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『まさかの展開で命を落としてしまいましたが、彼らには罰が下ったようですし、過去のことはもう忘れて新しい人生を歩みます!』
「なぁ、明日さ。ちょっと用事あるんだけどさ。丘の上で会えねえかなぁ」
銀色の髪が目立つ婚約者ロージャンがある日突然そんなことを言ってきて。
「え? お、丘の上? また、どうして」
「いや、深い意味はないんだ」
「何よそれ。深い意味はない、なんて、自分から言うとちょっと変よ?」
「変じゃない!」
「ええっ」
「と、とにかく! いいから! 明日の朝、丘の上に来いって言ってんだよ!」
なぜか怒り出すロージャン。
「構わないけれど……怒るのはやめてちょうだい」
取り敢えずそう返してみると。
「来るんだな? そういうことならそれでいい!」
ロージャンは納得したようだった。
何だか嫌な予感がする……。
急に怒る彼の姿を見ていたらなおさら……。
ただ、ここで「やっぱり行けない」なんて言ったら彼は再び怒り出すだろう。となるとそういう選択はできない。なのでひとまずは「分かったわ、丘の上で待ち合わせね」と言っておいた、そうすれば怒られずに済むと読んでいたから。
翌朝、約束の通り家からそう遠くない丘の上へ行くと、ロージャンは一人の女性を連れて立っていた。
「来たな」
「ええ。……そちらの女性は?」
「今から話す」
女性は二本の腕をロージャンの左腕に絡めている。
「彼女の名はリリー。俺は彼女を愛している。よって、お前との婚約は破棄とすることとした」
私が思わず「え」とこぼすと、ロージャンの隣にいる女性はくすっと黒い笑みを唇に滲ませていた。
「ロージャン……いきなり何を言い出すの?」
「婚約破棄」
「そうじゃなくて」
「なら何だよ」
「いきなり婚約破棄だなんておかしいわ、滅茶苦茶じゃないの」
するとリリーが動いた。
「あんたは愛されてないのよ!」
彼女はこちらへ近づいてきて。
「ごちゃごちゃ言わずロージャンから離れて!」
「そんな言い方……」
「あんたが引けばいいの! それだけのことなのに、どうしてそれが分かんないの? 馬鹿じゃないの!」
両手を使って突き飛ばしてきた。
「――ぁ」
バランスを崩した私の身体は後方へ倒れていく。
その先に地面はない。
というのもそこは崖のようになっているのである。
「ふん、邪魔するから死ぬことになるのよ」
……こうして私は突然命を落としてしまったのだった。
◆
私はあのまま亡くなった。
しかしロージャンとリリーも幸せにはなれなかったようだ。
というのも私の死後二人には幾つもの災難が降りかかったのである。
第一の事件は、リリーが可愛がっていた小鳥数羽がある朝突然命を落としていたというもの。
第二の事件は、ロージャンの妹が賊に連れ去られ後日生きた状態で発見されるも精神を破壊されていて幼児退行してしまっていたというもの。
第三の事件は、リリーの元恋人である男性がロージャンに憎しみを募らせやがてロージャンに刃物を持って襲いかかったというもの。
……などなど、災難は数えきれないほどに起こったようで。
結果二人は破局した。
破局から数日が経った夕暮れ時、何やらよく分からないことをぶつぶつ言いながら山の方へ出掛けたロージャンだったが、翌朝彼は山道にて亡骸となって発見された。
その数日後、今度はリリーが落命。彼女は実家の近くの路上にて何者かに襲われたようで、金品を奪われた状態で意識不明となっていたらしく。通行人の通報により一旦は病院に搬送されるも、そのまま死亡の確認が行われた。
――結局彼らは幸せになれないまま人の世を去ることとなったのだった。
◆
生まれ変わった私はとある国の女王の子だった。
両親に、親族に、そして侍女や多くの使用人たちに、大事にされ愛されて――穏やかな幸福の海に浸かりながら育つことができた。
そして年頃になると高貴な男性と婚約。
そのまま順調に結婚にまで至ることができて。
結果、今はとても幸せに暮らしている。
◆終わり◆
『性格が悪い婚約者は浮気していたようですが、それによって自滅することとなったようです。~人生とは分からないものですね~』
私の婚約者である彼エリードは性格が悪い。
そして私のことを良く思っていない。
それゆえことあるごとに嫌な思いをさせようとしてくる。
街中で出くわせば「あ、馬鹿女がいる~」なんて言ってくるし。視線が合えば「うわ無理」とか「きっしょ」とか呟きながら睨んでくる。挨拶しただけで唾を吐かれたこともあった。
……しかし悪行を重ね続けてきた彼に幸せな未来はなかった。
「んもぉ、エリードぉ、本当にいいのぉ?」
「いいんだよあんな女」
「婚約、してるんでしょお」
「まぁな」
「じゃあバレたら困るんじゃないのぉ?」
「いやべつに。バレたらバレたでホントのこと言うだけだし。お前汚くて無理、とでも言ってやればいいだけ」
その日私は彼が浮気しているところを目撃したのだけれど。
「エリードったらぁ、辛口ぃ」
「だろ?」
「でもぉ……そういうところが好きなのかもぉ、うふ、うふふふ」
何か少しでも言ってやろうと思った瞬間、突如、二人のところへ暴走した馬車が突っ込んできて。
「きゃあっ」
「なに!?」
「うわ、何あれ、事故!?」
「ひいいいいい」
「いやあっ」
通行人らがざわめく。
「お、おい! ミレニー! 大丈夫か? ミレニー!」
「ぅ……」
「しっかり、しっかり、しろ……しっかり、してくれ、してくれよミレニー……頼む! 死ぬな! 死ぬんじゃない!」
「ぁ……た、し……もう……」
馬車に突っ込まれたエリードと浮気相手らしく女性は共に負傷していた。
だが女性の方が重傷で。
今にも落命してしまいそうな状態に見える。
「ミレニー! ミレニー、頼む! こんな、ところで……こんな、死に方をしたら……浮気していたことが大勢にバレるじゃないかッ!!」
……いや、心配している理由それ?
突っ込みを入れたくなったけれど。
さすがに直接は入れられず。
取り敢えず心の中でだけ突っ込んでおくことにした。
「困る! そんなことになったら! だからミレニー、名誉のために、死ぬな! 絶対に死ぬな! 生きろミレニー!」
だが彼女は間もなく意識を失い、そのまま落命した。
そしてエリードも。
搬送後容体が急変したらしく。
病院にて死亡してしまった。
私を傷つけ裏切っていたエリード。
その浮気相手だったミレニーという名前と思われる女性。
二人は実にあっさりとこの世を去った。
それによって私は意地悪な彼から解放されて――その後街中で知り合いになった資産家の男性と結ばれた。
人生とは分からないものだ。
かつて婚約者からあんなにも虐められていた私は、純粋に愛してくれる人と共に生きることができている。
今はとても幸せ。
世界中に「私、幸せなの!」と叫べるくらい。
過去のことなんてどうでもいいと迷いなく思えるほどに。
だからエリードたちとのことなんでもう気にしない。
私は未来を見つめて歩む。
希望溢れる明日を信じて生きていく。
◆終わり◆
『「君との婚約だけど、破棄することとしたんだ」いきなりそんなことを言われると、戸惑ってしまいますよね。』
「君との婚約だけど、破棄することとしたんだ」
婚約者ルブブールは突然そんなことを告げてきた。
なんてことのない平凡な夏の日のことだ。
意外な展開はいつもいきなりやって来る。
災難は忘れた頃にやって来る。
……よくそう言うけれど。
その説はある意味正しくて、それらしい心当たりもなく婚約破棄されるという意外な展開は私の前に突如出現した。
「僕はさ、もっと上を目指したい」
「上を……?」
「ああ、そう、そうなんだよ。だから僕は君とは生きないことにしたんだ」
私たちは視線を重ねる。
けれどもそこに未来への希望はない。
「本気で仰っているのですか」
「もちろん」
「すべてが壊れても良いということですか?」
「ああ」
「……本気なのですね?」
「もちろんだよ。何を失っても、僕はもっともっと上を目指す。僕は男として頂へ行きたいんだ、そのためには君が邪魔なんだ」
邪魔? 私が? ……どうしてそんなことを言われなくてはならないのか。なぜ? 私が悪いの? その発言に根拠があるならぜひそれを言葉にしてほしい。それなしでまるで私のせいであるかのように言われても正直納得できない。それって本当に私のせい? 自分の弱さを他人に押し付けているだけではないの? ……そう言いたくなってしまう。
「だからここで終わりにしよう」
「そうですか……残念です」
「馬鹿だな、それはこっちのセリフだって」
こうして私たちの関係は終わりを迎えた。
◆
数日後、ルブブールはなぜか増水した川に飛び込み、その結果流されてしまって命を落とした。
上を目指す、そんなことを偉そうに言っていた彼だけれど。
結局彼には未来などなかった。
頂を目指す、なんていう次元の話ではなく、大抵誰にでもある平凡な未来すら彼にはなかったのである。
なぜ増水した川に飛び込んだのかは謎のままだけれど。
ただ、それが彼の選んだ道なら、それが彼の人生だったのだろう。
人生を決めるのは常に本人。だからどんな選択もその人自身の責任。もちろん強制されたとかなら話は別だけれど。そういった一部の事例を除けば、どう生きてどう死にゆくかは自身の選択の先にある結果としか言えない。
◆
「いらっしゃいませ!」
ルブブールに婚約破棄された後、私は、友人の紹介で宝石店に勤めた。
「今日も素敵な店内ねぇ」
「ありがとうございます。実は昨日色々変えてみたんです。ちょっとでも季節感を出してみたいなぁ、と思って」
「あら、そうだったのねぇ。とっても素敵よぉ。魅了されたわぁ」
そして今では独立し、自分の店を持っている。
「褒めていただけて嬉しいです!」
「その商品も可愛いわねぇ」
「こちら新商品です」
「まぁ! 新しいものだったのねぇ。ぱあっと輝いて見えるわぁ」
「とても嬉しい言葉です!」
仕事は忙しいけれど、毎日は充実している。
なので私はこれからもこの道を進んでいくつもりだ。
◆終わり◆
『じきに雪が降り出しそうな極めて寒いある日のこと。~意味不明なことをそうやって何度も言われても困ってしまうだけです~』
じきに雪が降り出しそうな極めて寒いある日のこと、婚約者ダーダムから呼び出され、珍しいことだなと思いつつ彼のところへ向かうと。
「君は宇宙人なんだってな」
そんな意味不明なことを言われて。
「え……あの、ごめんなさい、意味が……」
「宇宙人なのだろう?」
「違いますけど」
「嘘をつくな! 僕はもう知っている、君が悪しき者、宇宙人であることを!」
しかも意味不明な主張を押し付けられて。
「よって、婚約は破棄とする!」
しまいには関係を叩き壊す言葉を発されてしまった。
えええー……、と思ったけれど。
「まさか君がそんな悪しき者だとは思わなかった。もう少しまともで魅力的な人間だろうと思っていたのだが……それは僕の勘違いだったようだ。こうして君がこの世に災厄を招く宇宙人であると判明した以上、君と共に生きていくことはできない。なのですべてをおしまいとすることにした」
私たちの関係は流れのままに終わりを迎えることとなってしまったのだった。
◆
数日後、ダーダムは、家で過ごしていたところ突如出現した複数の宇宙人に連れ去られた。
一時行方不明となり。
それから数日が経って、亡骸となって発見されたそうだ。
この目で見たわけではないので詳しいことは知らないけれど。ただ、彼の親がそう話しているらしいので、真っ赤な嘘ということはさすがにないものと思われる。一応きちんとした情報源のある情報である。誰かがふざけて流したいい加減な噂というわけではない。
彼は私を宇宙人だと言った。けれどもそれは間違いだった。彼が敵視するべきは私ではなかった。彼はそこを間違えたから、結果的に、こんなことになってしまったのだろう。宇宙人を恐れること、それ自体は間違いではなくても、宇宙人でない人を宇宙人だと思い込むべきではなかったのだ。
◆
ダーダムがいなくなってから数年。
あの後実家でのんびり暮らしていた私は、ダーダムではない別の男性と結婚し、幸せになった。
夫となってくれた彼は思いやりのある人だ。
だから一緒にいてとても楽しいし純粋に幸せなのだ。
◆終わり◆
「なぁ、明日さ。ちょっと用事あるんだけどさ。丘の上で会えねえかなぁ」
銀色の髪が目立つ婚約者ロージャンがある日突然そんなことを言ってきて。
「え? お、丘の上? また、どうして」
「いや、深い意味はないんだ」
「何よそれ。深い意味はない、なんて、自分から言うとちょっと変よ?」
「変じゃない!」
「ええっ」
「と、とにかく! いいから! 明日の朝、丘の上に来いって言ってんだよ!」
なぜか怒り出すロージャン。
「構わないけれど……怒るのはやめてちょうだい」
取り敢えずそう返してみると。
「来るんだな? そういうことならそれでいい!」
ロージャンは納得したようだった。
何だか嫌な予感がする……。
急に怒る彼の姿を見ていたらなおさら……。
ただ、ここで「やっぱり行けない」なんて言ったら彼は再び怒り出すだろう。となるとそういう選択はできない。なのでひとまずは「分かったわ、丘の上で待ち合わせね」と言っておいた、そうすれば怒られずに済むと読んでいたから。
翌朝、約束の通り家からそう遠くない丘の上へ行くと、ロージャンは一人の女性を連れて立っていた。
「来たな」
「ええ。……そちらの女性は?」
「今から話す」
女性は二本の腕をロージャンの左腕に絡めている。
「彼女の名はリリー。俺は彼女を愛している。よって、お前との婚約は破棄とすることとした」
私が思わず「え」とこぼすと、ロージャンの隣にいる女性はくすっと黒い笑みを唇に滲ませていた。
「ロージャン……いきなり何を言い出すの?」
「婚約破棄」
「そうじゃなくて」
「なら何だよ」
「いきなり婚約破棄だなんておかしいわ、滅茶苦茶じゃないの」
するとリリーが動いた。
「あんたは愛されてないのよ!」
彼女はこちらへ近づいてきて。
「ごちゃごちゃ言わずロージャンから離れて!」
「そんな言い方……」
「あんたが引けばいいの! それだけのことなのに、どうしてそれが分かんないの? 馬鹿じゃないの!」
両手を使って突き飛ばしてきた。
「――ぁ」
バランスを崩した私の身体は後方へ倒れていく。
その先に地面はない。
というのもそこは崖のようになっているのである。
「ふん、邪魔するから死ぬことになるのよ」
……こうして私は突然命を落としてしまったのだった。
◆
私はあのまま亡くなった。
しかしロージャンとリリーも幸せにはなれなかったようだ。
というのも私の死後二人には幾つもの災難が降りかかったのである。
第一の事件は、リリーが可愛がっていた小鳥数羽がある朝突然命を落としていたというもの。
第二の事件は、ロージャンの妹が賊に連れ去られ後日生きた状態で発見されるも精神を破壊されていて幼児退行してしまっていたというもの。
第三の事件は、リリーの元恋人である男性がロージャンに憎しみを募らせやがてロージャンに刃物を持って襲いかかったというもの。
……などなど、災難は数えきれないほどに起こったようで。
結果二人は破局した。
破局から数日が経った夕暮れ時、何やらよく分からないことをぶつぶつ言いながら山の方へ出掛けたロージャンだったが、翌朝彼は山道にて亡骸となって発見された。
その数日後、今度はリリーが落命。彼女は実家の近くの路上にて何者かに襲われたようで、金品を奪われた状態で意識不明となっていたらしく。通行人の通報により一旦は病院に搬送されるも、そのまま死亡の確認が行われた。
――結局彼らは幸せになれないまま人の世を去ることとなったのだった。
◆
生まれ変わった私はとある国の女王の子だった。
両親に、親族に、そして侍女や多くの使用人たちに、大事にされ愛されて――穏やかな幸福の海に浸かりながら育つことができた。
そして年頃になると高貴な男性と婚約。
そのまま順調に結婚にまで至ることができて。
結果、今はとても幸せに暮らしている。
◆終わり◆
『性格が悪い婚約者は浮気していたようですが、それによって自滅することとなったようです。~人生とは分からないものですね~』
私の婚約者である彼エリードは性格が悪い。
そして私のことを良く思っていない。
それゆえことあるごとに嫌な思いをさせようとしてくる。
街中で出くわせば「あ、馬鹿女がいる~」なんて言ってくるし。視線が合えば「うわ無理」とか「きっしょ」とか呟きながら睨んでくる。挨拶しただけで唾を吐かれたこともあった。
……しかし悪行を重ね続けてきた彼に幸せな未来はなかった。
「んもぉ、エリードぉ、本当にいいのぉ?」
「いいんだよあんな女」
「婚約、してるんでしょお」
「まぁな」
「じゃあバレたら困るんじゃないのぉ?」
「いやべつに。バレたらバレたでホントのこと言うだけだし。お前汚くて無理、とでも言ってやればいいだけ」
その日私は彼が浮気しているところを目撃したのだけれど。
「エリードったらぁ、辛口ぃ」
「だろ?」
「でもぉ……そういうところが好きなのかもぉ、うふ、うふふふ」
何か少しでも言ってやろうと思った瞬間、突如、二人のところへ暴走した馬車が突っ込んできて。
「きゃあっ」
「なに!?」
「うわ、何あれ、事故!?」
「ひいいいいい」
「いやあっ」
通行人らがざわめく。
「お、おい! ミレニー! 大丈夫か? ミレニー!」
「ぅ……」
「しっかり、しっかり、しろ……しっかり、してくれ、してくれよミレニー……頼む! 死ぬな! 死ぬんじゃない!」
「ぁ……た、し……もう……」
馬車に突っ込まれたエリードと浮気相手らしく女性は共に負傷していた。
だが女性の方が重傷で。
今にも落命してしまいそうな状態に見える。
「ミレニー! ミレニー、頼む! こんな、ところで……こんな、死に方をしたら……浮気していたことが大勢にバレるじゃないかッ!!」
……いや、心配している理由それ?
突っ込みを入れたくなったけれど。
さすがに直接は入れられず。
取り敢えず心の中でだけ突っ込んでおくことにした。
「困る! そんなことになったら! だからミレニー、名誉のために、死ぬな! 絶対に死ぬな! 生きろミレニー!」
だが彼女は間もなく意識を失い、そのまま落命した。
そしてエリードも。
搬送後容体が急変したらしく。
病院にて死亡してしまった。
私を傷つけ裏切っていたエリード。
その浮気相手だったミレニーという名前と思われる女性。
二人は実にあっさりとこの世を去った。
それによって私は意地悪な彼から解放されて――その後街中で知り合いになった資産家の男性と結ばれた。
人生とは分からないものだ。
かつて婚約者からあんなにも虐められていた私は、純粋に愛してくれる人と共に生きることができている。
今はとても幸せ。
世界中に「私、幸せなの!」と叫べるくらい。
過去のことなんてどうでもいいと迷いなく思えるほどに。
だからエリードたちとのことなんでもう気にしない。
私は未来を見つめて歩む。
希望溢れる明日を信じて生きていく。
◆終わり◆
『「君との婚約だけど、破棄することとしたんだ」いきなりそんなことを言われると、戸惑ってしまいますよね。』
「君との婚約だけど、破棄することとしたんだ」
婚約者ルブブールは突然そんなことを告げてきた。
なんてことのない平凡な夏の日のことだ。
意外な展開はいつもいきなりやって来る。
災難は忘れた頃にやって来る。
……よくそう言うけれど。
その説はある意味正しくて、それらしい心当たりもなく婚約破棄されるという意外な展開は私の前に突如出現した。
「僕はさ、もっと上を目指したい」
「上を……?」
「ああ、そう、そうなんだよ。だから僕は君とは生きないことにしたんだ」
私たちは視線を重ねる。
けれどもそこに未来への希望はない。
「本気で仰っているのですか」
「もちろん」
「すべてが壊れても良いということですか?」
「ああ」
「……本気なのですね?」
「もちろんだよ。何を失っても、僕はもっともっと上を目指す。僕は男として頂へ行きたいんだ、そのためには君が邪魔なんだ」
邪魔? 私が? ……どうしてそんなことを言われなくてはならないのか。なぜ? 私が悪いの? その発言に根拠があるならぜひそれを言葉にしてほしい。それなしでまるで私のせいであるかのように言われても正直納得できない。それって本当に私のせい? 自分の弱さを他人に押し付けているだけではないの? ……そう言いたくなってしまう。
「だからここで終わりにしよう」
「そうですか……残念です」
「馬鹿だな、それはこっちのセリフだって」
こうして私たちの関係は終わりを迎えた。
◆
数日後、ルブブールはなぜか増水した川に飛び込み、その結果流されてしまって命を落とした。
上を目指す、そんなことを偉そうに言っていた彼だけれど。
結局彼には未来などなかった。
頂を目指す、なんていう次元の話ではなく、大抵誰にでもある平凡な未来すら彼にはなかったのである。
なぜ増水した川に飛び込んだのかは謎のままだけれど。
ただ、それが彼の選んだ道なら、それが彼の人生だったのだろう。
人生を決めるのは常に本人。だからどんな選択もその人自身の責任。もちろん強制されたとかなら話は別だけれど。そういった一部の事例を除けば、どう生きてどう死にゆくかは自身の選択の先にある結果としか言えない。
◆
「いらっしゃいませ!」
ルブブールに婚約破棄された後、私は、友人の紹介で宝石店に勤めた。
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「ありがとうございます。実は昨日色々変えてみたんです。ちょっとでも季節感を出してみたいなぁ、と思って」
「あら、そうだったのねぇ。とっても素敵よぉ。魅了されたわぁ」
そして今では独立し、自分の店を持っている。
「褒めていただけて嬉しいです!」
「その商品も可愛いわねぇ」
「こちら新商品です」
「まぁ! 新しいものだったのねぇ。ぱあっと輝いて見えるわぁ」
「とても嬉しい言葉です!」
仕事は忙しいけれど、毎日は充実している。
なので私はこれからもこの道を進んでいくつもりだ。
◆終わり◆
『じきに雪が降り出しそうな極めて寒いある日のこと。~意味不明なことをそうやって何度も言われても困ってしまうだけです~』
じきに雪が降り出しそうな極めて寒いある日のこと、婚約者ダーダムから呼び出され、珍しいことだなと思いつつ彼のところへ向かうと。
「君は宇宙人なんだってな」
そんな意味不明なことを言われて。
「え……あの、ごめんなさい、意味が……」
「宇宙人なのだろう?」
「違いますけど」
「嘘をつくな! 僕はもう知っている、君が悪しき者、宇宙人であることを!」
しかも意味不明な主張を押し付けられて。
「よって、婚約は破棄とする!」
しまいには関係を叩き壊す言葉を発されてしまった。
えええー……、と思ったけれど。
「まさか君がそんな悪しき者だとは思わなかった。もう少しまともで魅力的な人間だろうと思っていたのだが……それは僕の勘違いだったようだ。こうして君がこの世に災厄を招く宇宙人であると判明した以上、君と共に生きていくことはできない。なのですべてをおしまいとすることにした」
私たちの関係は流れのままに終わりを迎えることとなってしまったのだった。
◆
数日後、ダーダムは、家で過ごしていたところ突如出現した複数の宇宙人に連れ去られた。
一時行方不明となり。
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この目で見たわけではないので詳しいことは知らないけれど。ただ、彼の親がそう話しているらしいので、真っ赤な嘘ということはさすがにないものと思われる。一応きちんとした情報源のある情報である。誰かがふざけて流したいい加減な噂というわけではない。
彼は私を宇宙人だと言った。けれどもそれは間違いだった。彼が敵視するべきは私ではなかった。彼はそこを間違えたから、結果的に、こんなことになってしまったのだろう。宇宙人を恐れること、それ自体は間違いではなくても、宇宙人でない人を宇宙人だと思い込むべきではなかったのだ。
◆
ダーダムがいなくなってから数年。
あの後実家でのんびり暮らしていた私は、ダーダムではない別の男性と結婚し、幸せになった。
夫となってくれた彼は思いやりのある人だ。
だから一緒にいてとても楽しいし純粋に幸せなのだ。
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