聖女だった私は突然追放されましたが、運良く(?)魔王に保護してもらえることになりました。

四季

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6話「魔王でも丁寧な人もいます」

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 ニオウクサのお茶はやはり悪臭を放っていた。苦いような渋甘いような、クセの強い香り。でも鼻が潰れるほどではなく、さほど苦労せずに飲むことができた。しかも、ニオウクサのお茶には身体に良い影響を与える効果が多くあって。飲み干した後、爽快感に包まれた。

 ミャーウーの話によれば、ニオウクサには血行促進効果があるらしい。飲んだ後に体内がすっきりするような感覚があるのも、それが影響しているのかもしれない。

 以降も私はのんびりと過ごした。

 食べ物や飲み物を貰ったり、話し相手になってもらったり、ミャーウーには色々世話になった。
 また、ミャーウー自身にも良いところがあった。それは、触れるとほっこりできるところだ。ふんわりとした毛が生えているので、手のひらで撫でると優しい気持ちになれる。撫でさせてもらっているだけで、心が落ち着く。


 のんびり過ごさせてもらっていた、ある日。

 何の前触れもなく魔王が訪ねてきた。

「フレイナ聖女、答えは出ました?」
「えっ。あ……そ、そうでしたね……」

 魔王につくか否か。その難問に答えを出さなくてはならない時が迫っている。それなのに私は何も準備をしていなかった。考えることさえ放棄してしまっていた。

「もう少しかかりますか?」

 魔王は今のところ優しい。が、油断はできない。いつ本性を露わにするか分からないから。見えている丁寧で心優しい彼が彼のすべてではないと思う。だからこそ、慎重に接するようにしなくては。

「あ……えっと、その……すみません。考えるのを忘れていました」

 恐る恐る本当のことを言ってみる。
 怒られはしなかった。

「そうですか。構いませんよ、今ここで考えていただければ」
「えっ! ……あ、はい。そうですよね」

 答えないまま終わって良い、なんて、そんな都合のいいことは起こらない。だがそれも当然のこと。これほど優柔不断であるにもかかわらず怒られずに済んでいるだけでも、幸運と思わなくてはならない。

「どうです? 我々についてはくださいませんか?」
「……正直迷っています」
「迷って? なぜです。我々が魔王軍だから、ですか」

 魔王とだけ聞けば極悪そうだが、目の前にいる彼は悪質な人であるとは思えない。どこからともなく連れられてきた私をこうして丁寧に扱ってくれているのだから。

「……はい。その、お世話になっておいて、失礼なのですが……」
「いえ。気になさらないで下さい。魔王と呼ばれる者の味方をできないというのも、当然の心理でしょう。魔王となると悪行ばかりが注目されますから」

 私はもう聖女ではないのだから、魔王に協力しても何ら問題はないはず。
 一歩踏み出す勇気があれば変えられるかもしれない。
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