ミナライの旅

燕屋ふくろう

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浜辺で遊ぼう 2

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そのまま、部屋で一週間を悶々と過ごした。
それからようやくスケルトンが薬を持ってきた。
船長はその間、夜中にほんの少し尋ねてきただけだったから相当忙しくしていたらしい。



「薬だ。ようやく出来た。水と一緒に飲むといい。苦いだろうが我慢してくれ。」
「うーん…わかった。」



薬が苦いのは村にいた時から知っていたから、イヤイヤながらもちゃんと飲んで、ベッドに横になる。




「皆で薬作ったの?」
「いや、主に船長とティチュだ。」
「船長が!?」
「洋館にあった本で知識を得たらしい。ティチュも検閲したんだし問題無いだろう。」



船長は意外とかしこいのかもしれない…。

実際、薬の効き目はあったようでだんだんとよくなっていった。それでもその後もう一週間は部屋にこもりっきりだった。たまに外の空気を吸わせてはくれたけど、ちゃんと治るのかと不安なままだった。



「それじゃあ、俺は船長の所に戻る。」
「えっ、お話しようよ。そんなに急がなきゃダメなの?」



寂しくて、船員を引き止めることも増えた。だいたいは「忙しい」なんて言ってはねのけられたけど、優しい船員は言うことを聞いてくれるかもしれないから…。


「それほどでもないが…ミナライ用の食事や薬で割と手こずっているんだ。数は一匹でも多い方が良い。」
「でも絶対行かなきゃいけない訳じゃないんでしょ?」

「まあ、そうだが…さすがに連絡も無しは不味い。一旦伝えてくるから待っていてくれ。」
「絶対ね。絶対だよ。戻ってきてよ?」
「わかったって。」



あんまり信じてなかったけど、少ししたらスケルトンがほんとうに戻ってきたから驚いた。



「え、来た…!?」
「絶対って言ったのはそっちだろう…帰った方が良いのか?」
「お話して!薬草集めに行った時のこととか。」
「わかった。」



スケルトンはベッドのそばの椅子に腰かけた。



「ミナライの風邪が発覚した日、船長がミナライの部屋から戻って来て開口一番、「島に薬草を採りに行こう」って言ったんだ。なんでも、風邪に効く薬草は島にしか生えないらしい。」

「そんなのがあるの?」

「人に荒らされてないって所が重要なんじゃないか?
案の定、船員は「適当言って…」なんて毒づいたが、船長が住み着いてた洋館にそんな本があって、内容を覚えてたらしいんだ。」

「洋館に居たのって結構前じゃないの?」

「その辺はわからんが…とにかく、野草は身近なものだ。知識として吸収しやすいから覚えてたんだろう。
俺たちは傷口に塗る薬草しか知らなかったが、船長には風邪に効く薬草の知識があった。船長だけじゃ弱いんでな、ティチュも「その話は本当だ」って後押ししてたよ。」



船長一匹だけじゃ薬草集めに踏み切れなかったかもしれないのか…船長とティチュがいてくれて良かった。



「薬の調合もその2匹?」
「いや、船長は外された。さすがに調合までは知識が曖昧だろうってティチュが止めたんだ。どさくさに紛れて何かするかもしれんしな。」
「何かって?」
「毒を混入させるには絶好のタイミングだろ?」



ぞっとして身を縮める。もう薬飲んじゃったんだけど…。



「安心しろ。船長は調合に加わってないし、正しい薬草かどうかはティチュがちゃんと見てる。」
「後から言わないでよ…。」
「悪かった。」



モンスターは生き死ににそんなに敏感じゃないのかもしれないけど、こっちは死にかけたり命をかけて戦ったことなんてないんだから…。

その辺りは未だによくわかってくれていない感じがする。



「薬草集めの続き、話して。」

「わかった。ほぼ一日かけて近くの島に行って、数日を採取に費やして、調合に何日も使った。思えば船員が一丸となって作業するなんて初めてだからな…かなり手こずった。
薬があった方が風邪が早く治るって言えばなんとかなると思ったんだが、船員の奴らはなかなか筋金入りだった。」



うわあ、なんて言う気にもなれなくて口を閉じ続けた。まさか、薬が遅れたのって船員がゴネたせい?そんなつまらない理由でジブンは何日ぶんも余計に苦しんだってこと?



「船員は「適当に調合すりゃ良いだろ」なんて言ってたが、変な調合をすれば毒になることを伝えたら反論しなくなった。
さかしい奴らだ。どうにかして穴を突こうとしてくる…知的な奴がいて助かったな。」



どうせそんなことだろうと思った…。風邪引いたその時からダルそうにしてたし、理屈がわかったとて人のためにやすやすと動くようなヤツらじゃない。

考え事をしていたら、スケルトンが頭をなでてきた。骨ばっていてちょっと痛い。


「今は休んでいたらいい。考え事をするのが好きなら止めんが。」
「ううん、キラい。」
「そうだろう?もう休んでおけ。」

「話の続きしてよ。休んでばっかりで寝られないの。」

「そうか?なら続きにしよう。
薬作りに手こずった理由はさっき話したものだけじゃなくてな…。薬草集めの傍ら、船員が船長の情報を聞き出そうとしたんだ。そのせいで船長が気もそぞろになった。」

「なんでそんなことしたの?」

「ミナライがいないから聞き出しやすかったんだろう。もしくは日頃の鬱憤晴らしで、船長が隠していそうなことを態と聞きに行ったのかもしれないな。」
「普通、そんなことしたらダメってわかるじゃん…。」

「船員にも積もり積もったものがあったんだろう。しかもそれ、聞けば、ティチュが焚き付けたそうじゃないか。」
「え、ティチュが…!?」

「不本意だったんだろうけどな。大方、採取を面倒臭がる連中に気休めか撒き餌として「船長に話を聞くなら今じゃないか?」なんて提案したんだろう。
船長があんなに不機嫌になるなんて誰も思ってなかったのさ…。」



船長が不機嫌か…モンスターから見てそう見えるなら、ほんとうにそうだったんだろう。



「聞き出せたの?」
「いや、無理だった。」
「1週間あったのに!?」
「オマエは1週間質問攻めにしたら秘密を明かすのか?」
「無理だけどさ…。」



村のことやジブンの名前について、船員にしつこく聞かれていた頃を思い出す。
 
例外もいたけど、船に居座ってる船員に対しては「話してあげようかな」なんて少しも思わなかった。船員へのイラつきが増していくだけのイヤな時間だった。



「船長がそんなになったから薬を作るのが遅れた。だからミナライがひどい咳に見舞われてることに目が向いて、風邪が簡単で治るものじゃないことが船員にもわかったようでな。船員主体で頑張ることになったよ。」
「そうだったんだ…。」



船員のヤツらまだサボってるのか、と咳をしながら腹を立てた一週間だったけど、船長のせいでもあるじゃないか…。

あんなに看病にやる気だったのに、イヤな質問されたくらいでうわの空にならないで欲しい。


船長にも船員にも何やってんだかと思いながら一晩明けてからは、今まででは有り得ないほどこんこんと眠り続けていたらしい。

朝のうちは皆、「よく眠れるなら良し!」と思っていたらしいけど、昼を過ぎてもジブンが起きないからさすがに可笑しいと思ってジブンの部屋に集まることになったようだ。


目を覚ますと船長とティチュとキャノヤーがこちらを覗き込んでいて、目を合わせると安心したようにはしゃいでいるのもぼうっと眺めることしかできなかった。


「水を飲んでおけ」と船長に渡されて、体を起こして受け取ろうとしたのにクラクラして倒れ込んでしまった。

とてつもなく体がだるくて、今起きたばかりなのに夢の中みたいに頭がふわふわした。



「おい、ミナライ!?」
「う、おぇっ…。」
「こら、揺らすな!ミナライ、俺がわかるか?」
「ティチュ…?」
「そうだ。こっちを見て、口を開けろ。」



色々と言われる通りにしたけど、ティチュは納得いかないようにうなり続けた。



「可笑しいな、今までの症状と違う…。」
「ミナライはどうなってしまうんだ!?」
「大声を出すんじゃない。ミナライ、昨夜はなんともなかったか?」
「うん…。」
「なら、薬が合わなかったのか…?」



ティチュは黙って考え始めて、船長はあたふたと慌て続けて、キャノヤーが心配そうに炎で温めてくれたけど眩しくてかなわなかった。



「量が多かったのか…?いや、適切な量に調整したはず…。」
「ねえ、強い薬草使った…?」
「強い?いや、効き目のある普通の薬草だ。」

「ううん…お母さんがね、子どもには強い薬があるって言ってたの…。」
「なるほど、それかもしれんな。」



ティチュはまた少し考えてから立ち上がった。



「薬が強いというより、副作用が強かったのかもしれん。別の調合を試すことにしよう。船長、甲板に戻るぞ。」
「あ、ああ。キャノヤーはミナライのそばにいてやってくれ。」
「わかった。」



別の薬を飲まされると、前のよりかは眠くならなかった。「様子を見よう」と言われて、また一週間。そのうちだんだんと良くなっていった。

何度も眠るうちに、「風邪に効く薬はない」と村の大人が言っていたことを思い出した。船員の言う「寝とけば治る」は間違いじゃなかったみたいだ…。

強い薬で、風邪とは別の体調不良におそわれることになっちゃった。誰も悪くないとはいえ、とんだとばっちりだ。


眠ってばかりだと暇にならなくて良いかと思ったけど、真夜中に目が覚めたら誰も起きてないから暇で仕方なかった。


船長の前で「暇過ぎて死んじゃう…」ってグチったら
「なに!?死ぬ!?」なんて勘違いしだして、
「違う違う!もう…!」と慌てた、バカみたいな思い出もある。


そう思うと、風の吹き抜ける甲板でゆっくりと過ごせる今がいかに幸せかがよくわかる。

ほんとうに、治って良かった。皆ががんばってくれたおかげだ。
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