婚約破棄され、川になる。

四季

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婚約破棄され、川になる。

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 婚約破棄を告げられ悲しみの海に落ちた私は、夜自宅の自室にて泣いていたような気がするのだが、気づけば川になっていた。

 聞こえてくるのは鳥のさえずり。
 軽やかな風の音と、それに揺らされる木々の葉の擦れる音も、耳に飛び込んでくる。

 それでも、婚約者から傷つけるような言葉を吐かれたことは忘れられず。

 ただ、川は透き通った水をただ流すだけ。それはまるで無という概念を描いているかのようで。忘れろ、黒いものは流せ、そう言われているかのようにも感じられて。けれども私には人格があり感情がある、だから、すべてを水には流せない。

 川となった今、この悲しみをどう表現しようか。


 ◆


 その後私は増水した川となり、かつて婚約者だった彼を家ごと流した。

 彼はもうすぐ結婚する予定だったらしい。
 でも私には関係のないことだ。

 彼はもう海へ出ただろうか?

 川を伝えばいずれそこへつく。
 それはいつの世も同じだ。

 私は今、爽やかな心で佇んでいる。

 今ならすべてを許せるかもしれない。
 そんな気がしてくるほどに、さっぱりして、穏やかな心であれているのだ。


 ◆


 あれから百年、私は今も川としてここに在る。

 地形は変われど。
 川はここにあり続ける。

 たとえ二度と人間に戻れぬとしても、それでも後悔はしない。


◆終わり◆
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