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1話 不安しか生まない出会い
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今日は、私の二十歳の誕生日。
そして、結婚式の日でもある。
アックス王国の第二王女である私——キャシィ・アクスは、親が勝手に決めた相手と、今日結婚するのだ。
実は、そのことを知ったのは、数日前。
私は突然「結婚相手決めておいたから」と告げられた。
確かに、王位継承権を持つのは第一王女だけれど。第二王女の私も一応持ってはいるけれど、王位に就くことはないだろう。だから、私がどんな人生をゆこうと、王国にさほど影響はない。それは事実だけれど。
……それにしても、ちょっと酷くない?
いや、文句を言っても無駄だ。余計なことを言うのは止めよう。
で、話は戻るが。
いきなり両親から「結婚相手決めておいたから」と告げられた私は、驚きを隠せなかった。重大なことを急に告げられるという経験は何度もあったが、まさか結婚まで、という思いでいっぱいだった。
けれど、私が何か言ったところで、決定事項は変わらない。
だから私は、それに従うことに決めた。
悔しいし、虚しいし、悔しいし、複雑な心境ではあるけれど。
そんなこんなで勝手に決められた私の結婚相手は、隣国ピシアのリンツ・フローラ王子。
ちなみに、初めて聞いた時に内心「可愛い名前」と思ってしまったことは、秘密。
顔も知らない相手との結婚。そして、夫婦生活。
もはや不安な要素しかないが、それでも、断れなかった以上は受け入れるしかない。
だから、取り敢えず頑張ろうと思う。一応は、だが。
私は今、ピシア城の中にある一室で、ソファに座っている。
肩甲骨辺りまでの丈の水色の髪はうなじで一つのお団子にまとめ、軽く化粧をし、髪と似た色のドレスを身にまとって。
なぜおめかししているか?
それは簡単。
顔合わせをするべく、リンツを待っているからである。
彼側から、結婚式の前に顔合わせしておきたいという申し出があったため、ここで会うことになったのだ。
しかし、彼はなかなか来ない。
もうとっくに待ち合わせの時間だというのに!
……いや、怒るのは止めておこう。
一人で苛立ったところで、彼が現れるわけではないのだから。苛立つだけ無駄だ。
そう思い、私は、気分を変えるために周囲を見回す。
ソファやテーブルはいかにも高級そうなもの。壁面に飾られている絵画は、まさに古き良き時代、という雰囲気。それに加え、窓枠も華やかなデザインだ。
隣国であるにもかかわらず、私は、ピシアへ来たことはあまりなかった。だから不安もあったのだが、このくらい華やかな国なのならば何とかやっていけるかもしれない、と思った。
それにしても、初めて会う時に遅刻してくれるなんて、彼はなんという適当な人なのだろう。約束の数分前には着いておくのが常識ではないのか。
彼がまだ来ないことにもやもやしながら、私は、そんなことを考え続けていた。
それから、十分ほどが経過した時。
突然扉が開いた。
「あっ……!」
挨拶をしなくては、と、半ば反射的に立ち上がる。
——が、現れたのは一人のおじさんだった。
髪は白髪混じりの灰色。前髪はすべて、後ろへと流してある。髪は前も後ろもぴっちりと固められていて、飛び出している毛なんてものは一本もない。
きっちりしていそうな人だ。
リンツが遅れることを連絡しに来てくれたのか——と思っていたのだが。
「待たせてしまって、すまないね!」
「……え?」
目の前の彼は、急に子どものような明るい笑みを浮かべる。
「君がキャシィさんかね」
「えぇ、そうよ。……貴方は?」
「僕はリンツ・フローラ」
はい!? と叫びそうになったが、何とかこらえた。いきなり叫び出す女なんて、引かれるに決まっているから。
「僕が君の相手、ピシアの王子だよ。よろしくね。いや、いきなりこれは慣れなれしいかもしれないが……よし! 取り敢えず、よろしく!」
結婚相手リンツは、私よりかなり年上のようだ。しかも、とてもよく喋る人。私とは真逆のタイプと言っても過言ではない。
これから上手くやっていけるのだろうか。
リンツとの出会いは、不安しか生まなかった……。
そして、結婚式の日でもある。
アックス王国の第二王女である私——キャシィ・アクスは、親が勝手に決めた相手と、今日結婚するのだ。
実は、そのことを知ったのは、数日前。
私は突然「結婚相手決めておいたから」と告げられた。
確かに、王位継承権を持つのは第一王女だけれど。第二王女の私も一応持ってはいるけれど、王位に就くことはないだろう。だから、私がどんな人生をゆこうと、王国にさほど影響はない。それは事実だけれど。
……それにしても、ちょっと酷くない?
いや、文句を言っても無駄だ。余計なことを言うのは止めよう。
で、話は戻るが。
いきなり両親から「結婚相手決めておいたから」と告げられた私は、驚きを隠せなかった。重大なことを急に告げられるという経験は何度もあったが、まさか結婚まで、という思いでいっぱいだった。
けれど、私が何か言ったところで、決定事項は変わらない。
だから私は、それに従うことに決めた。
悔しいし、虚しいし、悔しいし、複雑な心境ではあるけれど。
そんなこんなで勝手に決められた私の結婚相手は、隣国ピシアのリンツ・フローラ王子。
ちなみに、初めて聞いた時に内心「可愛い名前」と思ってしまったことは、秘密。
顔も知らない相手との結婚。そして、夫婦生活。
もはや不安な要素しかないが、それでも、断れなかった以上は受け入れるしかない。
だから、取り敢えず頑張ろうと思う。一応は、だが。
私は今、ピシア城の中にある一室で、ソファに座っている。
肩甲骨辺りまでの丈の水色の髪はうなじで一つのお団子にまとめ、軽く化粧をし、髪と似た色のドレスを身にまとって。
なぜおめかししているか?
それは簡単。
顔合わせをするべく、リンツを待っているからである。
彼側から、結婚式の前に顔合わせしておきたいという申し出があったため、ここで会うことになったのだ。
しかし、彼はなかなか来ない。
もうとっくに待ち合わせの時間だというのに!
……いや、怒るのは止めておこう。
一人で苛立ったところで、彼が現れるわけではないのだから。苛立つだけ無駄だ。
そう思い、私は、気分を変えるために周囲を見回す。
ソファやテーブルはいかにも高級そうなもの。壁面に飾られている絵画は、まさに古き良き時代、という雰囲気。それに加え、窓枠も華やかなデザインだ。
隣国であるにもかかわらず、私は、ピシアへ来たことはあまりなかった。だから不安もあったのだが、このくらい華やかな国なのならば何とかやっていけるかもしれない、と思った。
それにしても、初めて会う時に遅刻してくれるなんて、彼はなんという適当な人なのだろう。約束の数分前には着いておくのが常識ではないのか。
彼がまだ来ないことにもやもやしながら、私は、そんなことを考え続けていた。
それから、十分ほどが経過した時。
突然扉が開いた。
「あっ……!」
挨拶をしなくては、と、半ば反射的に立ち上がる。
——が、現れたのは一人のおじさんだった。
髪は白髪混じりの灰色。前髪はすべて、後ろへと流してある。髪は前も後ろもぴっちりと固められていて、飛び出している毛なんてものは一本もない。
きっちりしていそうな人だ。
リンツが遅れることを連絡しに来てくれたのか——と思っていたのだが。
「待たせてしまって、すまないね!」
「……え?」
目の前の彼は、急に子どものような明るい笑みを浮かべる。
「君がキャシィさんかね」
「えぇ、そうよ。……貴方は?」
「僕はリンツ・フローラ」
はい!? と叫びそうになったが、何とかこらえた。いきなり叫び出す女なんて、引かれるに決まっているから。
「僕が君の相手、ピシアの王子だよ。よろしくね。いや、いきなりこれは慣れなれしいかもしれないが……よし! 取り敢えず、よろしく!」
結婚相手リンツは、私よりかなり年上のようだ。しかも、とてもよく喋る人。私とは真逆のタイプと言っても過言ではない。
これから上手くやっていけるのだろうか。
リンツとの出会いは、不安しか生まなかった……。
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