聖女だった私は突然追放されましたが、運良く(?)魔王に保護してもらえることになりました。

四季

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8話「この結界は魔王でも破れません」

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「これで結界が張れました」
「おお……! では少し試させていただいても構いませんか」
「はい。どうぞ」

 魔王を入れることができない結界を張った。これでもう彼はこちらへ近づけない。ここまでは想定通り、順調だ。これで早速効果を確かめてもらえるはず。

「では試させていただきます」

 丁寧にそう述べてから、魔王は慎重に私の方へと足を進める。一歩、二歩、進む。そして三歩目を踏み出したその時、バチッと静電気のような音が響く。魔王はハッとした顔で足を止めていた。

「本当ですね。これ以上そちらへ行けません」

 魔王は瞳を震わせながらそんなことを言う。
 彼とて私の言うことを疑っていたわけではないのだろう。ただ、私が張る結界がこのようなものだとは、具体的には想像できていなかったのかもしれない。それで驚いているのだろう。

「分かっていただけましたか?」
「はい。これは凄い力ですね。ありがとうございました」

 一礼する魔王。
 相変わらずの礼儀正しさ。

「では結界を消滅させます」

 そう言って、私は結界を消し去った。
 私は改めて魔王の顔へと視線を向ける。ちょうどその時、彼もこちらを見つめていた。じっと見つめられると自然と緊張してしまう。が、彼の目つきに鋭さはないので、恐怖感はまったくない。

「素晴らしい力ですね」
「……ありがとうございます」
「我が魔王軍のためにその力を使ってもらえると思うと、今から楽しみです」

 魔王はそう述べて柔らかく微笑む。
 どうしてこんな優しい顔をできるのだろう。

「色々苦労もされてきたのでしょうが、どうか安心して下さい。我々は貴女を邪険に扱ったりはしません。相応しい待遇をお約束します」

 こうして魔王と話していると、いつも、たまらなく不思議な気分になる。この人は本当に魔王なのだろうか、などと、つい考えてしまうのだ。

「あの、少し構いませんか」
「はい」
「私、能力以外の技能は特に持っていないのですけど、それでも大丈夫ですか?」
「あぁ、心配なさっていたのですね。でも大丈夫です。無茶な頼み事はしませんので」

 こうして私は魔王の味方になった。

 これからのことに対する不安はある。未来への言葉にならないような不安は小さくない。が、魔王は親切なので、そういう意味では希望もある。何とか頑張っていこう、そう思えないことはない。慣れるまでは時間がかかるだろうけれど、でも、あちらの国に残って必要ないと言われ続けるよりかはずっと良い。
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