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後編
しおりを挟む「もういい! 盗み食いしたうえ罪を認めないような女とは縁を切る!」
しかしアボロスは少しも落ち着こうとはしてくれなくて。
「お前との婚約は破棄だ!!」
そんなことを告げられてしまう。
愕然として固まっている私を、彼は家から蹴り出した。
「実家へでも帰れ!! 泥棒!!」
どうしてそんなことを言うの!
なぜ根拠もなく私が犯人だと言い続けられるの!
――と、言ってやりたいことはたくさんあったのだけれど、もちろん言い返せるはずもなく。
私はそのまま小さな山を越えた向こうにある実家へと帰るしかなかった。
◆
翌日、アボロスらが住むあの村で事件が起こったということを知った。
何でも夜に熊が村へやって来て暴れたそうだ。
それで村の者たちはその多くが負傷したり死亡したりしたらしい。
死者名簿にはアボロスの名も記載されていた。
干していた鮭を勝手に食べたのって、もしかして……?
ただ、今はアボロスに感謝している。
だって彼が無理矢理婚約を破棄してくれたおかげで私は今こうして生きているのだから。
あのまま仲良くやっていたとしたら、多分、二人まとめて死んでいたことだろう。
「ああ、良かったわ……あなたがあの村にいなくて……」
事件について聞いた時、母は涙をこぼしていた。
◆
あれから十年以上が経った今、私は穏やかな家庭を築いて生きている。
良き夫に出会え。
子にも恵まれ。
忙しくも幸せな日々の中で息をしているのだ。
◆終わり◆
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