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9話「魔王との時間は特別です」
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魔王側についてからの日々は充実したものだった。
最初は全体像が見えておらず、そのため、上手く力になれそうにない場面も少なくはなかった。しかし、時が経つにつれて分かることが増えてきて、段々魔王軍としての生活様式が確立されてきた。
そして、やがて、私は魔王の護衛役に任命された。
聖女が魔王を護衛するなんて、という驚きの声も、決して小さくはなかったけれど。でも、できることに取り組む姿勢が評価されたため、悪口は言われなかった。
そんなある日の晩。
私は魔王に呼び出された。
「すみませんね、いきなり」
「いえ」
魔王は時折私を呼び出す。が、不健全なことを仕掛けてくることはない。当たり障りのない会話をしてくることがほとんどだ。ただし、時々は、必要不可欠な話題のこともあるけれど。
「今度アルベール王国へ攻め入ることになったのですが、フレイナ聖女、ついてきてくれますか?」
今夜は必要不可欠な話題の日であった。
「あ……そうなのですね」
アルベール王国は今どうなっているのだろう。私はそれすら知らない。追い出されて以来、あちらの国とはまったく交流がないから。アルベール王国がどうなっているかなど、欠片ほども把握していない。
「かつて住んでいらっしゃった国と戦わせてしまうこと、申し訳なく思います」
魔王はことあるごとに気遣ってくれる。
嬉しいけれど、申し訳なさも感じる。
「いえ、構いません。私は貴方についていきます。もう決めたことですから」
今や私の心に迷いはない。この心優しい魔王のために生きる、それが私の選んだ道だ。もう引き返すつもりはない。たとえこの道の先にある未来がどんなものであったとしても。
「……嬉しいお言葉をありがとうございます」
「これからもお守りします! できる範囲で!」
「感謝します。フレイナ聖女」
いよいよアルベール王国と合間見える時が近づいてきた。
不思議な気持ちだ、本当なら向こうにいたかもしれなかったと考えると。
「ところでフレイナ聖女、少し質問があるのですが」
アルベール王国へ攻め込む話の後、魔王が別の話題を振りたそうな空気を漂わせてくる。
「何でしょう」
「好きな花はありますか?」
「え」
これまでの話とまったく関連性のない問いに、きょとんとするほかない。
だってそうではないか。これまではアルベール王国へ攻めていく話をしていたのに、急に好きな花について尋ねられたりしたら、驚くに決まっているではないか。そんな急展開についていける人なんて、それほど多くないはずだ。
「いや、それほど深刻な話ではないのです。ただ、もし贈るとしたら何がいいかなと思いましてね」
「えっ……あ、その……贈ってもらう必要はありません……」
「安心して下さい。あくまで『もし』の話ですよ」
「そ、そうですよね……」
正直なことを言うと、好きな花なんて考えたこともなかった。
だからそれらしい答えは導き出せなくて。
「お花なら私どんなものでも好きです」
結果、そんな曖昧な答え方をすることになってしまった。
最初は全体像が見えておらず、そのため、上手く力になれそうにない場面も少なくはなかった。しかし、時が経つにつれて分かることが増えてきて、段々魔王軍としての生活様式が確立されてきた。
そして、やがて、私は魔王の護衛役に任命された。
聖女が魔王を護衛するなんて、という驚きの声も、決して小さくはなかったけれど。でも、できることに取り組む姿勢が評価されたため、悪口は言われなかった。
そんなある日の晩。
私は魔王に呼び出された。
「すみませんね、いきなり」
「いえ」
魔王は時折私を呼び出す。が、不健全なことを仕掛けてくることはない。当たり障りのない会話をしてくることがほとんどだ。ただし、時々は、必要不可欠な話題のこともあるけれど。
「今度アルベール王国へ攻め入ることになったのですが、フレイナ聖女、ついてきてくれますか?」
今夜は必要不可欠な話題の日であった。
「あ……そうなのですね」
アルベール王国は今どうなっているのだろう。私はそれすら知らない。追い出されて以来、あちらの国とはまったく交流がないから。アルベール王国がどうなっているかなど、欠片ほども把握していない。
「かつて住んでいらっしゃった国と戦わせてしまうこと、申し訳なく思います」
魔王はことあるごとに気遣ってくれる。
嬉しいけれど、申し訳なさも感じる。
「いえ、構いません。私は貴方についていきます。もう決めたことですから」
今や私の心に迷いはない。この心優しい魔王のために生きる、それが私の選んだ道だ。もう引き返すつもりはない。たとえこの道の先にある未来がどんなものであったとしても。
「……嬉しいお言葉をありがとうございます」
「これからもお守りします! できる範囲で!」
「感謝します。フレイナ聖女」
いよいよアルベール王国と合間見える時が近づいてきた。
不思議な気持ちだ、本当なら向こうにいたかもしれなかったと考えると。
「ところでフレイナ聖女、少し質問があるのですが」
アルベール王国へ攻め込む話の後、魔王が別の話題を振りたそうな空気を漂わせてくる。
「何でしょう」
「好きな花はありますか?」
「え」
これまでの話とまったく関連性のない問いに、きょとんとするほかない。
だってそうではないか。これまではアルベール王国へ攻めていく話をしていたのに、急に好きな花について尋ねられたりしたら、驚くに決まっているではないか。そんな急展開についていける人なんて、それほど多くないはずだ。
「いや、それほど深刻な話ではないのです。ただ、もし贈るとしたら何がいいかなと思いましてね」
「えっ……あ、その……贈ってもらう必要はありません……」
「安心して下さい。あくまで『もし』の話ですよ」
「そ、そうですよね……」
正直なことを言うと、好きな花なんて考えたこともなかった。
だからそれらしい答えは導き出せなくて。
「お花なら私どんなものでも好きです」
結果、そんな曖昧な答え方をすることになってしまった。
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