43 / 57
俺は見た! 2
しおりを挟む夜の9時くらいかな、突然キャーって言う甲高い女性とギャーって言う男の悲鳴が聞こえたんだよ、悲鳴がさ! 殿下も何事かと部屋から慌てて出てきたよ? あの悲鳴じゃ気になるものね。
んで鉢合わせることになった現場はマリウス様の部屋の前の廊下。
顔はボッコボコで鼻血を出して気を失っている騎士らしき人物達………………の墓が綺麗に陳列されていた。それはそれは誰もが見覚えのある墓で、皆は首にぶら下げたプレートを見つめていた。そのプレートには『私は実力を見誤り、マリウス様を脅して複数人で慰み者にしようとしました』とえげつない言葉が綴られていた。
プレートを見つめていた人から騎士達に向けられる目は何処と無く冷たい。まぁ、マリウス様は質の悪い人に目を付けられて囲われたってガルシアだけではなくランドルフでも常識になっているからと思われる。
殿下なんてそれを見た瞬間、真っ青な顔をして慌てたようにドアをノックしていた。ドアがゆっくりと開かれると中にはルカとヤトがいて、ルカがマリウス様の手にヒールをかけていた。どうやら彼等を思いきり殴ったせいで手の皮が擦りきれたのか赤くなっていたようだ。
所でヤト、何があったんだ? ルカがマリウス様になついたのかベタベタしてるんだが? 父様がジェラシーを感じているようだ。どうにかしてくれ!
翌日の朝、殿下達を無視してアンディの父母、俺と父様、召喚されたらしきルカとヤトの家族。マリウス様。マサカルド関連で話があると呼び出されたので一同がルカとヤトに与えている部屋に集まった──が、何故かルカがマリウス様に子猫みたいなパンチをしている。あえて音を付けてやるとしたら『へにょんっ』と言ったところか……。キレと言うものが一切ない。強いて言えば子猫の方がキレがありそうだ。……こう、腰を少し落としてシュッと! シュッ……ってルカ、お願いします。もうマリウス様にジャレるのやめてください。父様がジェラシーを感じているようです。笑顔で見守ってるけど獰猛な目で「マリウス、いいなぁ~」じゃねぇわ!
とりあえずヤトがルカとマリウス様を無視して──ってお前の弟と今世の母だろうがよ! まぁ、それはそれは見事なスルーで、アンディもシエロ様も苦笑いをしていた。うん、親子! ヤトが説明をし、前世での姉らしき子が話に肉付けをしていた。
では、用意もあるから一週間くらい後で決行しまーす!
ルカの一言で場は『は?』となったのは否めない。アイツ、本気で天然なの?
「そうだ! 誰か~っ! ルーちゃんに似合いそうなコートをお持ちの方いませんか~っ!」
「あるよっ!」
質問したのは姉と言うアイルさん。即答したのはシエロ様。確かにあのルカの着せ替えタイムで昔の服を引っ張り出したわりにはガン無視されてたものなぁ~……。強いて言えば、今の流行に合ってるんだけどね……。ほら、流行って別の物に移り、別の物に移り……と回り回って戻ってくるから……。
父様はとうとう我慢できなくなったのかマリウス様からルカを取り上げて抱っこしていた。しかもどことなく癒されてそうな優しげな表情をしていた。おっかしいなぁ~。俺、ルカの年で父様にそんなことをしてもらった記憶なんて一切ないんですけど?
とりあえずヤトを捕まえて、改めてざっくりコレからの事を聞くとマサカルドが取り付くべき人物を捕まえるために第三王子とマリウス様を離すことになった。まず、第三王子とお付きの人全てをこのアンディの家に滞在させ、マリウス様は予定通りガルシアへ帰る。
アンディの家にはルカの両親……てか、あちらも17歳らしいのだが中身(精神年齢)はかなりいいお年。俺のお祖父様くらいかな? その二人が残ることになっており、マリウス様に同行するのはヤトと姉のアイル。こちらも体は17歳で中身は俺より年上だ。もちろんヤトも俺よりも年上。残ったルカはと言うと父様と一緒にハイネ様のもとへ行く事が決定していた。父様は内部を確認するためにハイネ様の仕事の手伝いを、ルカは変装して名前をリュウと名乗りグレンの侍従もしくは従者として潜入するそうだ。
おい、コラ! 父様、嬉しいからってニコニコすんな!
そして決行の日。冒頭に戻るわけなんだが、ルカ以外の家族は絶対に王子達が邪魔しに来るに違いないと予想して行動を起こした。俺達は早朝のまだ暗い時間に出発するルカと父様の見送りをするのだが、その前に拘束してしまえと何やら不穏だったので俺と父様は天井裏から見守ることにした。まぁ、殺しはしないだろうけど──。
天井下から聞こえてくる野太い男の悲鳴。
「おぉ、なんの魔法だろう? 土属性ではありそうだけど──」
父様の潜めた声に俺もじっと見つめていたがなかなかの光景が広がっていた。殿下、アレックス様、その他に騎士達一人一人が土と言うか泥みたいな粘土? みたいな手に拘束と言うか握られるようにされていた。もう一人居ないと言われそうだからあえて言うけども、魔法師団長は今、愛しのジェラールをもう絶対に離すまいと亀の甲羅のように背中に抱きついている。突き放すとか、説得するとか様々なことを試したが無理だったっぽく、色々と諦めたらしいジェラールがガルシアに彼を持って帰るそうだ。──強く生きろよ……なんて思ったのは間違いではないと思いたい。
話を戻すと、魔法の手達に殿下達を捕まえさせた本人達は優雅にティータイムしていて心の内で何を思っているのかはよくわからん。殿下とアレックス様は騒ぐのはみっともないと冷静に大人しくしているため、手は握るような形ではなくこう、中指をまっすぐ立てた喧嘩を売るかのような形で拘束されている。
親指と小指で腰を、人差し指と薬指で肩を……。体としては動けないが手足は比較的自由そうだ。逆に安定して座れて良いかもしれない。子供の椅子に持ってこいなのでは……。
あれ? あの形って馬車乗るときの子供に良いんじゃね?
おっと、殿下が諦めた顔をして「茶を私にも頂けないだろうか……」と下手に催促すると出されたお茶を静かに飲み、生気のない目で騎士達を見つめていた。あの騎士達は先日、マリウス様を襲った輩たちで、今は二人一組で泥の手二体に遊ばれている。
説明するならば騎士が交互に上へ放り投げられては落ちてきたところを見事にキャッチして隣の手に投げつけ──を繰り返している。
夫婦は和やかに「お手玉上手だねぇ~」と褒めている。手達はご主人様に褒められたことで俄然やる気になったのか、魔法で作られた手達はスピードをあげ、騎士がずっと交互に宙を舞う。
「ぶふっ! 面白いものを見せてもらったし、そろそろ行こうか……」
「ですね……」
俺、あの家族に逆らうのやめよう……。何されるかわからないし、あのお手玉? は、さすがにやられる想像をしたら思いの外怖かった。
7
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜
目が覚めたら宿敵の伴侶になっていた
木村木下
BL
日本の大学に通う俺はある日突然異世界で目覚め、思い出した。
自分が本来、この世界で生きていた妖精、フォランだということを。
しかし目覚めたフォランはなぜか自分の肉体ではなく、シルヴァ・サリオンという青年の体に入っていた。その上、シルヴァはフォランの宿敵である大英雄ユエ・オーレルの『望まれない伴侶』だった。
ユエ×フォラン
(ムーンライトノベルズ/全年齢版をカクヨムでも投稿しています)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
【本編完結】処刑台の元婚約者は無実でした~聖女に騙された元王太子が幸せになるまで~
TOY
BL
【本編完結・後日譚更新中】
公開処刑のその日、王太子メルドは元婚約者で“稀代の悪女”とされたレイチェルの最期を見届けようとしていた。
しかし「最後のお別れの挨拶」で現婚約者候補の“聖女”アリアの裏の顔を、偶然にも暴いてしまい……!?
王位継承権、婚約、信頼、すべてを失った王子のもとに残ったのは、幼馴染であり護衛騎士のケイ。
これは、聖女に騙され全てを失った王子と、その護衛騎士のちょっとズレた恋の物語。
※別で投稿している作品、
『物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら』の全年齢版です。
設定と後半の展開が少し変わっています。
※後日譚を追加しました。
後日譚① レイチェル視点→メルド視点
後日譚② 王弟→王→ケイ視点
後日譚③ メルド視点
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる