聖女だった私は突然追放されましたが、運良く(?)魔王に保護してもらえることになりました。

四季

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10話「いよいよ攻め込みます」

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 その後、私を含む魔王軍は、アルベール王国へと攻め込んだ。

 アルベール王国は既にかつての雰囲気とは変わり果てていた。民は労働力や資産を国に搾取されて痩せ細り、すべてを軍事費に注ぎすぎたために国自体も豊かさを失っている。軍事力は多少は高まったのかもしれない。が、幸せな国ではなくなっていた。

 武力をひけらかし、周辺国に迷惑をかけるばかり。
 それが今のアルベール王国だ。

 アルベール王国を愛する者はもはや皆無に近い。民も、周辺国も、アルベールという国を嫌っている。アルベールという国を辛うじて嫌っていない者がいるとしたら、軍事関連で高い地位についていて甘い蜜を吸えている者だけだろう。

 そんな状態のアルベール王国を攻略するのは、それほど難しいことではなかった。

 魔王のそこそこ高い指揮能力があり部下たちの忠誠心がある、それだけのことが魔王軍をどこまでも強くしているように感じた。

 私に与えられた役目は魔王を護ること。だがそれも結界を張る力を使えば何とかなる。敵が多い中で魔王を護らなくてはならないので気が張りはするけれど。でも、敵はそれほど強くないので、一応は何とかなった。

 ぶつかり合うアルベール王国軍と魔王軍。

 何もかもが燃え盛るその様はとてつもない恐ろしさをはらんでいた。けれども多分これも一つの定めだったのだろう。定めなんていうものは大抵簡単には変えられないものだ。

 そしてアルベール王国は滅んだ。

 彼らは信仰や穏やかな日々への感謝を忘れ、他者を傷つけ叩き潰すための力だけを欲した。しかも、その力を過剰に利用し、周辺国などに多大な迷惑をかけた。こういう間違いは昔から人間にありがちなことだけれど、それが良い選択とはお世辞にも言えない。

 だから、こうなってしまったのも仕方のないことだろう。

 アルベール王国は歩む道を間違えたのだ。

 暴走した国を潰すことに成功した魔王軍は、周辺国から感謝された。


 戦いが終わった後。
 私は魔王に呼び出された。

「今回はありがとうございました、フレイナ聖女。貴女の力に色々助けられました」
「い、いえ……」

 必要ないと放り出された時はどうなることかと思ったが、魔王に拾われ、自分にできることをできた。大きなことではないかもしれないが、今、非常に達成感がある。

 心が満たされたような不思議な感覚。

 直接的な人助けをしたわけではないのに、それと同じような満たされる感覚があって妙だ。

「ぜひこれからも力を貸して下さい」
「はい……!」
「ありがとうございます。では、よろしくお願いします」
「こちらこそ」

 私はこれからも魔王軍で生きてゆく。
 せっかく生まれ持った特別な能力があるのだ、使わなくては損というもの。

「必要としていただけるなら、ぜひ、協力させて下さい」

 これからも様々な出来事が私たちを待ち受けるだろう。それでも、きっと、何とか乗り越えてゆけるはず。根拠はないけれど今はそう信じられる。ここまで歩めたように、これからも歩み進んでゆけることだろう。
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