異世界恋愛短編集 ~婚約破棄されても前を向いて生きてゆくのです~

四季

文字の大きさ
63 / 92

頼まれたから対応しただけだというのに、そんなことを言われるとは思いませんでした……。

しおりを挟む
「なぁ、この積み木、積んでみてくれね?」

 婚約者デヴィオスにそんな風に頼まれたので「いいわよ」と応じ指定された積み木を一生懸命積んでみていたところ。

「お前座り方ダサすぎ。婚約破棄するわ。そんな座り方するやつと結婚とかぜってー無理だわ」
「え」
「いやだから婚約破棄するって」
「ま、待って。何を言っているの。あまりにもいきなり過ぎて理解できな――」
「黙れよ、うぜえな」

 ……は、はああああ?

 積み木を積んでほしいの頼まれて。
 何とか力になりたいと思い懸命に積んでみて。

 それで、婚約破棄!?

 いやいや、それはさすがに、意味不明すぎるよっ!!

 ――と言いたいところだがここでそういうことを言い返すと状況がより一層悪化しそうなのでやめておいた。

「座り方きたねぇ女とは結婚したくねえわ」
「貴方のために積んでいたのよ」
「は? 俺は積み木を積んでって頼んだだけ。そんな変な座り方しろなんて一回も言ってねーよ。だろ? なぁ?」
「私はただ貴方のために」
「黙れよ! うるせえんだよいちいち! 偉そうな口の利き方すんなよ! なあ! なあ! あのなぁ、ちょっとは頭使えよ! そんなんだから捨てられんだよ! それすらも分かんねえってか? なぁ? ばぁぁぁぁぁかぁぁぁぁぁぁ、か? お前は? 馬鹿なのか? 馬鹿かよ?」

 ああそうか、彼はもう私を欠片ほども想ってはいない……。

「じゃあな、バイバイ。ばあぁぁぁぁぁぁぁぁぁんぁぁぁぁぁぁぁぁかあああぁぁぁぁぁぁぁぁなやつは泣いとけやぁ。ギャハハハハ!!」

 私と彼の関係は終わった。


 ◆


 婚約破棄の翌日デヴィオスは亡くなった。
 家の近くで落石事故に巻き込まれたのだ。
 突然の事故によって意識不明となってしまった彼は病院に搬送されるも間もなく死亡が確認された。

 あんなに心ない言葉を発してきていたデヴィオスがどうなろうが何とも思わない。

 話を聞いて改めて落石事故の怖さを感じはした。

 だが彼を可哀想だとは思わない。
 なぜなら彼は人の心を平気で傷つける悪しき人間だから。


 ◆


「栗きんとんください!」
「はいっ」
「待ってますね~」
「すみません、お願いします」

 私は今、遠い国から入ってきた品々を売る店を営んでいる。

「お饅頭三つ欲しいです」
「はい! しばらくお待ちください!」
「分かりました、急ぎません」
「お気遣いに感謝します」

 店はかなり繁盛している。

「こちら、栗きんとんになります」
「ありがとうございます~」
「二箱まとめておきましたので」
「助かります~」

 日々忙しいけれど不快感はない。

「お饅頭三つ、お待ちの方!」
「私です」
「こちらでお間違いないでしょうか?」
「はい、はい、そうですね、問題ありません」
「ではお渡しします」
「ありがとうございます」

 やりたいことをやれている。
 それだけで日常は輝く。
 そしてそういう時人はどこまでも真っ直ぐに希望を信じて歩んでゆける。


◆終わり◆
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愚か者たちの婚約破棄

あんど もあ
ファンタジー
ライラは、父と後妻と妹だけが家族のような侯爵家で居候のように生きてきた。そして、卒業パーティーでライラの婚約者までライラでは無く妹と婚約すると宣言する。侯爵家の本当の姿に気づいているのがライラだけだと知らずに……。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

婚約破棄? 五年かかりますけど。

冬吹せいら
恋愛
娼婦に惚れたから、婚約破棄? 我が国の規則を……ご存じないのですか?

転生令嬢シルヴィアはシナリオを知らない

潮海璃月
恋愛
片想い相手を卑怯な手段で同僚に奪われた、その日に転生していたらしい。――幼いある日、令嬢シルヴィア・ブランシャールは前世の傷心を思い出す。もともと営業職で男勝りな性格だったこともあり、シルヴィアは「ブランシャール家の奇娘」などと悪名を轟かせつつ、恋をしないで生きてきた。 そんなある日、王子の婚約者の座をシルヴィアと争ったアントワネットが相談にやってきた……「私、この世界では婚約破棄されて悪役令嬢として破滅を迎える危機にあるの」。さらに話を聞くと、アントワネットは前世の恋敵だと判明。 そんなアントワネットは破滅エンドを回避するため周囲も驚くほど心優しい令嬢になった――が、彼女の“推し”の隣国王子の出現を機に、その様子に変化が現れる。二世に渡る恋愛バトル勃発。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

婚約破棄された令嬢、気づけば王族総出で奪い合われています

ゆっこ
恋愛
 「――よって、リリアーナ・セレスト嬢との婚約は破棄する!」  王城の大広間に王太子アレクシスの声が響いた瞬間、私は静かにスカートをつまみ上げて一礼した。  「かしこまりました、殿下。どうか末永くお幸せに」  本心ではない。けれど、こう言うしかなかった。  王太子は私を見下ろし、勝ち誇ったように笑った。  「お前のような地味で役に立たない女より、フローラの方が相応しい。彼女は聖女として覚醒したのだ!」

処理中です...