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あっけない終わり

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 ある日は訓練をして、ある日は時魔法ゲットのためにがんばって、リルが不足した日にはリルとほのぼの過ごして。そして、フィーリアと本心を伝え合う日もあって、なんにもない日もあった。

「魔王、覚悟しろ!」

 総勢五十名。内約勇者三十一名、その他自身の力に自信があるもの十九名。がやってきた。
 思ったよりもここまで来るのが早かったと思う。数十年はかかると思っていたのに、根性なのかな十一年でここまで来てしまった。

 先頭に立つ今川がそう叫ぶ。

「倫太郎、平井、三鷹はいないのかな?」

 オレは今川にそう問いかける。

「アイツらは魔族と戦わないと言う意思を示したから追い出した」
「うわっ……」

 つい声を漏らしてしまった。今川ってこんなに心が狭い独善的なやつだったか?もう少し周りの気持ちを考えて動けるやつだと思っていたんだけどな。
 しばらく見ないうちに変わったね。十一年という年月は案外長いものだね。

 十年前だったかな、倫太郎と平井が三鷹を助けることに成功したと弐番から聞いた。
 倫太郎と平井が魔族と戦わない道を選んだのは意外だったな。三鷹もその道を選んでくるとはね。

「おじさんになったね、勇者たち」

 召喚されたのが十四、十五歳。それから十一年たったから、二十代後半。三十路だ。
 勇者たちは普通に歳をとっていったらしく、おじさん、おばさんと呼ばれても文句が言えない外見だ。

「そういうお前は若いままだな」

 オレはずっと十代。アストールの姿じゃ勇者たちがオレだとわからないだろうからマオの姿をとっているんだけど、なにせ召喚されたとき以降のマオがわからないもんで。

「ところでさ、敵とこんな悠長に話す敵がどこにいると思う?」

 ラノベとかでは勇者と魔王は最後戦う前に長々と話し込んでいるけど、そんな悠長にできるわけないじゃん。
 オレは魔王ではないけど、オレと今川が話している間、今川以外の勇者は意識を刈り取らせてもらった。
 強くなった勇者たちだけど、こちらだって何もしなかったわけじゃないから。勇者が少し強くなれば、魔族だって少し強くなる。

「野村!佐川!」

 今川がクラスメイトが倒れ込んでいるのを見て叫ぶ。しかし今川よ、敵から目を離してはいけないというのを習わなかったのか?
 話している間にガイオスに鍛えられた奴らがすばやく勇者は意識を刈り取り、その他は命を刈り取った。

『ライジング』

 魔王であるクラディアが今川めがけて魔法を放つ。直撃だった。

「ぐはっ……」

 いくらもとから強い勇者だって、長い年月をかけて強くなった魔王には勝てないさ。
 言っちゃ悪いけど、今までやってきたことは無駄だったってわけ。

『これで良かったか?』
『ありがとう、クラディア』

 さて、勇者は強くなったといったけど、それに比例して魔族も強くなった。それなのにどうして勇者たちはここまでこれたのだろうか。

 それは、オレがクラディアに頼んだから。アイツらにゴールを与えたかった。
 この十一年、こちらから攻撃に出ることは簡単だった。でも、それをしなかったのはアイツらに守れなかったという後悔を与えないため。あと、その後こっちまで連れてくるのがめんどくさかったから。

 オレはコイツラにさっさか地球に帰ってほしい。そして、普通の生活を送ってほしい。良かったことに、コイツラにはこちらの世界で結婚なんかをしたやつがいない。
 だから、オレが時魔法を手に入れられるまでコールドスリープをしてもらう。
 じゃないと、コイツラが老衰で死んでしまうかもしれなかったから。

『コールドスリープ』

 ちなみに今までそんな魔法は存在しなかったから作りました。

 コールドスリープにより氷漬けにされた勇者たち。それを空間にしまい込む。

『マオ、十日後に人族との交通も断つ。それまでに残りの三人もどうにかしろ。待てないからな』
『わかってるよ』

 さて、倫太郎たちはどこにいるのかな。きっと使い魔の弐番が知っているはず。弐番は倫太郎専用機になってきた感があるから。

『もしもし?』
『あ、主様!お久しぶりです』
『倫太郎、平井、三鷹はそっちにいる?』
『いますよ。酷い追い出され方でしたが、なんとか三人とも無事です、それでですね』

 酷い追い出され方ってね。

『今からそっち行く』
『わかりました』

 弐番との通信を切って、ワープで倫太郎たちがいる場所へと移動する。

「マオ?」
「結城、なのか?」
「結城くん!」
「マオ、久しぶり」

 ん?えーと、倫太郎に平井、三鷹はわかるけどアオイまでいるのはなんでかな。ちょっとよくわからないんだけど。

「なに、なんでアオイはここにいるわけ?三人はわかるけどさ……弐番!」
『はい!』
「アオイがいるのをなんで伝えなかった?」
『伝えようとしましたよ!』
「んー……言おうとしてたね、ごめん」
『そうです。それでいいんです』

 それでですね、とか続けようとしてた。自分の非は素直に認めないとね。

「それも含めてボクたちの話を聞いてほしいんだ、マオ」
「頼む」
「オレからも」
「おねがい」
「わかったよ」
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