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前編
しおりを挟む良家の娘であったフィリカは、その美しい銀髪と目鼻立ちゆえ、周囲の者たちから愛されて育った。誰もが彼女の美しさを称賛した。そして、彼女の性格の良さもまた、皆の心を奪った。多くの者を惹きつけた。
だが――婚約者リックだけは、フィリカを愛さなかった。
「悪いが、フィリカ、婚約は破棄とさせてもらう!」
リックにとってはフィリカは素晴らし過ぎたのだ。
そのことに耐えられなかった。
そして裏でこっそり自分より低い地位の女性と付き合っていた。
「なぜ……」
「愛している人がいるからだ!」
「愛して、いる……人……」
「君より好きな人がいるんだ! だから。僕は、覚悟した。君との婚約を解消するんだ、と!」
こうしてリックはフィリカを切り捨てた。
だがその数日後。
フィリカの過激なファンによってリックは暗殺された。
リックがフィリカとの関係を継続していたなら死にはしなかっただろう。大人しくしていれば殺されることなんてなかったはずだ。リックの行いが、結果的に、彼自身の命を奪うこととなったのだ。
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