ミルナの恋路 ーある日編ー

四季

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後編

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 運が悪く、一日中なぜかルジェベリアと話せなかったミルナは、いじけながら宿泊所の女湯へと向かった。入り口の扉を開け、一歩踏み込むと、湯船の方へ向かおうとしているルジェベリアの姿が視界に飛び込んでくる。

「あっ! ルジェベーー」

 話せる、と喜んだのもつかの間、たまたま地面に落ちていた固形石鹸で足を滑らせてしまう。

「……大丈夫か」
「あ」

 ミルナは何とか転倒せずに済んだ。
 というのも、ルジェベリアが咄嗟に支えてくれていたのである。

「気をつけた方がいい。風呂場は滑りやすいし、ここはなぜか固形石鹸がよく落ちている」
「う……うん。気をつける」

 その後、ミルナはルジェベリアと共に湯船に浸かることとなった。

「どうしてあんなに暗い顔をしていた?」

 ミルナはルジェベリアのうなじに見惚れている。

「え……。な、何の話……?」
「ここへ入ってきた時。随分不満げな顔をしていたが、何かあったのか」
「う……ううん。何もない」
「そうとは思えない。本当のことを言ってくれ」

 少し黙った後、ミルナは口を開く。

「……寂しかったの。その……ルジェベリアと、話せなかった……から……」

 ようやく本心を口にすることができたミルナの頭頂部を、ルジェベリアはぽんと軽く叩く。

「そういうことか」

 ルジェベリアはふっと笑みをこぼしていた。

◆終わり◆
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