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前編
しおりを挟む「お姉様! 婚約者を交換しましょ!」
甲高い声で妹ミミィからそう告げられたのはある日の昼下がりだった。
「え……ちょ、ちょっと待って、どういうこと?」
「だ! か! ら! 婚約者を交換しますの。馬鹿ですの? こんな簡単なことさえ理解できないなんて」
私と妹にはそれぞれ婚約者がいる。
つまりは、それを取り換えるということか?
「いきなり過ぎるわ、そんな……」
「ま、お姉様が何を言っても無駄ですわ。だってもうそういう話で通っていますから」
「そうなの!?」
「ええ。わたくし、もうハリー様と婚約しましたのよ」
「ええっ!!」
「信じられないのならハリー様に聞いてみればどうですの? うふ」
ハリーは私の婚約者だった。いや、今もそうだと思っていた。でもいつのまにかそれは変わってしまっていたようで。妹のものになってしまっていたようだ。ハリーと私の婚約は勝手に破棄とされていた。
「ま、お姉様はオルガンと仲良くなさって? あいつはパッとしない地味男ですけれど。お姉様にはぴったりと思いますわよ」
パッとしない地味男と下げておいて私にぴったりと言うなんて……どこまでも嫌みだ。
だがそうなってしまったものは仕方ない。
次のことを考えようと思う。
そして、今手にできているものの中から幸せを見つけようと、そうも思う。
手に入れられないものを望まない。
大抵その方が良い結果になる。
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