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後編
しおりを挟む「よって、婚約は破棄とする」
「本気で言っているのですか? 今さら関係を解消するなんてことになったら騒ぎになってしまいますよ」
「それでもいい!」
「そうですか……」
「いいだろ!? じゃ、俺はこれで。さらばだ泥女!」
こうして私たちの関係は終わりを迎えた。
一緒に歩んでいけるなんて、一緒にいろんなことを乗り越えていこうなんて、彼は欠片ほども思っていなかったのかな。
そう思うと少し悲しくて。
胸が締め付けられるような感覚があった。
(でも……これも運命、仕方ないか)
道の端で咲く小さな花を見下ろして、心の中だけで呟く。
――すべては終わった。
◆
婚約破棄後、私は災害救助隊に入った。
なぜなら、泥族の能力を活かせると思ったからだ。
泥族の血を引く者は泥を好きなように操ることができる――それはつまり、豪雨災害なんかの時に役に立てるということだ。
皆ができないことをできるのだから、誰かのためにその力を使おう。
そう思って加入。
で、結果的に、とても活躍することができて――しまいには国王から表彰をされたほどの活躍となった。
「きみは凄いなぁ、その能力。偉大な力だなぁ。何人の命を救ったことか」
「ありがとうございます」
「やるね! しかも、女性でありながら人助けに生きようという心も凄いね! かっこいい!」
「え、それは照れるわ。でも……嬉しい、ありがとう」
私は生きるべき場所を手に入れた。
だからこれからも、ここで生きてゆく。
本当は私が活躍する時なんてない方がずっと良いのだけれど――でも、災害というのはどうしても時折起きてしまうもの、だからせめて被害を少しでも小さくできればと考えている。
ちなみにアーノットはというと、惚れた女性に婚約直前に振られてしまい、それによってショックを受けたそうで――衝動的に崖から飛び降り、この世から旅立ってしまったそうだ。
◆終わり◆
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