っても「おはよう」「またね」といった挨拶程度に過ぎないが、でも殿下はいつもやる気の無さそうな感じで無気力なままにこりと笑うと必ず「今日のグレンは○○の場所へ向かいながら目的地に行くと良いことあるよ」と言ってくれる。ちょっと遠回りにはなるが無下にも出来ず共の者とそちらへ向かいながら歩くと王との遭遇も、嫌みな第三騎士団の団員の誰にも出会わなかった。人からしたら特別良いことには遭遇していないのだろうが、この小さな良いことは俺にとっては救いでもあった。
そんな彼の新たな門出。数日間ほど我が家に滞在し、滞在期間中は昼間は旅の準備に街で買い物。俺とアンドレア、ゼノの3人で護衛につく。夜は父上も交えて剣の練習とルカの作ったトンネルに馬を慣らす訓練。このような予定だったのだが、ルカが倒れたことで初日はキャンセルとなった。弱々しくいつになく子供っぽいルカが殿下に頼る姿に少し苛つく。そして何も出来ない自分が悔しかった。
少し時間が経ち、落ち着きを見せたときに父上が口を開いた。
「あー、2人とも、ちょっと部屋に来なさい?」
父上の後ろを俺と殿下が無言のまま並んで歩く。前を歩く父上も隣を歩く殿下も誰一人として言葉を発しない。
父上は本気で殿下を養子にするつもりなのだろうか──。
いや、ルカの事がなければ俺は殿下の事は好きだし、弟は大歓迎ではある。……あぁ、この複雑な心境を父上は察知したのだと理解した。
父上の仕事部屋である書斎へ行くとお茶の用意を父上がしようとしたが茶を淹れたことがあるのかが分からず凄く不安になる。たかがお茶なのに淹れかた次第では酷く不味いものになるという不思議な飲み物なのだ。
「あー、お茶なら俺が淹れますよ。お2人は座っててください」
そう言うけれども殿下も淹れたことあるのか? 等と心配になるがルカと同じ環境で育っているのだから出来ない事はないのだろう。
ん? いやいや、ちょっと待て……。殿下にお茶を淹れさせて良いのか?
だがしかし彼の淹れたお茶はローラ達並みにとても美味しかった。
「では改めて話そうか。グレン、殿下もいいね?」
話と言うのは殿下の養子の件だった。熱に浮かされたルカの「もう1人兄が欲しい」という我儘に「良いよ」と父上が即答した。父上は5歳の殿下を見て、話をして、王族が殿下をないがしろに……。要らない子扱いするのならば我が家で引き取る予定でいたことを明かした。殿下の母である彼にも既に話は取り付けてあったらしい。
噂では王妃に側妃の方々の浮気相手と言うのがある。つまりは失格を与えられた子供の父親ではないかと……。なのでしていないにしろ彼のしている行動は殿下の立場を悪くしているだけなのだが、逆に言えば王族から、城から出すためでもあるらしい。自分は殺されたとしてもその前に我が子だけは生きて城から出す。ある種、最強の愛だと思って聞いていたが殿下は無表情だった。
「殿下は驚かれませんね……」
「ランドルフ伯。何度も言うがやはり既に王族ではないのだから私を殿下と言うのは不敬ではないだろうか……」
その言葉に俺と父上は開いた口が塞がらない。気にするのはそこですか? たしかシリアスな話をしていたはずなんですけど……?
「え、えっと殿下? あなた様の母上のお話なのでは?」
「ヤト」
「え、えっと、ヤト様?」
母親の事よりも呼び方が気になって仕方ないだけなのか? 俺は思いきり顔が引きつっていただろう。
「様は要らない」
「殿下。殿下はこれから『ヤト』と名乗るのですね? では私の事はパパと……」
なんだか以前の父上とルカのやり取りを少し思い出した。あの時のルカは気を張っていたのか抵抗ばかりしていたのだが、押し問答で諦め、現在のように父上をパパと呼び始めた。
「うーん、俺の年齢でパパはちょっとなぁ……。では、妥協案として『パパさん』でどうでしょう?」
「よし、のった!」
なんだか2人の間で何かが成立したようだ。
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