26 / 51
26.お見舞いに行った!
しおりを挟む
「しかしびっくりしたわねぇ。コザクラちゃんがあんなことになるなんて」
「本当に……。心配だわ」
フレアとミルフィは朝の会の開始時間ギリギリに花組の教室へ入る。生徒たちは既に揃っていて、しかも、きちんと席に着いていた。教室の一番前にはカッタルが立っている。
「おはよう。遅かったな」
担任のカッタルがフレアたちにそんな風に声をかけた。
「ごめんなさい! 事件に遭遇してしまって!」
それがフレアの返事。
「事件? 何かあったのか」
「他のクラスの友人が、図書館で気絶していたみたいで……」
「それは物騒だな」
「取り敢えず座りますね!」
周囲からの視線が痛かったので、フレアは素早く席に向かった。
ミルフィも同じように行動する。
それから一分も経たないうちに、朝の会が始まる。前に立っているカッタルが、今日の用事やこれからのことについて話す。生徒はただそれを聞くだけだ。
授業がすべて終わり、夕方。
今日しなくてはならないことを終え、生徒たちは解散。ある生徒はすぐに部屋へ帰る、ある生徒は食堂に向かう、と、思い思いの行動を取り始める。
「ねぇ、今日どうする? フレアちゃん」
「そうね……コザクラのところに行ってみたいわ」
フレアは今日一日中コザクラのことが気になっていた。自死を試みたわけではないだろうと信じていても、意識を失っていたのだから心配せずにはいられない。
「コザクラちゃん? なら保健室かしら」
「保健室、どこにあるか知ってる?」
「えぇ! そういえば、フレアちゃんは行ったことがないんだったわね。見て回った時も、前は通ったけれど、紹介はしなかったかもしれないわねぇ」
こうしてフレアは、ミルフィに案内してもらって保健室へ向こうことを決めた。
だが、話を近くで聞いていたリカルドは、同行を申し出る。また、「同行を拒否するなら行かせられない」と主張。そこで、フレアは仕方なく同行を認めた。リカルドの同行を断ることとコザクラに会うことを天秤にかけて、コザクラに会うことを優先したのだ。
「あくまで俺は付き添いだ。邪魔する気はない。だから悪く思わないでくれよ」
「えぇ、分かってるわ! 静かにしてくれれば問題ないわよっ」
保健室に到着する。扉の前でフレアはごくりと唾を飲み込んだ。初めて来る場所だったからだ。ちなみに、保健室の扉は木製の扉である。
「ノックしてから開けるのよ、フレアちゃん」
「え、ええ! そうね!」
ミルフィに言われた通り、フレアはまず扉をノックした。すると中から「はーい?」と女性の声が飛んでくる。そうなってからフレアはゆっくりと扉を開けた。遠慮がちに開けると、室内にいた女性が振り返り「いらっしゃーい。怪我でもした?」と尋ねる。
「あの……そうではないのです。すみません。コザクラさんの様子が気になって」
「コザクラちゃん? ああ、そういうことね! まだ寝てるわよ」
「入っても構いませんか?」
「いーいわよ? あ、でも、静かにしてちょうだいね?」
フレアは「はい」と答えて保健室に入っていく。初めての経験にドキドキしながら。
フレアとミルフィは、女性に案内されて歩く。やがて、女性が足を止めたので、フレアたちも立ち止まった。女性は小さめの柔らかい声で「アマミさーん。今少し入っても良いかしら?」と問う。すると、数秒後に、「あ、はい……」と返事が飛んできた。その返事を確認してから、女性はゆっくりとカーテンを開ける。ベッドに横たわるコザクラの姿が露わになった。
「あ……! フレアさん、ミルフィさん……!」
お見舞いに来た二人を視認したコザクラは、上半身を起こしつつ嬉しそうな顔をする。両の瞳に希望の光を宿した。
「コザクラ、体調はどう?」
「来て下さってありがとうございます、フレアさん。……もう元気です」
フレアは何事もなかったかのように言葉を交わしつつも、コザクラの首の痣を見逃さない。
「無事で良かったわぁ、コザクラちゃーん」
ミルフィは一切躊躇いなくコザクラに近づいてゆき、その体を強く抱き締めた。コザクラは最初戸惑ったような顔をしていたが、少しして慣れてくると、慎ましく微笑んでいた。
「ねぇ、コザクラ。図書館で一体何があったの?」
フレアは気になっているところについて掘っていく。
「……本を読んでいたのです、普段通り」
コザクラは、ミルフィに抱き締められつつも、フレアの問いに真剣に答えた。
「どうして気絶を?」
「その……すみません。分かりません。気づけば倒れてしまっていて……」
それを聞いてフレアは安堵する。
自死を試みたわけではない、と、確信できたからだ。
これまでもフレアは「コザクラがそんなことするわけがない」と信じていた。けれども、それを示す絶対的な根拠はなくて。だから、多少不安があった。だがその不安は、まさに今消え去った。
「自殺しようとしたわけではないのよね?」
「……自殺、ですか? 違います。そのようなことは……」
コザクラは激しく首を左右に振る。
「いいの! 分かってるのよ。確認しただけよ」
「そ、そうですか……」
コザクラとの会話を終えると、フレアはミルフィと共に保健室から出る。フレアの用が終わるのを待っていたリカルドと合流し、三人で食堂へと移動していく。
「やーっぱり自殺じゃなかったわね!」
フレアはご機嫌だ。
なぜなら、コザクラが自殺しようとしたのではないと確信できたから。
「フレアちゃんはそれが気になってたのねぇ」
「そうよ! コザクラがそんなことするはずないと思ってたけど、でも、真相は不明だったから」
ご機嫌なフレアを見て、ミルフィも嬉しそうだ。
リカルドは真顔のまま二人と共に歩いている。
「でも、どうしたのかしらねぇ。いきなり倒れるなんて」
ミルフィは右斜め上へ視線を向けつつ呟く。
「やっぱり変だわ……!」
「そうよねぇ。ほーんと、この学院は謎の出来事が絶えないわね」
「危険な香りがするわ」
「ほーんとそれよね。フレアちゃんも気をつけて」
「えぇ! 気は抜かないよう心掛けるわ!」
コザクラが死のうとしたわけではないと分かりホッとしたフレア。安堵し頬が緩んでいるフレアを見て幸せそうな顔しているミルフィ。そして、万が一に備えて同行しているだけの真顔のリカルド。
三人は、食堂へ行くべく、ただひたすら歩き続ける。
「本当に……。心配だわ」
フレアとミルフィは朝の会の開始時間ギリギリに花組の教室へ入る。生徒たちは既に揃っていて、しかも、きちんと席に着いていた。教室の一番前にはカッタルが立っている。
「おはよう。遅かったな」
担任のカッタルがフレアたちにそんな風に声をかけた。
「ごめんなさい! 事件に遭遇してしまって!」
それがフレアの返事。
「事件? 何かあったのか」
「他のクラスの友人が、図書館で気絶していたみたいで……」
「それは物騒だな」
「取り敢えず座りますね!」
周囲からの視線が痛かったので、フレアは素早く席に向かった。
ミルフィも同じように行動する。
それから一分も経たないうちに、朝の会が始まる。前に立っているカッタルが、今日の用事やこれからのことについて話す。生徒はただそれを聞くだけだ。
授業がすべて終わり、夕方。
今日しなくてはならないことを終え、生徒たちは解散。ある生徒はすぐに部屋へ帰る、ある生徒は食堂に向かう、と、思い思いの行動を取り始める。
「ねぇ、今日どうする? フレアちゃん」
「そうね……コザクラのところに行ってみたいわ」
フレアは今日一日中コザクラのことが気になっていた。自死を試みたわけではないだろうと信じていても、意識を失っていたのだから心配せずにはいられない。
「コザクラちゃん? なら保健室かしら」
「保健室、どこにあるか知ってる?」
「えぇ! そういえば、フレアちゃんは行ったことがないんだったわね。見て回った時も、前は通ったけれど、紹介はしなかったかもしれないわねぇ」
こうしてフレアは、ミルフィに案内してもらって保健室へ向こうことを決めた。
だが、話を近くで聞いていたリカルドは、同行を申し出る。また、「同行を拒否するなら行かせられない」と主張。そこで、フレアは仕方なく同行を認めた。リカルドの同行を断ることとコザクラに会うことを天秤にかけて、コザクラに会うことを優先したのだ。
「あくまで俺は付き添いだ。邪魔する気はない。だから悪く思わないでくれよ」
「えぇ、分かってるわ! 静かにしてくれれば問題ないわよっ」
保健室に到着する。扉の前でフレアはごくりと唾を飲み込んだ。初めて来る場所だったからだ。ちなみに、保健室の扉は木製の扉である。
「ノックしてから開けるのよ、フレアちゃん」
「え、ええ! そうね!」
ミルフィに言われた通り、フレアはまず扉をノックした。すると中から「はーい?」と女性の声が飛んでくる。そうなってからフレアはゆっくりと扉を開けた。遠慮がちに開けると、室内にいた女性が振り返り「いらっしゃーい。怪我でもした?」と尋ねる。
「あの……そうではないのです。すみません。コザクラさんの様子が気になって」
「コザクラちゃん? ああ、そういうことね! まだ寝てるわよ」
「入っても構いませんか?」
「いーいわよ? あ、でも、静かにしてちょうだいね?」
フレアは「はい」と答えて保健室に入っていく。初めての経験にドキドキしながら。
フレアとミルフィは、女性に案内されて歩く。やがて、女性が足を止めたので、フレアたちも立ち止まった。女性は小さめの柔らかい声で「アマミさーん。今少し入っても良いかしら?」と問う。すると、数秒後に、「あ、はい……」と返事が飛んできた。その返事を確認してから、女性はゆっくりとカーテンを開ける。ベッドに横たわるコザクラの姿が露わになった。
「あ……! フレアさん、ミルフィさん……!」
お見舞いに来た二人を視認したコザクラは、上半身を起こしつつ嬉しそうな顔をする。両の瞳に希望の光を宿した。
「コザクラ、体調はどう?」
「来て下さってありがとうございます、フレアさん。……もう元気です」
フレアは何事もなかったかのように言葉を交わしつつも、コザクラの首の痣を見逃さない。
「無事で良かったわぁ、コザクラちゃーん」
ミルフィは一切躊躇いなくコザクラに近づいてゆき、その体を強く抱き締めた。コザクラは最初戸惑ったような顔をしていたが、少しして慣れてくると、慎ましく微笑んでいた。
「ねぇ、コザクラ。図書館で一体何があったの?」
フレアは気になっているところについて掘っていく。
「……本を読んでいたのです、普段通り」
コザクラは、ミルフィに抱き締められつつも、フレアの問いに真剣に答えた。
「どうして気絶を?」
「その……すみません。分かりません。気づけば倒れてしまっていて……」
それを聞いてフレアは安堵する。
自死を試みたわけではない、と、確信できたからだ。
これまでもフレアは「コザクラがそんなことするわけがない」と信じていた。けれども、それを示す絶対的な根拠はなくて。だから、多少不安があった。だがその不安は、まさに今消え去った。
「自殺しようとしたわけではないのよね?」
「……自殺、ですか? 違います。そのようなことは……」
コザクラは激しく首を左右に振る。
「いいの! 分かってるのよ。確認しただけよ」
「そ、そうですか……」
コザクラとの会話を終えると、フレアはミルフィと共に保健室から出る。フレアの用が終わるのを待っていたリカルドと合流し、三人で食堂へと移動していく。
「やーっぱり自殺じゃなかったわね!」
フレアはご機嫌だ。
なぜなら、コザクラが自殺しようとしたのではないと確信できたから。
「フレアちゃんはそれが気になってたのねぇ」
「そうよ! コザクラがそんなことするはずないと思ってたけど、でも、真相は不明だったから」
ご機嫌なフレアを見て、ミルフィも嬉しそうだ。
リカルドは真顔のまま二人と共に歩いている。
「でも、どうしたのかしらねぇ。いきなり倒れるなんて」
ミルフィは右斜め上へ視線を向けつつ呟く。
「やっぱり変だわ……!」
「そうよねぇ。ほーんと、この学院は謎の出来事が絶えないわね」
「危険な香りがするわ」
「ほーんとそれよね。フレアちゃんも気をつけて」
「えぇ! 気は抜かないよう心掛けるわ!」
コザクラが死のうとしたわけではないと分かりホッとしたフレア。安堵し頬が緩んでいるフレアを見て幸せそうな顔しているミルフィ。そして、万が一に備えて同行しているだけの真顔のリカルド。
三人は、食堂へ行くべく、ただひたすら歩き続ける。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる