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前編
しおりを挟む平凡な国の姫ウェイリアは十代後半で隣国の王子タスマンと婚約した。
それは国と国の契約によって発生した婚約。
両国の関係性を強めるためのものであった。
ただ、それでも、ウェイリアはタスマンを想っていて。
美しい彼女はいつも心配する周囲に「タスマン様にも良いところはあります」「彼は本当は良い方なのです」などと話していた。
しかしタスマンは彼女を愛さず、それどころか、侍女あがりの女リフアンを可愛がり愛していた。
その間、タスマンはずっとウェイリアを放置していた。けれどもウェイリアは何も言わず待っていた。彼女は控えめで慎ましい。それゆえ主張は特にしなかった。タスマンもまた、それに甘えて。リフアンばかりを可愛がり周囲が呆れるほど大事にしていた。
そんな中でタスマンは次第にウェイリアの悪口をリフアンに聞かせるようになっていく。
そしてウェイリアの父親が激怒。
彼は「貴様のような男に娘は渡せん」と言い放ち、婚約を強制的に破棄にもっていった。
その結果ウェイリアは生まれ育った国へ戻ることに。
「聞いた? あの男、ウェイリア様の悪口を言っていたんですって!」
「最低な男ね」
「酷すぎ! 婚約破棄になって良かったわ。そういう男はきっとこの先もろくでもないことばかりするもの!」
母国にはウェイリアの味方が多くいた。そのため彼女を悪く言う人はおらず。むしろタスマンを悪者と認識している者の方が圧倒的に多かった。
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