絶世の美女オフィーリア、復讐する

四季

文字の大きさ
2 / 2

後編

しおりを挟む
 ある夜のこと、スベール夫婦が暮らす村に魔物の群れが出現。村人たちは冷静に対処することはできなかった。ただ狼狽えることしかできないまま、数人が犠牲になる。

 スベールとコルネリアは運良く無事だった。しかし、ショックが大き過ぎて体調を壊したコルネリアは、流産してしまう。夫婦を悲しみが包んだ。それでも、今は生きているだけで幸せ、と思い込むようにして。二人は心を保とうとする。

 数日後、再び魔物の群れが現れた。

 今度は二人も襲われた。

 前回は運良く助かったが、今回もそのように、とはいかず。魔物の爪に喉を掻っ切られて、スベールは絶命する。それも、コルネリアの目の前で。
 コルネリアはまたしても運良く助かった。しかし、生き延びたことが彼女にとって幸せなことだったかというと、そうではない。スベールが落命することとなったのはコルネリアを守ろうとしたせい、その事実がコルネリアを苦しめ続ける。

 コルネリアは心を病んだ。

 数日後にはコルネリアの両親が魔物の襲撃に遭い死亡。その場に偶々同席していたスベールの父親も、巻き込まれて傷を負う。結局それが致命傷となり、スベールの父親も数日以内に落命。残されたスベールの母親と弟は、ここにいては危険だと考え、引っ越していった。

 コルネリアは施設に保護され、そこで暮らすようになる。
 しかし彼女の心が正常に戻ることはなかった。


 ◆


 それから数年。

 コルネリアは衰弱し、一日のほとんどを施設内のベッドの上で過ごすようになっていた。

 数ヶ月前には不治の病と呼ばれる病を患っていることが判明。それでも施設に残っていたのは、精神状態のこともあって彼女を引き取ってくれる病院がなかったからだ。彼女は屍のようになりながらも、一日中天井を見つめて何とか生きていた。

 そんなある夜のこと。
 コルネリアの枕もとに、一人の女性が現れる。

「久しぶりね、コルネリア」

 その女性はオフィーリアの姿をしていた。

 この世のものとは到底思えぬような美女。

「元気かしら。いえ、元気ではなさそうね。随分弱っているわね」
「……おねえ……さ、ま……? ……しに、がみ……?」
「でもいいわ、それで。すべてを失ったのよね。私の痛み、少しは分かってもらえたかしら」
「……わた、し……死ぬ、の……?」
「そうよ。貴女は死ぬ。でも安心なさい、最期は苦しめないわ」


 ◆


 翌朝、コルネリアは息を引き取っていた。
 見回りに来た係の者が発見したのだった。


◆終わり◆
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

不実なあなたに感謝を

黒木メイ
恋愛
王太子妃であるベアトリーチェと踊るのは最初のダンスのみ。落ち人のアンナとは望まれるまま何度も踊るのに。王太子であるマルコが誰に好意を寄せているかははたから見れば一目瞭然だ。けれど、マルコが心から愛しているのはベアトリーチェだけだった。そのことに気づいていながらも受け入れられないベアトリーチェ。そんな時、マルコとアンナがとうとう一線を越えたことを知る。――――不実なあなたを恨んだ回数は数知れず。けれど、今では感謝すらしている。愚かなあなたのおかげで『幸せ』を取り戻すことができたのだから。 ※異世界転移をしている登場人物がいますが主人公ではないためタグを外しています。 ※曖昧設定。 ※一旦完結。 ※性描写は匂わせ程度。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載予定。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

婚約破棄して支援は継続? 無理ですよ

四季
恋愛
領地持ちかつ長い歴史を持つ家の一人娘であるコルネリア・ガレットは、婚約者レインに呼び出されて……。

悪役令嬢の涙

拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。

あなただけが頼りなの

こもろう
恋愛
宰相子息エンドだったはずのヒロインが何か言ってきます。 その時、元取り巻きはどうするのか?

王子は婚約破棄を泣いて詫びる

tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。 目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。 「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」 存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。  王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

好きな人ができたなら仕方ない、お別れしましょう

四季
恋愛
フルエリーゼとハインツは婚約者同士。 親同士は知り合いで、年が近いということもあってそこそこ親しくしていた。最初のうちは良かったのだ。 しかし、ハインツが段々、心ここに在らずのような目をするようになって……。

処理中です...