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俺は見た! 1
しおりを挟むあの日見た光景を俺はきっと忘れないだろう──。
なぁ~んて仰々しく言ってみたけどさ、実際問題忘れたくても忘れられるわけがないよね! 忘れろって言われたってさすがに無理だって! 無理、無理、無理、無理、絶対に無理!
アレは数日前の事から始まる。
◆
「は? 第三王子らしき人物というか、殿下が帝国側のうちとの境目で一番大きな街に到着した?」
と言うことは数日程でアンディのいるピエタ・コスタに到着するのかな……。 ん? あ、あれ? でも殿下の目的地ってランドルフ領なのかなぁ~……。殿下の最終目的地は確実にナイトリンガー殿下だろ? うん、まぁ、ナイトリンガー殿下=ヤトなんだけどさ? たしか王都を出立して約半年。時間的にも普通はランドルフに滞在しているとは思わないはずなんだけどなぁ~……って、帝国の大きめな街を転々とやって来た殿下が弟を見間違えるわけがないか……。国王の血なのかよくわからんけどかなり執着してるみたいだし? 通過した街で見かけないなら、ランドルフに滞在してるかもしれないと思うのは道理なのか? いや、でも何て言うの? 帝国の他にもう1つ隣接してるっちゃ、隣接してるわけだし……。
「──はい。お忍びにしても護衛がかなり少なく、更にはマリウス様も同行しているようです」
その言葉に父様の眉間に皺が寄った。てか話聞いてなかったわ、俺……。まぁ、なんつーの? いま報告しているのは言うなればうちの部下って感じで、我がオーガスタ家はウォルター家のお抱えの裏の者なのよな。諜報関係の仕事を先祖代々、生業としている。少し前の代から子爵という貴族の称号を与えられたため、ランドルフ領地のオリバーと言う土地を納めたりとなかなか仕事も変わってきた。
あ…………ただ適材適所に振り分けただけだから、役職の名前が変わっただけで仕事は特になにも変わってなかったわ……。
と、言うか父様さ? ルカに見せる顔と180度違うんだよなぁ~……。グレンも父様も、ハイネ様も……。数えたら両手じゃ足りないけどルカにはみんな甘いって言うかなぁ……。え? 俺? …………うん、俺もルカには甘いかもしれない。なんか、ぬいぐるみとして側に置いておきたい感じで、なんと言うか癒し? とにかく子犬とか子猫みたいですっごく和むし可愛いんだよなぁ~……。兄貴は残念ながらルカと会ってないんだけど、父様の様子を見て「誰、アレ」と指を指した顔は記憶に新しい。
実は明日からアンディの家に行く為、父様は旅の用意をスッゴク楽しんでいた。いつも旅と言うと身の回りのものを少しだけもって即座に旅立つのに今回は何故か念入りに用意しているのだ。そしてルカとヤトにお小遣いと言うか、給料と言うか、アイデア料の報奨? ギャランティって言うの? そんなのをアタッシュケースに笑顔で詰め込んでいる姿に母様や妹ですら「どこかで頭でも打ったのかしら」と心配するほどだった。
俺達家族から見た父様と言うと、常に情勢とにらめっこ。団欒の時は気を緩ませるのか笑い上戸。友人であるハイネ様やシエロ様と話すときもよく笑う。でも時折笑ってる姿が計算っぽく見えるんだよなぁ……。何て言うか父様レベルなら演技しててもそれは不自然ではなくて恐ろしく自然だろうからきっと誰も気づかないと思う。仕事柄と言うのもあるけど、でもそうだとしてもルカ相手だと父様はよく笑う。本当に、よく笑う。壊れたんじゃないかと思うくらい笑う。目も優しいんだよね。
だからルカとヤトが雲隠れしたとき、誰よりも率先して探したのは実は父様だ。そしてあの2人が隠れそうな場所を徹底的に探して違和感を覚えた場所、それが湖だった。俺は特に違和感など無かったんだけれども、島が1つない気がすると言って父様は調べてみると言いだし、遠いからと俺がアンドレアに湖の探索するように言ってヒットした。何て言うか父様の執念って怖くね? なんで島の数覚えてんの?
そんなことを思い出してみれば話は進んでいて、さすがにヤバイと思い、耳を傾ける。
「…………まさか亡命とか言わないよな──。いや、国に戻ってきた時点で亡命ではないか──。理由を上げるなら帝国を秘密裏に通った方がモンスターの危険が低いから……と言ったところか」
亡命……。亡命とは簡単に言えば自分の国からの追求で身の危険を感じた場合に他国へ逃亡する行為だが、はて? 第三王子の身に命の危険などあっただろうか──。心の拠り所がいなくなった精神安定の危険はあったと思うけど……。
「マリウスに関してはガルシアの方からの連絡で建国に合わせて逃げ出すように指示したとあったからアイツに関してはわかるが、まさか厄介な王子付きとはなぁ……」
「その他に同行している例の召喚者達はいかがしますか?」
「彼らは受け入れても何ら問題は無いだろう? 国と言うか王にまず認められ……いや、認知されてないのだから……」
ソレもたしかにそうだ? この土地に来られて困るのは王子と宰相の嫡男であるアレックス様のみ。
「とりあえず進行方向としてランドルフに来るのかな? ガルシアは通りすぎたからなぁ……。とにかく随時報告するように」
「はっ! 畏まりました」
彼らが去ると父様は思いきりため息をついた。
「……大丈夫ですか? 父様」
「ゼノ……」
俺の名前を呼ばれたのでちょっと身構えて「はい」と答えれば「ルカ君とヤト君の所に遊びにいこうか!」と笑顔で言った。ルカを差し出したら纏っている雰囲気は完全に和らぐのが目に浮かぶからルカには犠牲になってもらおう。そして俺はヤトに謝ろう……。
うん、コレしかねぇわ!
そんなこんなでアンディの家に移動したら移動したで、再会の時のルカに対しての拷問(父様としては抱きついただけ)はちょっと可哀想だった。かなりの締め付けだったと思われる。
今更だけど、ルカ、父様を止められなくてごめんな?
◆
そして数日後、殿下達がやって来た。まぁ、歓迎してるわけじゃないし、別にね? 俺は何かしらやるだろうなとは思ったよ? やるというかやらかしをさ……。ただね、まさかの当日にやらかすとは思わないじゃん!? なんでアイツ……というかルカは水属性の事をバカにするやつにあんなに容赦ないの? 確かにグレンが好きなんだろうさ、大好きなんだろうさ! だ、け、ど、さ? ルカよ、物事には限度ってのがあるでしょうよ! 何で一応だけども騎士を礎にしてるのよ……。ルカの姉らしい人とハイタッチして「いえーい!」じゃねぇよ! 父様も頑張って堪えてるけど、笑ってるのバレバレだからねっ!?
んで、その日の夜。事件は起きた。
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