そんなチートは要りません!

MONGOL

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22.強襲

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 今日も今日とて、同じようなことを同じように繰り返す日々…………に、なるはずだった。

 ――変化は急速に、身構える暇すら与えてはくれない。




 日が傾き、部屋の中は薄暗くなってきた。日本時間で言うとおよそ午後五時から六時の間ぐらい。
 さて、そろそろ部屋の明かりを灯して歩こうと腰を上げたところだった。

 部屋の各所に設置された簡素なランタンは、小さな魔石が中に入っていて、それに魔力を流せば一定時間光を放つ仕組みになっている。魔力がない転移者でも支給されている魔力満タンの魔石を使えば一か月は余裕で暮らせるぐらいにはたくさんの魔力が補充されている。

 暗い中を手探りで歩くのは嫌だから、部屋がこれ以上暗くなる前には終わらせておきたい作業だ。

「あれ、アレクさん? 一階にいるのかな?」

 二階の廊下で珍しくアレクさんが一緒に付いて来ていないことに気が付いた。いつもは部屋を移動するたびに付いて来るのに。たまたまタイミングが悪かったのかな。
 後で来るかもしれないし、先に行こう。暗くなる前に二階部分は終らせておきたいし。

「から〇ーなぜな〇のーからすのーふっふふふーん」

 夕焼け色の影は濃くなり、廊下の端はすでに暗くて見通すことが出来なくなっている。
 一人っきりの寂しさをごまかすように、ちょっと大きめの声で童謡を歌いながら廊下の端にある寝室へ向かう。

 キイと普段は気にならない扉の軋む音にもビクついてしまいかなり恥ずかしい。この時だけは一人でよかったかもと思ってしまった。
 別にビクビクしてても、アレクさんは俺のことをバカにしたり笑ったりしないけどね。
 でも、ビビりだと思われるのはなんか悔しいし、相手がアレクさんでも隠しておきたい。

 一人で寝るには大きなベッドが目に入る。
 すぐ横のナイトテーブルに置かれたランタンに手を伸ばしたところで、上下が反転した。

「な、なに……え?」

 強く掴まれた両腕を頭の上で交差するように拘束されて、顔の見えない誰かに押し倒された。
 部屋が暗くて誰だか全く分からない。

「悪く思わないでくれよ」

 首筋に熱い息があたる感触に体が勝手に震える。
 怖い……そう思うのに、身動きはおろか声さえ出ない。

「アイツに勘付かれる前に終わらせたいが…さすがにムリだろうな」
「ひぃッ…! ア、アレ…むぐぅ」
「黙ってろ。酷くされたくはないだろう?」

 簡単にビリッと破かれる服が目に入る。

「は、はぅ…」

 震える肌を無遠慮になぞる手は、明らかに人間のものではなかった。
 暗い部屋の中でも光を放つ瞳は黄金に輝き、滲む視界に広がる。

「ならしてる時間も惜しいんだがな」

 仕方ないと言わんばかりに溜息をついて広げられる両足には力は入っておらず、されるがまま曝される。素早く何かをかけられて、肌を伝う。

「こんなこと言っても信じてもらえるとは思ってないが…オレだって出来ればこんなことしたくないんだ」

 持ち上げられた足が腕の横につく。酷すぎる自分の格好に、これ以上目を開けていられない。

「なんでお前だけ許された。なんでお前だけ特別なんだ。お前のなにが、他と違うっていうんだ…」

 ボソボソと独り言を呟きながら、ガリッと牙が太ももに食い込む。

「や……やめて…おねが」
「声を出すなといったよな」

 両手両足を片手で抑えられ、空いた手が振り下ろされる。

「ぐぅ…」

 バチンと尻を叩かれて、鋭い痛みで尻を浮かせたが上からのしかかってくる男の重みでベッドに縫い付けられてしまった。
 声を出さないように痛みと涙をこらえて、必死に唇をかむ。

「……さっさと終わらせよう」
「……!!」

 ああ、終わった。アレクさん、最期に大声で呼んでたら来てくれたかな。
 でも、もう遅い。


「…………」
「…………」

「…………」
「…………?」



「……おそい!!!」
「ひぃッ! あ…ご、ごめんなさい…」

 口を押えることも出来ず、間近で怒鳴られてつい悲鳴を上げてしまった。
 でも、恐怖で震え上がる俺に相手からは何も反応がかえってこなかった。

「これじゃムダに怯えさせちまっただけじゃねぇか」

 舌打ちと同時に重かった体が急に軽くなる。手も足も自由を取り戻し、焦った俺はベッドから飛び降りた。
 上手く受け身をとれなくて酷く体を打ち付けてしまったけれど、襲ってきた男と少しでも距離をとれたことに安堵した。

 でも、まだ何も解決してはいない。
 確認するのは怖かった。それでも、こんなことをしたのがだれなのか、知らない方がもっと怖い。

「…悪かったなアラタちゃん」

 目を凝らした先にいたのは、体格のいい虎顔の獣人。最近知り合った陽気なアレクさんの同僚だった。

「なんで、ですか……ザハスさん…なんでこんなことッ!」

 恐怖より怒りが勝り、体が震える。怖いからじゃない。憤りと悔しさでごちゃ混ぜになった感情が抑えられなかった。

「まぁ、アンタには恨まれても仕方ない。後でアラタちゃんの気が済むまで何発でも殴ってくれていい」
「そんなこと、どうでもいいです! 俺は、そんなことが今聞きたいんじゃない!」
「アラタちゃんの協力がどうしても必要だったんだ。だから…」

 ふいに風が吹いたと思ったら、目で確認できないほど高速で何かがぶつかった。
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