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27.結果は良し
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「美味しかったです。少し……残念な気もしましたけど」
ドラセナが作って贈ってくれた、ひよこの形の小さなケーキ。それは、とても美味しいものだった。甘みはあるが甘過ぎず、優しい味わいで食べやすい。
「残念、ですか?」
「だって、あんなに可愛いひよこだったのに……」
誤解のないように、残念と言った理由をきちんと伝えておく。
するとドラセナは笑う。
「あぁ、なるほど。そういうことでしたか。セリナは意外と可愛いですね」
凛々しさのある顔立ちのドラセナが微笑みかけてくれると、不思議な気分になる。まるで恋しているかのような。独特の感情が湧いてくる。
「でも、美味しかったです。甘くて、でも甘過ぎることはなくて、食べやすいです」
私がひよこのケーキに関する感想を述べている時、シュヴェーアが唐突に首を伸ばしてきた。
「……パンの、話か?」
首を伸ばしてきたと思ったら、とんちんかんな質問。話にならない。普段なら相手したかもしれないが、今は付き合う気にはなれなった。そもそも、私はドラセナと話していたのだ。友との会話を急に遮られるのは困る。
「今入ってこないで、シュヴェーアさん。後で説明するから」
「……なぜに?」
「料理を取ってきて食べておいたらどう?」
気を散らすべく、提案。
するとシュヴェーアはすんなり頷いた。
「……あぁ。そうだな……」
シュヴェーアは素直だ。
こちらが提案するや否や、立ち上がり、料理が置かれている方へと歩き出した。
「ごめんなさい、ドラセナ。話の途中で」
私はドラセナの方へ視線を戻す。
そして、話の続きを始める。
「構いませんよ。それにしても、セリナと彼は仲良しなのですね」
「そう見えますか?」
「はい! あ、でも、悪い意味ではありませんよ。通じ合っているという感じがするのです!」
通じ合っている、か。
そういうことはこれまであまり考えてみなかった。が、第三者からそう見えているのなら、もしかしたらそうなのかもしれない。
そのうちに、シュヴェーアはまた料理を取ってきた。
彼が持っている皿の上に乗っていたのは、焼いた肉のタレ和えとステーキサンド。
……とにかく肉だ。
彼はパンがかなり好きなようだが、肉類もそれに次ぐ勢いで好きらしい。というのも、先ほどから肉料理ばかりを貰ってきて食べているのだ。
肉ばかり食べていて顎が痛くならないのだろうか、という疑問はあるけれど。
でも、シュヴェーアにとってそれが幸せなのなら、それでいい。肉ばかりでもいい。
「シュヴェーアさん、また肉料理を?」
食べ物をさらに入手できて嬉しそうなシュヴェーアに話しかけたのは、ダリア。
彼女は既に食べることを終えている。
「……美味!」
シュヴェーアはステーキサンドを手に取り、くわえながらそう返した。
「気に入ったんですねー」
「……その、通り」
「そのステーキサンド、私が手伝ったものなんですよー」
「なっ……!?」
ダリアの発言に、シュヴェーアは愕然とする。
「こ、こんな……美味な……ものを……!?」
シュヴェーアはステーキサンドの肉を噛みちぎり、目を皿のようにして発していた。
「そうですー。ね? ドラセナちゃん」
「あっ。はい! 手伝っていただいたこと、感謝しています!」
やり取りを聞き、ダリアが具体的にどのような手伝いをしていたのか初めて知った。
ダリアが料理作りの手伝いをしていたこと、それは知っている。だが、手伝いの具体的な内容は、今の今まで知らなかった。
「ダリアさん、挟むのが凄く上手で。助かりました」
「ふふ。褒めすぎよー」
受けた衝撃が消えきらないのか、シュヴェーアはまだ固まっている。
ダリアがステーキサンド作りに協力していた。たったそれだけのことが、動けなくなるほど驚きなのだろうか。驚き過ぎではないだろうか。
ダリア、シュヴェーア、そしてドラセナ。信頼できる皆と共に過ごす時間は、とても楽しく有意義なものだった。言葉を交わしたり、風景を眺めたり、料理を口にしたり。些細なこと一つ一つが、私に喜びを与えてくれた。
親しい人となら、何でも楽しい。人間と人間の関わり合いだから、時には問題が発生することもあるだろう。けれど、何をしていてもそれなりに楽しめる、ということは事実だ。
そういえば。
料理を手伝っていたダリアは、ドラセナの母親ともいつの間にか知り合いになっていた。
ドラセナの母親は、ドラセナによく似ていた。いや、もちろん年齢は全然違っているのだが。ただ、醸し出している雰囲気がドラセナに非常に似ていたのだ。それに、顔立ちも。ドラセナの「凛々しい美人」といった雰囲気の顔立ちは、どうやら、母親譲りだったようだ。
私は、ドラセナから母についての悪口を聞いていたので、「厳し過ぎる人なのだろうな」と想像していた。が、実際には、思っていたほど怖そうな人ではなくて。確かに、整った顔立ちゆえどこか冷ややかに見えはするが、心の汚い悪人ではないようだった。
そんなドラセナの母親が相手でも、ダリアは普通に話す。持ち前の明るさで躊躇いなく関わっていく。ダリアのそういうところに影響を受けてなのか、ドラセナの母親もそこそこ声を発していた。
ダリアと迷いなく言葉を交わす母の姿に、ドラセナは衝撃を隠せず。
その様子から「珍しいことなのだな」と私は察する。
母親同士も仲良くなれたようで良かった。昨日までは「ドラセナの母親が私やダリアのことを見下してきたらどうしよう……」なんて少し考えてしまって、不安で。だからこそ、この結果に私は安堵したのだった。
春祭りは無事終了。
騒ぎも起きず、喧嘩も起こらず、穏やかな幕閉じ。見事だ。
良い思い出がまた一つ増えた気がする。
ドラセナが作って贈ってくれた、ひよこの形の小さなケーキ。それは、とても美味しいものだった。甘みはあるが甘過ぎず、優しい味わいで食べやすい。
「残念、ですか?」
「だって、あんなに可愛いひよこだったのに……」
誤解のないように、残念と言った理由をきちんと伝えておく。
するとドラセナは笑う。
「あぁ、なるほど。そういうことでしたか。セリナは意外と可愛いですね」
凛々しさのある顔立ちのドラセナが微笑みかけてくれると、不思議な気分になる。まるで恋しているかのような。独特の感情が湧いてくる。
「でも、美味しかったです。甘くて、でも甘過ぎることはなくて、食べやすいです」
私がひよこのケーキに関する感想を述べている時、シュヴェーアが唐突に首を伸ばしてきた。
「……パンの、話か?」
首を伸ばしてきたと思ったら、とんちんかんな質問。話にならない。普段なら相手したかもしれないが、今は付き合う気にはなれなった。そもそも、私はドラセナと話していたのだ。友との会話を急に遮られるのは困る。
「今入ってこないで、シュヴェーアさん。後で説明するから」
「……なぜに?」
「料理を取ってきて食べておいたらどう?」
気を散らすべく、提案。
するとシュヴェーアはすんなり頷いた。
「……あぁ。そうだな……」
シュヴェーアは素直だ。
こちらが提案するや否や、立ち上がり、料理が置かれている方へと歩き出した。
「ごめんなさい、ドラセナ。話の途中で」
私はドラセナの方へ視線を戻す。
そして、話の続きを始める。
「構いませんよ。それにしても、セリナと彼は仲良しなのですね」
「そう見えますか?」
「はい! あ、でも、悪い意味ではありませんよ。通じ合っているという感じがするのです!」
通じ合っている、か。
そういうことはこれまであまり考えてみなかった。が、第三者からそう見えているのなら、もしかしたらそうなのかもしれない。
そのうちに、シュヴェーアはまた料理を取ってきた。
彼が持っている皿の上に乗っていたのは、焼いた肉のタレ和えとステーキサンド。
……とにかく肉だ。
彼はパンがかなり好きなようだが、肉類もそれに次ぐ勢いで好きらしい。というのも、先ほどから肉料理ばかりを貰ってきて食べているのだ。
肉ばかり食べていて顎が痛くならないのだろうか、という疑問はあるけれど。
でも、シュヴェーアにとってそれが幸せなのなら、それでいい。肉ばかりでもいい。
「シュヴェーアさん、また肉料理を?」
食べ物をさらに入手できて嬉しそうなシュヴェーアに話しかけたのは、ダリア。
彼女は既に食べることを終えている。
「……美味!」
シュヴェーアはステーキサンドを手に取り、くわえながらそう返した。
「気に入ったんですねー」
「……その、通り」
「そのステーキサンド、私が手伝ったものなんですよー」
「なっ……!?」
ダリアの発言に、シュヴェーアは愕然とする。
「こ、こんな……美味な……ものを……!?」
シュヴェーアはステーキサンドの肉を噛みちぎり、目を皿のようにして発していた。
「そうですー。ね? ドラセナちゃん」
「あっ。はい! 手伝っていただいたこと、感謝しています!」
やり取りを聞き、ダリアが具体的にどのような手伝いをしていたのか初めて知った。
ダリアが料理作りの手伝いをしていたこと、それは知っている。だが、手伝いの具体的な内容は、今の今まで知らなかった。
「ダリアさん、挟むのが凄く上手で。助かりました」
「ふふ。褒めすぎよー」
受けた衝撃が消えきらないのか、シュヴェーアはまだ固まっている。
ダリアがステーキサンド作りに協力していた。たったそれだけのことが、動けなくなるほど驚きなのだろうか。驚き過ぎではないだろうか。
ダリア、シュヴェーア、そしてドラセナ。信頼できる皆と共に過ごす時間は、とても楽しく有意義なものだった。言葉を交わしたり、風景を眺めたり、料理を口にしたり。些細なこと一つ一つが、私に喜びを与えてくれた。
親しい人となら、何でも楽しい。人間と人間の関わり合いだから、時には問題が発生することもあるだろう。けれど、何をしていてもそれなりに楽しめる、ということは事実だ。
そういえば。
料理を手伝っていたダリアは、ドラセナの母親ともいつの間にか知り合いになっていた。
ドラセナの母親は、ドラセナによく似ていた。いや、もちろん年齢は全然違っているのだが。ただ、醸し出している雰囲気がドラセナに非常に似ていたのだ。それに、顔立ちも。ドラセナの「凛々しい美人」といった雰囲気の顔立ちは、どうやら、母親譲りだったようだ。
私は、ドラセナから母についての悪口を聞いていたので、「厳し過ぎる人なのだろうな」と想像していた。が、実際には、思っていたほど怖そうな人ではなくて。確かに、整った顔立ちゆえどこか冷ややかに見えはするが、心の汚い悪人ではないようだった。
そんなドラセナの母親が相手でも、ダリアは普通に話す。持ち前の明るさで躊躇いなく関わっていく。ダリアのそういうところに影響を受けてなのか、ドラセナの母親もそこそこ声を発していた。
ダリアと迷いなく言葉を交わす母の姿に、ドラセナは衝撃を隠せず。
その様子から「珍しいことなのだな」と私は察する。
母親同士も仲良くなれたようで良かった。昨日までは「ドラセナの母親が私やダリアのことを見下してきたらどうしよう……」なんて少し考えてしまって、不安で。だからこそ、この結果に私は安堵したのだった。
春祭りは無事終了。
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