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3話
しおりを挟む「何か根拠があるの?」
「あたしがそうだって言ったらそうなの! これまでだってずっとそうだったでしょう? お姉さまはいつもあたしが幸せを掴めないように邪魔してきていたでしょう? 玩具だって好きな人だって奪って、酷い言葉をかけて……だから今回もきっとお姉さまのせいよ! 違いないわ!」
「そう、だとしても……」
「お母さま! どうにかして! エッドを取り戻して!」
「それは難しいわ、だって……もうはっきりと言われてしまったのでしょう。破棄後にやり直すというのはさすがに……」
すると泣き出すアンレ。
「お母さままでお姉さまに協力するのね!? 許せない!! 最低だわお母さま酷すぎる悪魔!!」
その後しばらくあれこれ揉めていたようだが、結局エッドの心は変わらず、そのまま婚約破棄となったようだった。
しかも後に判明したのだが。
エッドが浮気していた、という話は嘘だったようだ。
彼もまた偽りの情報をアンレに流されていたのだ――それを知って、改めて気の毒にと思った。
その一件以降、アンレは壊れていった。
「ひどいひどいみんなしてあたしのじゃまをするの、あたしがしあわせになれないようにおねえさまもおかあさまも……さいていだわひどすぎる、みんなあくまよあたしがふこうになるようにおとしいれてばかり……どうしてあたしだけしあわせにならせてもらえないのよいいじゃないしあわせになったって、かわいいだから……ああきっとしっとしてるんだわ、あたしがとてもかわいいから、きっとそうよ……かわいさはつみね、あたしかわいいからみんなにいつもじゃまされるんだもの……」
一日中ぶつぶつと喋っているようになり、やがて段々食事をとらなくなっていって、その果てに栄養失調のような状態となって死亡した。
こうしてアンレはこの世から消えたのだった。
◆
あれから数年、私は大規模な服屋の息子と結婚し幸せに暮らしている。
今はもうアンレに絡まれることもない。
だって彼女はこの世にいないから。
それゆえ何の不安もなく愛しい人愛しき夫と共に楽しく穏やかに暮らすことができている。
もうアンレの影に怯えることはない。
私は純粋な幸せを掴むの。
◆終わり◆
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