聖女だった私は突然追放されましたが、運良く(?)魔王に保護してもらえることになりました。

四季

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11話「どこまでも行くのです」

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 ある日の晩、私は魔王に呼び出された。とはいえ、彼に呼び出されるのは珍しいことでもない。なので、特に深く考えず、彼のもとへと向かった。

 そこに立っていた魔王は、大きな花束を持っていた。

 赤、白、黄……様々な色の花が詰め込まれた花束。かなり大きくかなり金がかかりそうなもの。豪華という単語が似合う感じの花束である。

 私はただ戸惑うことしかできない。
 そんな私を見て、彼は静かに微笑む。

「来てくれてありがとうございます」
「あの……それって……」
「フレイナ聖女に似合いそうなものを作ってきたので、渡そうと思って」

 信じられない思いで魔王を見つめる。
 あぁ、どうしてこんなことにーーアルベール王国を追い出された時とは逆の意味で、そう思わずにはいられない。
 そもそも、魔王がこんな善良で良いものなのか。丁寧さだけを見ても違和感を感じていたが、こんな風に驚かせてくれるなんて、ますます彼が魔王だとは思えなくなってきてしまった。

「もし良ければ受け取って下さい。これまでのお礼です」
「あ……」

 すぐには受け取れない。戸惑いが大きすぎて。

「……どうかなさいました?」
「あっ、い、いえ! すみませんっ」

 魔王に心配そうな声をかけられて、私はようやく正気を取り戻す。

 それまでは驚きのあまり自分の心を見失ってしまっていた。何が何だか分からず、脳がパンクしてしまって。ただぼんやりとすることしかできなくなってしまっていた。

 だがもう大丈夫。
 改めて手を伸ばす。

「でも、これ、本当に貰って大丈夫なのですか……?」
「もちろんです」
「あ、そうですか……。ではありがとうございます」
「どうぞ。重いので気をつけて持って下さいね」

 初めは片手だけを出していたのだが、花束は予想外に重量があって、片手で持った瞬間重みを感じた。そのため慌ててもう一方の手も伸ばす。重量のある花束でも、両手になればそれなりにしっかり持てそうだ。その結果、無事受け取ることができた。

「あぁそうでした。まだ伝えたいことがありました」
「何ですか?」
「フレイナ聖女……私と深い関係になってはくださいませんか」

 思わず引きつったような声で「えっ」と漏らしてしまった。

 でも、こんなことになったら、誰だって今の私のようになってしまうだろう。冷静に愛想よく対応なんて、よほどの手練れでなければできるはずがない。普通に慎ましく生きてきた人間なら、ほとんどが、今の私のような反応をしてしまうはずだ。

「え……その……それは一体……」
「結婚を見据えてお付き合いしたいのです」
「え!? えええっ!?」

 ……唐突過ぎる。

「えっと、その……少し考えさせてほしいのですけれど」
「構いません。待ちますよ」
「あ、ありがとうございます!」

 魔王軍に加入してい生きてゆくことはとうに決意した。が、魔王と共に生きてゆくという流れは想定していなかった。これまでのような関係のまま進んでゆくものと考えていた。だから今、かなり戸惑っている。

 でも、踏み出すのも悪くはないかもしれない。

 そんな風に思っている私もいた。


◆終わり◆
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みんなの感想(1件)

penpen
2021.05.07 penpen

魔王って何だっけ?ꉂꉂ(*ノ∀`)ノ"ケラケラ

2021.05.07 四季

ありがとうございます!

解除

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