クラス転移にハブられた

華乃アオ

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知らない天井だ

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「っと!」
「痛っ……ここは……?」

 自分の神域に来るのは何十年ぶりだろうか。掃除とかしてないから先生に散らかしっぱなしが丸見えだ。今度片付けるとしよう。

「俺の空間です。布の服にヒノキの棒で放り出されるのは大変でしょ?」
「そうだな」
「ということで、先生にスキルを授けましょう。ガチャにします?ルーレットにします?釣りにします?」

 特別な場合じゃない限り神は自由に人間に対してスキルを授けることができない。授ける場合どうやってもランダムな方法でしか授けられない。ランダムでも、ないよりはマシだ。ヒノキの棒も布の服も、竹槍だってないよりはマシでしょ?それと一緒。

「先生だと……三つ。行き先の成人男性平均は二つなので平均よりちょい上ですねー、でどうします?」
「ガチャで」
「ガチャですね。はい、三回ガチャれますよ」
「わかった」

 先生は慎重にガチャを引くみたいだ。スキルガチャは十種類ほどあるから、引くものを選ぶだけでも結構時間ががかる。ガチャごとになんとなく傾向があるのを俺は知っているけど、教えることはできない。どこまでもランダムにこだわる上がいるから仕方がない。
 先生がガチャをしている間、俺もスキルの選定にかかる。神様である分、便利なスキルや強いスキルをたくさん持っているけれど、行き先には存在しないスキルだったり持っているだけで追われるスキルがあるみたいだからそれらはこの神域に置いていくのだ。ゲームで言うスキルのオンオフ機能みたいなものだ。

「システムにかけてっと……」

 術式組むと便利だよね。一発で選定が可能。プログラミングみたいなものだと思ってくれれば結構。

「多いな……でも、こんなものか」

 半分くらいがスキル機能オフになったけど、残ったものでも十分だ。

「宮平ー、終わったぞ」
「はーい」
「"悪意の盾""剣術""ホイホイ"ってやつだったけど……どういうスキルなんだ?とくにホイホイ」

 先生のスキルガチャ結果は割といい結果だった。とくに悪意の盾はいい。もっていれば得をすることはあれど、損をすることは一切ないからな。

「悪意の盾は、悪意からスキル保持者を守るスキルです。対人間で絶大な効果があります。これがあれば暗殺されないでしょう。対魔物でも不意打ちを防ぐとかできます。悪意が自分に向いてないと効果を発揮しないです」
「ありがたいスキルだな」
「次の剣術はその名のとおりです。持ってないよりかは持っていたほうが剣が扱いやすいくらいです。んで、最後のホイホイはゴキブリホイホイってあるじゃないですか。そのホイホイ何ですけど……」
「ゴッキーホイホイなの?」
「何をホイホイするかはわかりません。けど、何かをホイホイするスキルです。過去に事件ホイホイや松茸ホイホイ、お魚ホイホイなどがいましたね。まあ、何かにめっちゃ愛されるスキルです」

 ちなみに俺もホイホイ持っているけど、弟妹ホイホイじゃない。俺のホイホイはキューティクルホイホイだ。髪の手入れをそこまでしなくてもキューティクルサラッサラの髪になるっていうやつだ。悪くはないだろう。

「何をホイホイすんだろ……不安だ」
「そして、行き先なんですけどイメージとしてはヨーロッパ。剣と魔法のファンタジー世界で、人族と魔族がいる世界です。人族と魔族はいま交流がありません。魔族が交流を断ったみたいですね……ってあのときか。二組は魔族攻略のために召喚されたようです。さ、行きましょうか」
「ばっちこい」

 確認したら思い出した。ここ、あの人たちの世界だ。あの人たちはもういないけれど、あの人たちが愛した世界。

「舌噛まないように気をつけてくださいね」
「舌?……って、落ちる!!」



……

………

…………

……………

………………

……………

…………

………

……



「ここは……どこだ?」
「近くに街っぽいのがあるけど」
「おー!先生かっこいい」
「そういや名前とか普通に宮平って読んでいいのか?」
「偲ぶために名前で呼び合いましょうか。トーヤ先生」
「よろしくな、エイチ」
「はい。……では、あの街目指してレッツゴー!」

 それほど長い道のりではなかったけど、魔物がうじゃうじゃいた。二分に一回エンカウント、戦闘に一分ちょい。これがなかなか進まないんだわ。流石に三歩進んで二歩下がるなんてことにはなってないけど、面倒。チョロチョロしやがって……こんにゃろう。なんで仲間呼びまくるの。そろそろ呼んだが仲間は来なかったが来てほしいなっ!
 大量の魔物も先生が戦闘になれるのにはちょうどよかったようで、街につく頃には危なげなく立ち回ることができるようになっていた。先生お上手です。

「プススの街、ねぇ……笑われてるみたいだ」
「あー、確かに」
「俺、この世界の常識知らないんだけど……どうしたらいいんだ?」

 そこで先生に暮らす上での常識を教えるのを忘れていた。戦闘の常識は戦闘しながら実践形式でみっちり叩き込んだけど、いかんせん魔物だらけだったからね。

「宿をとったら教えます。まずは街に入るんですけど……冒険者じゃないんでお金がかかります。街によって違うんですけどね」
「この世界のやつ持ってないけど……」
「魔物の核でも大丈夫ですよ。どっさりあります」

 持ちきれないくらいの魔物の核が袋に詰まっている。流石に全部は持ちきれなかったので、全体の半分は空間にしまっているけど、それでも持ちきれないくらいだ。そんなに大きくないのだ。今まで必要なかったし。

「お、それはよかった」

 街に入るための長い列に並んで俺と先生の番になったのは日が沈む頃だった。手間取ることなくお金の代わりに魔物の核を門番に渡して街の中に入る。この時間で宿は残っているだろうか。

「うーん……良いところは埋まっちゃってるかぁ……やっぱりな」
「だな……」
「どっかないですかねー」
「ありますよ!ぜひ、わが宿へ!」

 良いところは埋まってしまっていた。魔物が出る世の中、泊まるところは安くてサービスのいいベットが寝やすい宿が人気だ。そんな良いところはすぐに埋まるに決まっている。

「一泊食事付きで銅貨四つ。どうでしょう!」
「それ、安すぎないか?」
「短所として子どもがたくさんいます」
「いいんじゃないか?」
「先生がいいと思うならいいです。お願いしていいか?」

 宿がないわけではないけど、異世界はじめての宿で先生にサービスはともかく評判の悪い宿に泊まらせる気はなかった。いざとなったらしょうがなかったけど、できるだけ避けたかった。そんな中、宿が決まっていないのならと中学生くらいの女の子が声をかけてきた。

「子どもは好きだしな」
「それなら良かったです。ご案内しますのでついてきてくださいな」
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