嘘つきで迷惑な妹は領主の子息と婚約して浮かれ調子に乗っていましたが……どうやら婚約破棄されたようです。

１話

　私には嘘つきで自己中心的を絵に描いたような妹がいる。
　その名はアンレ。
　彼女は可憐な容姿の持ち主で見た感じとても可愛らしい女性なのだけれど、性格に少々難があり、特に姉である私をすぐに悪者に仕立て上げてくるあたりには悪質さも濃く滲んでいる。

　彼女にはこれまで何度も迷惑をかけられてきた。

　ある時は玩具を奪ったと言われ、また別のある時には酷い言葉をかけたなどと嘘をつかれ、さらには仲良かった異性を奪われたことだってある――私の人生において彼女の存在は明らかに害悪であった。

　そんなアンレは十九歳になってすぐ一人の青年と婚約する。

　彼は領主の子息。
　名はエッド。
　歴史は浅い家の子であったが金はそこそこ持っていた。

　そんなこともあって、アンレは非常に誇らしそうにしていた。

「お姉さまには領主の家の方との結婚なんて無理でしょうね！　だぁ～って、ダサいんだもの！　お姉さまみたいな女は結婚できたとしても労働者くらいのもの、きっとそうだわ！　そうに違いないわっ」

　いちいち余計なことまで言ってくるので少々鬱陶しかったけれど、でもこれで彼女が家から出ていくのだと思ったら嬉しくて、だからこそ失礼なことを言われても流せていた。

　ようやく解放される、不愉快過ぎるアンレから。

　それは確かに私の心の支えとなっていた。