薬屋の娘エルフィネは、ただひたすらに店を守りたい。~婚約者に捨てられたとしても守りたいものがあるのです~

四季

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後編

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「今日はねぇ、痒み止めお願いしたくてねぇ」
「はい、お出しします」
「息子の分も貰っておいてもいいかぃ?」
「もちろん可能です」
「じゃあお願いしますねぇ」

 婚約破棄後もエルフィネは働き続けた。

 親が戻ってこられるまで薬屋は私が守る! ――それが彼女の志であった。

「ごめんなさい、ちょっといいかしら? この前出してもらった薬についてなのだけれど」
「はい、何でしょうか」
「塗り方について質問があってね」
「何でもお聞きください」

 だからエルフィネには婚約破棄に心折れている暇はなかった。

 放っておいても明日は来る。
 そこで大切になってくるのは、訪れた日をどう生きるかだ。

 悲しみに溺れるなど生産性がない。

 それがエルフィネの考え。
 だからこそ彼女は何があろうとも強く生きられるのだ。

「こういう時ってどういう風に塗ればいいのかしら?」
「ああ、それは、たとえばこういった小さめのへらを使ってゆっくり塗ると――こんな風に上手に塗れますよ」

 淡々と、それでいて活き活きと。

「まぁ! 凄い! そういうへらは売っているかしら?」
「ありすよ」
「本当に! じゃあくれないかしら? 買いたいの」
「何本ですか」
「二本くらい!」
「分かりました。ではおまけで一本多めにしておきます」
「あら! 助かるわ! ありがとうね」

 そんな風にしてエルフィネが守っていた薬屋は、やがて、身体が回復した両親に引き渡された。

「長い間ありがとうなエルフィネ」
「本当に助かったわ」

 両親は文句も言わず働き続けてくれた一人娘に感謝した。

 ちなみにアダンはというと、その後、平常運転に戻った薬屋の看板に謎の液体をかけるといういたずら迷惑行為を繰り返し――六回目の時に現行犯逮捕された。

 そうして社会的に終わったのだった。


◆終わり◆
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