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リルとお出かけ

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 はい、始まりました。オレとリルのお出かけという幸せなお時間です。ここのところ、こう、とにかく、ほんわかなリル不足だったから嬉しいです。

 流石に今レステリアとかに行くとリルに危険が及ぶかもだからとクラディアからお達しがあったため、リルとの人族について知るお出かけはできなかった。
 でも、リルに危険が及ぶなんてとんでもない。オレがその前にぶっ潰します。もちらん、リルに気づかれないようにね?

「マオ兄、楽しそうね」
「リルと一緒にお出かけしてるからね」

 そう、オレの顔が緩みきっているのはリルと一緒にお出かけしてるから。しかし、それだけではない。手をつないでいるのだ。
 ミーティアのときも手はつないだが、我が子と孫では違うのだ。

「うふふ、マオ兄ったら」

 リルが嬉しそうに笑う。この破壊力は何かな?うちの孫最強だわ、これ。……っと、いけないいけない。思考があらぬ方向に飛んでいってしまった。

「ずいぶんと変わったなぁ」

 リルと一緒にお出かけした先は魔王城城下町。基本的には人族の城下町と変わらず露店だったり、家だったりが立ち並んでいる。

 リルと歩くと細かいことによく気付かされる。一人で通る城下町は特に目に止まるものなんてないんだけど、リルと歩くとこんなところにことなものがあっただとか、いろいろ考えながら歩くことになる。
 ついさっきも、フィーリアに似合いそうな髪飾りが売っていた。

「マオ兄、これ食べたいんだけど、いい?」
「ん、どれどれ……あ、いいよ。買おう」

 もとよりそのおねだりを却下することなんてないけど、今回リルがおねだりしたのは甘すぎなくて見た目がキレイな焼き菓子だった。
 地球で言うところのジンジャークッキーかな。

「えっとね、私のとマオ兄の、お父様、お祖母様、ガイオスさん、テオドールにミル……あ、どうしよう。こんなたくさんは駄目だよね……」
「うーん」

 オレ的には一袋銅貨二枚だし、名前が挙げられた全員分買ってあげてもいいんだけど、それじゃあ甘やかし過ぎになるだろうから、全員分は無理かな。

「リル、大袋二つ買ってみんなに分けるのはどう?」
「そっか、それなら一つ銅貨五枚で三つと半分の量になるから……足りる!」

 なんだろ、頭良い人がわざと悪く見せてるみたいな説明口調のリル。これも可愛いんだけどさぁ。

「おじさん、小さいの二つと大きいの二つちょうだい」

 オレはそう言って懐から銀貨一枚と銅貨四枚を店主に手渡しをする。そして店主から、小さい袋二つと大きい袋二つを受け取るのだった。
 リルに小さい袋を一つ渡した。

「どうぞ」
「ありがとう、マオ兄。あそこで一緒に食べよ」

 そう言ってリルが指さしたのは二人が丁度座れるサイズのベンチ。タイミングよくベンチがあってくれていいね。

 リルの指指したベンチに座ってリルと買った焼き菓子をほおばる。
 パキッと明るい音がして焼き菓子が割れる。口の中へ入った焼き菓子はホロホロと口の中でくずれる。仄かな甘みが広がって……。

「美味しいね」
「そうだな、美味しい。こりゃ、アイツらも喜ぶだろうな」
「だよね」

 リルはクラディアやフィーリアが美味しいと笑う顔を想像したのか、顔がほころんでいる。

「マオ兄、人族と魔族は仲良くできないのかな。お母様やったことは間違い、なのかな」
「……」

 ほころんでいた顔が一転して、リルはそんなことをポツリと言った。
 少し前ならきっとまた仲良くなれるなんて言えたのに、今はそんなことは言えない。
 けど、ミーティアのしたことは間違いではないと思う。というか、間違っている、間違っていないで区別することではないことだと思う。

「どうだろうね」
「答えてくれないの?」
「ミーティアはすごいことをしたと思う。それがいいのか悪いのかはオレにはまだわからない」
「どういうこと?」

 リルはオレがはっきりミーティアは間違っていないと言うと思っていたのだろう。

「どの視点から見るかで変わるんだよ」

 人族からしたら敵が仲良くしようと言って来て、本当に仲良くなった。でも、いつ裏切られるかといいこともあった反面、そう怯えながら付き合って行くことになったのはあまりいいことではなかった。
 魔族からしたら人族と争う必要がなくなって平和になった。人族の文化も入ってきた。けれど、人族にミーティアを殺されてしまった。それはいいことではない。
 最後にそれらの延長線上で召喚されてしまった勇者たちからしたら、いいことはほとんどないのではないかと思う。召喚されて、魔族を魔王を倒せと戦うことを要求されて。人族を救うことを要求されて。
 オレは再びフィーリアたちに会えたからまあ召喚されて悪くはなかったかなと思うんだけどね。

「そっか、簡単なことじゃないんだね。うーん……」
「リル……」
「もう一度よく考えないと。マオ兄、帰ろう?」

 リルは恐らくこのままの考えて行くだろう。きっとその時はおんなじような考えを持つ倫太郎が関わってくることになるんだろう。

「うん、帰ろうか」

 オレはリルと手をつないで魔王城へ帰っていった。
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