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前編
しおりを挟むそこそこ歴史ある良い家の娘であったクルリラは、とても可憐な容姿の持ち主で、皆から愛されて育ってきたような女性だった。
しかし彼女はかつて一度婚約破棄を経験した。
三つ年上の婚約者アドレッタに浮気されたうえ「気分が変わったから」とか何とか言われて婚約破棄されたのだ。
クルリラは彼を愛していた。大切に思っていた。だからこそその出来事には大きなショックを受けて、それからしばらく彼女は体調を崩した。どんな時も明るく生きてきた彼女が初めて食欲も失うほど落ち込んだのである。
だが彼女には多くの味方がいた。
いつだって献身的に世話をして支えてくれる母、いつだって味方になってくれる頼もしい父、付き合いの長い友人――だからこそクルリラは徐々に回復し、やがて、食事もとれるくらいにまで復活した。
そして今、彼女は、良家の子息であるアズレボスと夫婦となっている。
「あ、もう起きたんだ? 早いねクルリラ」
「そうかな……べつに早くはないと思うけど」
「君にしては早くない?」
「ああそういうこと。それはそうね、私にしてはね」
クルリラとアズレボスは互いを想い合っている。
だからこそ相手を傷つけるようなことはしない。
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