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前編
しおりを挟む健康に良いとされるナトゥ菌を育てていた私は、ある日、婚約者である彼ナムレットから婚約破棄を告げられた。
「菌を育てている女なんぞと夫婦になれるか! これまで我慢してきたが、やはり無理だ! とても考えられない!」
「ナトゥ菌は害のある菌ではありません」
「それでも、だ! 汚い!」
「汚い菌ではありません! ……これは世の人々の身体に良い影響を与えてくれるものたちです」
私がナトゥ菌を育てるようになったのは育った環境ゆえだ。
親も良い菌の研究者だった。
それで私も自然とその道を行くこととなったのである。
「何菌だろうが菌は菌だろ!」
「そうですが、菌と言っても色々あります。害があるものもあればないものも、むしろ人々の役に立ってくれるものまで」
「知るか!!」
「ええっ」
説明しても聞いてはくれない。
それどころか聞こうとすらしてくれない。
彼は私が何を言っても反発するばかりだ。
「そんなことはどうでもいい! 俺は決めたんだ。婚約破棄する、と!!」
さらにはもう一度そんなことを言ってきた。
目じりはつり上がり、鬼のような顔になっている。
「つまりはどうしても婚約破棄したいということですね……」
「ああそうだ! その通りだ! 分かっているのならあれこれ言うな、鬱陶しいから」
「……そうですね」
「分かったな? じゃあもういいな? 婚約は破棄だ!」
これ以上話をしても時間の無駄か。
そう思った私は引き下がることにした。
「……分かりました」
その後正式に手続きが行われ、私たちの縁は切れた。
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