聖女だった私は突然追放されましたが、運良く(?)魔王に保護してもらえることになりました。

四季

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5話「いきなりのことに頭が追いつきません」

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「それは凄い……!」

 魔王は純粋に感心しているようだった。
 彼からすれば私の能力なんてつまらないくだらないものかと思っていたのだが。

「フレイナ聖女、ぜひ、我が魔王軍についてほしいのですが」
「え」

 いきなりの勧誘。即座には答えを見つけられない。そもそも、聖女として生きてきた者が魔王の仲間になるなんて許されることなのか。いや、でも、厳密には私はもう聖女ではない。そう考えれば、どこの味方になってもおかしくはないのかもしれない。

「どうでしょう? やはり嫌ですか?」
「……すみません。いきなりのことで……戸惑っています」

 それに、妙に丁寧な魔王というものにも違和感。
 魔王というともっと暴君のような人をイメージしていた。

「でしょうね。突然のことですから。すぐに答えを出していただく必要はありません。ただ、選択肢の一つとして考えていただければありがたいなと」

 分からない、色々いきなり過ぎて。まだ何も理解できていない。もう少し時間が欲しい。この場でこれからについて決めるには、明らかに時間が足りていない気がする。大切なことであればあるほど、考える時間も必要だ。

「どうかよろしくお願いします」

 そう言って、魔王は微笑む。
 心臓を射抜かれそうな優しげな微笑み。彼は本当に魔王なのか、と、疑いたくなってしまった。

「は、はい……」

 なぜこうもときめいてしまうのだろう。単に彼が美青年だから? だがそれだけでこんなにも不思議な気持ちになるだろうか? ……正直よく分からない。でも、特別な何かを感じていることは確かで。自分がおかれている現状を理解しづらい。


 その場で即決できなかったが、魔王の情けで、私はもうしばらくここにいさせてもらえることになった。

 世話係はミャーウー。
 拾ってきたのだから責任を持って世話をせよ、との命令らしい。

「アルベールの聖女! 飲み物を用意するミャウ!」
「あ。本当ですか、ありがとうございます。嬉しいです」
「何を飲みたいミャウ?」
「えっと、何がありますか」
「ニオウクサのお茶かニオウマメのお茶があるミャウ」

 こんなことを言っては駄目かもしれないけれど……ニオウクサ、ニオウマメ……臭そう。

 だが、何でも名前だけで判断するのは良くない。そう考え、詳しいであろうミャーウーに、本当のところを尋ねてみることにした。

「それは臭いですか?」

 いきなりこのようなことを尋ねるのは無礼だと思わないではない。が、勇気を出して尋ねてみた。貰う前にどのようなものかをはっきりさせておきたいから。

「何の話ミャウ?」
「匂いが強いものは苦手なので……」
「そういうことなら大丈夫ミャウ! 名前は臭そうでも匂いはそんなにないミャウ」
「分かりました。ではどちらでも」
「ではニオウクサの方にするミャウ! 少し待っててミャウ!」
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