理不尽な理由で婚約破棄を告げられました。〜あまり気にせず、気ままに暮らしましょう〜

四季

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4話「単純な人のお誘い」

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 フルービルの掃除はまだ継続している。私はその姿を眺めるだけ。というのも、フルービルは私に役割を与えてくれないのだ。そのため、こうしてただ見つめていることしかできない。

「ということは、リリアンさん、フリーになったんですね!」
「また傷を抉るようなことを……」
「あっ。もし失礼だったら! すみません!」

 わざとなのか、わざとでないのか、掴みきれない。

「そうだ! フリーになられたんだったら、僕とお茶しませんー?」

 なぜ彼はこうも色々言ってくるのか。話し相手として呼んだわけではないのだから、黙々と作業をするでも問題ないのに。いきなり婚約破棄された不運な私に気を遣っているのだろうか。

「あの……そういうのは結構です。私、気にしていませんから」
「え?」
「婚約を破棄されたこと、そんなに気にしていません。ですから、気遣いは不要です」

 変に気を遣われた方が虚しくなる。

「そんなんじゃないですってー。僕、実は昔から、リリアンさんに憧れてたんですよねー」

 フルービルは棚と床の隙間の埃を小さなホウキで掃き出す。肉眼で見ている分にはそんなに汚れているようには見えないのだが、彼がホウキを動かすと意外と埃がたくさん出てきていて驚く。こんなところにも埃があったのか、という思いだ。

「笑えない冗談は止めて下さい!」
「……ですから、冗談じゃないんですよ」

 フルービルは突然低く静かな声を発した。

「勘違いしないで下さい、リリアンさん。僕は本気ですから」
「っ……!」
「なーんて! ま、重く受け取らないで下さいよっ」

 急に緩い顔つきになるフルービル。直前の真剣な表情の彼とは別人のようだ。人格が丸ごと変わりきってしまったかのようである。彼の変わりように、私の脳はついていけなかった。

「取り敢えずお茶しましょうよ!」

 まだ言うのね、と、心の中だけで密かに突っ込みを入れる。
 だが、フルービルのことは嫌いではないので、一緒にお茶を楽しむというのも悪くはないかもしれない。それに、独り身に戻ってしまったわけだから、彼と遊んでいても誰も文句は言わないだろう。

「そう何度も言ってくださるなら……まぁ、構いませんけど……」
「きーまりっ!」

 いちいち声が大きい。
 ここは誰もいないところだからまだいい。けれど、もしこれが第三者がいるところだったとしたら、恥ずかしすぎて穴を掘り始めたかもしれない。

「早いですね」
「善は急げーってやつでーっす!」

 そんなことを言いつつ、フルービルは棚と床の隙間からいまだに埃を掃き出している。

 ……どれだけあるの、隙間の埃。

「この掃除が終わったらー、で、いいですよねーっ?」
「はい」
「あぁーっ。楽しみになってきたぁーっ」

 フルービルはすっかりご機嫌。訪ねてきた時から明るく元気ではあったが、ここ数分でさらに明るく元気になったような気がする。お茶の誘いが成功したからだろうか。もしそうだとしたら、何て単純なのだろう。
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