聖女だった私は突然追放されましたが、運良く(?)魔王に保護してもらえることになりました。

四季

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7話「決意しました」

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「魔王様、ぜひ協力させて下さい」

 私がその言葉をついに言えたのは、数日後だった。

 ここまで行ったり来たりを繰り返しながら悩んできた。協力しようと決意する日とそれでいいのかと立ち止まってしまう日があったが、行ったり来たりはもうやめる。もう悩まない。ここへ来たのも何かの縁だろうから、私はここで生きていく。

「本当ですか……!」
「はい。もう迷いはありません、力にならせて下さい」
「そういうことならとても助かります」
「お世話になりましたので、これからできる範囲でではありますが恩返しをしたいです」

 魔王は嬉しそうな顔をしてくれる。そのことがとても嬉しかった。ここでは必要とされているのだ、と、感じ取ることができたから。

 ここでなら私は要らない存在ではない。
 小さなことではあるけれど、とてつもなく喜ばしいことに思える。

 魔王は私の前まで歩いてきた。そして片手を差し出してくる。どうやら握手を求めているようだ。戸惑いながらも、私はその手を握り返す。

「これからよろしくお願いします、フレイナ聖女」

 魔王の手は大きかった。彼の手には包み込むような優しい雰囲気がある。そして、温かくもあった。

「……もう聖女ではありません」
「それはそうかもしれませんね。けれど、そう呼ばせて下さい。貴女は間違いなく、聖なる力を持つお方なのですから」

 じっと見つめてくる魔王の視線は真っ直ぐなもので、悪人には見えない。

「そんな大層な人間ではありません……。それで、私は何をすれば良いでしょうか?」
「あぁ、そうでしたね。ではまず結界を試していただけますか。見せていただきたいのです」
「はい」

 結界を張るくらいならお安い御用だ。久々なので多少緊張はするけれど、成功させる自信はある。何せ、これまで長い間、ことあるごとに張り続けてきたのだから。

「私を寄せ付けない結界を張っていただくことはできますか?」

 魔王はいきなりそんなことを言い出した。

「えっ。どういうことですか」
「実験です。何がどうなるのか見てみたいのです」
「あ、はい……分かりました。ここで一時的に張らせていただく形で構いませんか」
「お願いします」

 張るための儀式を開始する。

 儀式において必要な物はない。私さえあれば、結界は張ることができる。その点、この能力は便利だ。色々な物を用意して準備しておかなくて済むというのはかなり効率的である。

 集中しながら、呪文のようなものを唱える。

 魔王の目の前で結界を張る作業を行う日が来るとは夢にも思わなかったが、これはこれで悪い気はしない。
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