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25.閃き
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キューン、クゥーン
アレクさんの少し困惑したような鳴き声を聞きながらも、俺は手に力を籠めて首周りのごわごわとした毛を掴み手になじんだ感触を堪能する。
そんな可愛い声出しても放してあげないですからね。
「――ザハスさん、アレクさんは…このままだと俺のこと、忘れちゃうんですか?」
俺はザハスさんに気になっていたことを聞いてみた。
でも正直、ザハスさんの言うことを全部鵜呑みにしていいのかは、微妙なところだと思ってる。
今のところ、オレが心から信用できるのはアレクさんだけだ。
そのアレクさんも、俺に都合の悪いことは自分に不利になろうとも教えてくれない、口の堅いところがある。
「難しいね…そこら辺は個人差が激しいから。でも、アラタちゃんのことをもしもアレクが覚えていたとしても、貧弱な人間に森での生活は無謀でしかないよ。妨害も、もちろんあるだろうし。その全てをアレクが一人で防ぐことは不可能だろうね…」
ザハスさんは、言いにくそうにしながら顔を顰めた。なんとなくだけど、ウソは言ってないんじゃないかな。
「それにアラタちゃんみたいな子が森をうろうろしてたら、悪い奴らが涎を垂らしてわんさか寄って来るだろうねぇ…。悪いこと言わないから、やめといた方がいい」
俺を見るザハスさんの目には同情がにじんでいる。
そんな目で見ないでよ。
俺は別に誰かに同情されたいわけじゃないし、自分は不幸だとも思ってない。
そりゃー、今俺の状況は理不尽なものだとは思うけど、全てが嫌なことばっかりじゃない。
俺が幸福だと感じているものまで全部ひっくるめて、勝手に誰かが不幸だと決め付けるのは横暴ってもんだろう。
それに、俺閃いちゃったんだよね。要は、アレクさんを元の姿に戻せれば全てまるっと解決するってことでしょ。
「ザバスさん。聞きたいことはだいたい聞けたんで、今日は帰ってください。俺、今からやることできたんで」
うまくいくかは分からないけど、やってみる価値はあるはず。
それを試すにも、観客がいては興が冷めてしまう。俺は露出趣味はないんだ。
「え? え…、急にどーしたの…? なんか、『覚悟決まりました』みたいな顔しちゃって……。アレクと二人で森に逃避行するのは絶対にダメだからね? お兄さんとちゃんと約束しよ?」
ザバスさんは太い指をニュッと伸ばして懇願するように揺らす。
意味がわからなくて「え、なに?」って顔をしていたら、半ば無理やり指を絡められた。
「はい、森にはぜったい行きません! ウソついたらハリセンボン飲ーます。指切った!」
あ~これ、指切りね。
つか、指切りとかザバスさんはよく知ってたな。こんなおまじない、日本以外じゃやらないんじゃないの? よく知らんけど。
「何やってんですかザバスさん…。つか、勝手に決めないでくださいよ。あと、「指切った」って言ったのに、まだ握ったままだし」
小指同士でやるってところまでは知らないのか、適当にグチャッと絡めただけの指を引っこ抜く。
あと、ザバスの手のでかさがエグい。虎って猛獣だもんね。少しでも爪に引っかけたら即指チョンパしそう。
ていうか、何度も思うんだけど、力加減には気をつけて欲しい。指がヒリヒリと痛くてしょうがない。
「あれ、どこか間違ってた? この"指切り"って、なんか怖いよねぇ…。"針千本飲ます"なんて、オレにはとうていムリだよ…。だからアラタちゃん、オレとの約束ぜったいに破らないで、ね?」
最後の「ね?」の部分にやたら強い圧を感じる。
「知らないよそんなの」と言える感じじゃないから、俺は渋々頷いた。
まあ、俺だって流石に森への逃避行は現実的じゃないって分かってるし。
「はぁ……もう分かりましたから、さっさと帰ってくださいよ」
この人には今から俺がやることを教えたらダメだ。
なんたってさっき俺にザバスさんがやろうとしたことを考えれば、信用なんてできないもんね。
俺は奥ゆかしい日本人なんだ。誰でもカモ~ンな、パリピじゃない。
別にだからと言って、パリピさんたちを貶してるわけじゃなくて、あくまで俺はそういうタイプじゃないってこと。ここ大事!
「ひどい…そんなあからさまにジャマ者扱いして、追い出そうとしないでよアラタちゃん! オレ、けっこう二人のためにってガンバったのよ!」
「あーはいはい。ありがとうございました。出口はあちらです。お帰りくださ~い」
棒読みで俺が感謝を告げると「オレの扱い雑ッ!」と文句を言われたが、そんなの知らん。
今から俺には重大ミッションが待っているのだ。
そのためにも、まずは準備を始めなきゃ。やることはたくさんあるんだ。
今までのように、時間をムダにしたくない。
まずはそうだな。あの初日に受付でもらったパンフレットの中身を、もう一度確認しなきゃ。
俺は気合を入れなおすために、アレクさんの首筋に顔を埋めて思いっきり吸い込んだ。
よし、チャージ完了! さっそくやるぞ、おー!
アレクさんの少し困惑したような鳴き声を聞きながらも、俺は手に力を籠めて首周りのごわごわとした毛を掴み手になじんだ感触を堪能する。
そんな可愛い声出しても放してあげないですからね。
「――ザハスさん、アレクさんは…このままだと俺のこと、忘れちゃうんですか?」
俺はザハスさんに気になっていたことを聞いてみた。
でも正直、ザハスさんの言うことを全部鵜呑みにしていいのかは、微妙なところだと思ってる。
今のところ、オレが心から信用できるのはアレクさんだけだ。
そのアレクさんも、俺に都合の悪いことは自分に不利になろうとも教えてくれない、口の堅いところがある。
「難しいね…そこら辺は個人差が激しいから。でも、アラタちゃんのことをもしもアレクが覚えていたとしても、貧弱な人間に森での生活は無謀でしかないよ。妨害も、もちろんあるだろうし。その全てをアレクが一人で防ぐことは不可能だろうね…」
ザハスさんは、言いにくそうにしながら顔を顰めた。なんとなくだけど、ウソは言ってないんじゃないかな。
「それにアラタちゃんみたいな子が森をうろうろしてたら、悪い奴らが涎を垂らしてわんさか寄って来るだろうねぇ…。悪いこと言わないから、やめといた方がいい」
俺を見るザハスさんの目には同情がにじんでいる。
そんな目で見ないでよ。
俺は別に誰かに同情されたいわけじゃないし、自分は不幸だとも思ってない。
そりゃー、今俺の状況は理不尽なものだとは思うけど、全てが嫌なことばっかりじゃない。
俺が幸福だと感じているものまで全部ひっくるめて、勝手に誰かが不幸だと決め付けるのは横暴ってもんだろう。
それに、俺閃いちゃったんだよね。要は、アレクさんを元の姿に戻せれば全てまるっと解決するってことでしょ。
「ザバスさん。聞きたいことはだいたい聞けたんで、今日は帰ってください。俺、今からやることできたんで」
うまくいくかは分からないけど、やってみる価値はあるはず。
それを試すにも、観客がいては興が冷めてしまう。俺は露出趣味はないんだ。
「え? え…、急にどーしたの…? なんか、『覚悟決まりました』みたいな顔しちゃって……。アレクと二人で森に逃避行するのは絶対にダメだからね? お兄さんとちゃんと約束しよ?」
ザバスさんは太い指をニュッと伸ばして懇願するように揺らす。
意味がわからなくて「え、なに?」って顔をしていたら、半ば無理やり指を絡められた。
「はい、森にはぜったい行きません! ウソついたらハリセンボン飲ーます。指切った!」
あ~これ、指切りね。
つか、指切りとかザバスさんはよく知ってたな。こんなおまじない、日本以外じゃやらないんじゃないの? よく知らんけど。
「何やってんですかザバスさん…。つか、勝手に決めないでくださいよ。あと、「指切った」って言ったのに、まだ握ったままだし」
小指同士でやるってところまでは知らないのか、適当にグチャッと絡めただけの指を引っこ抜く。
あと、ザバスの手のでかさがエグい。虎って猛獣だもんね。少しでも爪に引っかけたら即指チョンパしそう。
ていうか、何度も思うんだけど、力加減には気をつけて欲しい。指がヒリヒリと痛くてしょうがない。
「あれ、どこか間違ってた? この"指切り"って、なんか怖いよねぇ…。"針千本飲ます"なんて、オレにはとうていムリだよ…。だからアラタちゃん、オレとの約束ぜったいに破らないで、ね?」
最後の「ね?」の部分にやたら強い圧を感じる。
「知らないよそんなの」と言える感じじゃないから、俺は渋々頷いた。
まあ、俺だって流石に森への逃避行は現実的じゃないって分かってるし。
「はぁ……もう分かりましたから、さっさと帰ってくださいよ」
この人には今から俺がやることを教えたらダメだ。
なんたってさっき俺にザバスさんがやろうとしたことを考えれば、信用なんてできないもんね。
俺は奥ゆかしい日本人なんだ。誰でもカモ~ンな、パリピじゃない。
別にだからと言って、パリピさんたちを貶してるわけじゃなくて、あくまで俺はそういうタイプじゃないってこと。ここ大事!
「ひどい…そんなあからさまにジャマ者扱いして、追い出そうとしないでよアラタちゃん! オレ、けっこう二人のためにってガンバったのよ!」
「あーはいはい。ありがとうございました。出口はあちらです。お帰りくださ~い」
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今から俺には重大ミッションが待っているのだ。
そのためにも、まずは準備を始めなきゃ。やることはたくさんあるんだ。
今までのように、時間をムダにしたくない。
まずはそうだな。あの初日に受付でもらったパンフレットの中身を、もう一度確認しなきゃ。
俺は気合を入れなおすために、アレクさんの首筋に顔を埋めて思いっきり吸い込んだ。
よし、チャージ完了! さっそくやるぞ、おー!
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