青春を謳歌したい! 〜剣と魔法の学校生活〜

四季

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34.聖夜祭が始まる!

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「楽しみね! 聖夜祭」

 ある日、授業がすべて終わったタイミングで、フレアはリカルドに話を振った。
 いきなり聖夜祭に関する話を振られたリカルドは戸惑いを露わにする。が、少しして「……正直どうでもいい」と言葉を返した。話を振られてから言葉を返すまでの時間は、そんなに長くはなかった。

「リカルドは楽しみじゃないの?」

 花組の教室内には、既に、生徒はほとんどいなくなっている。残っているのは、フレアとリカルド、そしてフレアを待つミルフィ。その三人だけだ。

「王女は楽しみなのか」
「もちろんよ! そういうイベントは結構好き!」

 ミルフィが待っているのは、フレアと共に寮へ帰るためだ。

「……そんなことだろうと思ったぜ」
「もう! 馬鹿にしてるの!?」
「してねぇよ、べつに。馬鹿に、とかじゃねぇ」
「ホントに?」

 フレアは首を動かしてリカルドの方をじっと見つめながら、目をぱちぱちさせる。

「あぁ。嘘はつかない」

 リカルドははっきりと述べた。
 その発言に迷いなんてものは少しもない。

「ふふっ。良かったぁ」

 刹那、フレアの体から一気に力が抜けた。また、それと同時に、顔面には安堵の色が浮かぶ。フレアは全身から、ホッとしているということを伝えているようだった。無論、無意識なのだろうが。

「まったく、分かりやすいな」
「もう! 何なの? その言い方っ」

 フレアとリカルドの会話はいつもこんな感じだ。だがそれは昔からのこと。それゆえ、両者共に、その関わり方に疑問を抱くことはない。仲良しなような、仲良しでないような、そんな関わり方が、二人にとっては一番良い関わり方なのだ。


 そして、聖夜祭の日がやって来る。

 その日は朝から、いつもとは少々違った空気が流れていた。ガーベラ学院の敷地内で動き回る者たちは、皆、どことなく浮かれていたのだ。

 フレアがミルフィやリカルドと共にホールへたどり着いた時、既に幾人もの生徒がその場所に集まっていた。女子生徒は女子生徒で、男子生徒は男子生徒で、群れを作っている。不機嫌そうな者はほとんどいない。多くの生徒が、これから始まる催しを心待ちにしているようだった。

「みーんな、浮かれてるわねぇ」

 ホールに入って数秒も経たぬうちに、ミルフィがそんな感想を述べた。
 フレアはそれに頷く。

「皆楽しみにしてるみたいね!」

 ミルフィが見ている世界とフレアが見ている世界は、ほとんど同じもの。フレアはミルフィの発言に共感することができた。

「ふふ、そうね。フレアちゃんはどうなの?」
「楽しみよっ」
「あら可愛い。素直で良いわね」
「ありがとう」

 フレアとミルフィが話している間、リカルドは、つまらないと叫びたそうな顔で周囲の様子を確認していた。じっくりと辺りを見回している。犯人であったカッタルはとうに去ったが、それでも、周囲への警戒を怠る気はないようだ。

 そんな時、一人の青年がフレアたちのところへ足を進めてきた。

「やぁ! フレア王女!」

 元気に挨拶した青年、その正体はアダルベルトだった。

「……アダルベルト。どうしたの? 何か用事?」

 フレアはクラスメイトのいきなりの登場に戸惑いつつも、無視はせず、きちんと言葉を返す。

「どうもしない! ただ見つけたから来ただけだよ!」
「そ、そう……」

 アダルベルトが妙にハキハキした物言いをするのは珍しいことではない。彼はいつもそんな感じ。だから、これも、驚くほどのことではない。

 とはいえ、いきなり力強い声をかけられたら、困惑せずにはいられないというもの。
 今のフレアも例外ではない。

「会いに来てくれたってこと?」
「あぁ! そんな感じだね」
「ありがとう。今日は楽しめると良いわね」


 ガーベラ学院に遠い昔から伝わる催しである、聖夜祭。
 多くの生徒たちが一年で一番ロマンチックな夜を過ごしてきた日だという。

「お、おい! 王女様だぞ! 行けよ!」
「む、むぅりぃ……!」

 柱の陰からフレアをやたら見つめてくる男子生徒が二人。顔を赤く染めながら、興奮したように、互いに何やら言い合っている。勢いは感じられるが度胸はない、というような二人だ。

 フレアは対応に困ってしまう。

 振り返るべきか否か、はっきりしないからだ。

 直接声をかけられたなら、普通に言葉を返すことができる。そうすれば、自然とコミュニケーションが始まるというものだ。しかし二人の男子生徒は声をかけてはこない。そのため、自分に話しかけようとしているのだと判断できるようなことを言っているのが聞こえていても、話に入っていきづらい。そこが困るところだ。

「早く行けって! 順番取られるぞ!」
「う、うぅー……む、むぅりぃ……」
「何言ってんだ!」
「メンタル勝負で……負けるぅ……!」

 コミカルなやり取りが聞こえてくるが、フレアは仕方なく気づかないふりをしておく。
 本当は話しかけてみたいのだけれど。

「フレア王女! 今は暇なのかい?」

 またしてもアダルベルトが近づいてきた。
 嫌というわけではない。が、フレアは今男子生徒二人組のことが気になっているので、正直アダルベルトのことはどうでもいい。

「えぇ、暇よ。どうしたの?」
「あちらに物凄く美味しいスイーツがあったのだよ!」

 スイーツて。
 そんな風に思って、フレアは笑う。

「何それ。女児に話しかける不審者みたいね」
「んな!? 何だね、その言い方は!?」
「ごめんなさい。失礼よね。冗談だから気にしないで」
「あ、あぁ……」

 その後、フレアはアダルベルトからスイーツについて聞いた。何でも、魅力的なスイーツが大量に出てきているとの話で。少しばかり興味が湧いたフレアは、アダルベルトについていくことにした。フレアは極端にスイーツ好きというわけではないが、甘い物は嫌いではない。

「ところで。スイーツって、何があったの?」

 フレアはアダルベルトと体を並べて歩く。フレアに話しかけたかった男子生徒たちは、機会を逃したことを悔しがって密かに歯ぎしりしていた。

「ケーキや焼き菓子だよ! 食堂の女性たちが作ってくれたものだそうだ」
「へぇー。それは良いわね。美味しそう」
「女子生徒たちが集まって騒いでいたのでね、美味しいはずだよ」
「ふぅん。でも、私が行ったら迷惑にならないかしら」

 フレアの発言に、アダルベルトは驚いた顔をする。

「な!? ……なぜそのようなことを?」
「深い意味はないわ。ただ、王女がいきなり入っていったら迷惑じゃないかって思って」
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