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3話
しおりを挟む「さようなら、ダット」
私は彼に縋りつきはしない。ただし取るものは取る。しっかりと。過剰な反撃はしないが、最低限のことに関しては容赦しない。それは彼が奪われるべきものだからだ。
その後、時間はかかったけれど、ダットとあの女から慰謝料を支払ってもらうことができた。
親の知人なども協力してくれて、それでようやく払ってもらえたのだ。
ま、ひとまずは安堵。
さてこれからどうしようか……。
◆
あれから数年、私は良家の子息と結婚した。
今はのんびり花を育てている。
子どもはまだどうなることか未定だが、それでも毎日は穏やかで楽しい。
それに、最近は親しい近所の人もできた。
毎日とても充実している、そう感じている。
「綺麗に咲いてるわねぇ。フィールさんがお嫁に来てからここの花壇とっても綺麗になったわぁ。ありがとう素敵だわぁ」
「あ。ありがとうございます」
特に隣の家のおばあさんには可愛がってもらっている。
夫がいない間などは彼女とのんびり話をしていることも多い。
とても優しい人で、近くにいると癒される。
「フィールさんは花を愛する女性なのね」
「そうなんです、好きなんです。……と言っても、元々育てていたわけではないんですけど」
「あらそうなの。でも上手ねぇ。努力ゆえの成果かしら」
「そう言っていただけるととても嬉しいです、ありがとうございます」
ちなみにダットはというと、子ができたからということであの時の女と結婚するも喧嘩ばかりの毎日になってしまったそうだ――ある時喧嘩中に女を階段から突き飛ばし転落させ、それによって悲しいことを起こしてしまって――女の親からとんでもない額を請求されることとなってしまったそうだ。
そして彼は一文無しに近い経済状況になってしまったらしい。
なんということだ……。
とんでもなく恐ろしい……。
……いろんな意味で。
ダットの方向から見ても、女の方向から見ても――どちらから見ても恐ろしい話だ。
◆終わり◆
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