絶望の雨の中、出会った彼と……。~婚約破棄され、始まる関係~

四季

文字の大きさ
2 / 2

後編

しおりを挟む
「取り敢えずこれがあれば濡れませんし!」
「あの……それは、結構です」
「ええ!?」
「私のことは気にしないでください。それに、失礼ですけど、色々あって今は他者と話したくない気分なんです」

 そう返すと、彼は一瞬戸惑ったような顔をしたけれど。

「駄目ですよ! 風邪をひいたら大変ですから!」

 傘を無理矢理押し付けてきた。

「ほら! 何でもいいから、取り敢えずこれをっ」
「えええ……」
「遠慮とかいいですから! 話さなくてもいいので、取り敢えず傘をさしてくださいっ、濡れないように!」

 彼の圧は凄まじいものだった。

 でもこの時はまだ知らなかった――彼が私の未来に大きな影響を与える人であることなんて。


 ◆


 あれから五年。

 驚いたことに、私は、あの日雨の中で出会った彼と結ばれ、今も彼と夫婦として生きている。

「うわー、今日は雨ですか」
「そうみたいね」

 彼と過ごす日々は楽しい。
 穏やかな幸福がそこにはある。

「やだなぁ……あっ!」
「どうしたの」
「でも! 雨の日って、貴女と出会った日を思い出します!」
「ああ……確かにそうね、あの日も雨の日だった……」
「やったー、少し得した気分ですっ」

 ちなみにボーデンはというと、私と別れた後一人の金髪美女と交際していたそうだ。
 しかし、その中で女性に乗せられて全財産を注ぎ込んで事業を起こし、事業の失敗によって一文無しになってしまったらしい。
 しかも、絶望していた最中、女性から「お疲れ。調子に乗ってる男が堕ちて絶望するところが見れて楽しかったわ」と言われ離れられてしまったそうで。
 それによってボーデンの精神は崩壊、彼は完全に壊れてしまったそうだ。

「これからも雨のたびにあの日を思い出すことにしますねっ」
「それはやり過ぎじゃない?」
「いやいや! 初心って大事ですから! そのくらいしておかないとっ」
「まぁそれはそうかもしれないわね……言われてみれば」


◆終わり◆
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

婚約破棄ですか?あなたは誰に向かって口をきいているのですか!?

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私、マリアンヌ・バークレーは王宮の誕生日パーティーでいきなり婚約破棄を言い渡された。は!?婚約破棄ですか?あなたは誰ですの?誰にモノを言っているのですか?頭大丈夫ですか?

好きな人ができたなら仕方ない、お別れしましょう

四季
恋愛
フルエリーゼとハインツは婚約者同士。 親同士は知り合いで、年が近いということもあってそこそこ親しくしていた。最初のうちは良かったのだ。 しかし、ハインツが段々、心ここに在らずのような目をするようになって……。

もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?

四季
恋愛
もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?

婚約破棄して支援は継続? 無理ですよ

四季
恋愛
領地持ちかつ長い歴史を持つ家の一人娘であるコルネリア・ガレットは、婚約者レインに呼び出されて……。

【完結】 嘘と後悔、そして愛

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
伯爵令嬢ソニアは15歳。親に勝手に決められて、一度も会ったことのない10歳離れた侯爵リカルドに嫁ぐために辺境の地に一人でやってきた。新婚初夜、ソニアは夫に「夜のお務めが怖いのです」と言って涙をこぼす。その言葉を信じたリカルドは妻の気持ちを尊重し、寝室を別にすることを提案する。しかしソニアのその言葉には「嘘」が隠れていた……

聖女クローディアの秘密

雨野六月(旧アカウント)
恋愛
神託によって選ばれた聖女クローディアは、癒しの力もなく結界も張れず、ただ神殿にこもって祈るだけの虚しい日々を送っていた。自分の存在意義に悩むクローディアにとって、唯一の救いは婚約者である第三王子フィリップの存在だったが、彼は隣国の美しい聖女に一目ぼれしてクローディアを追放してしまう。 しかし聖女クローディアには、本人すら知らない重大な秘密が隠されていた。 これは愚かな王子が聖女を追い出し、国を亡ぼすまでの物語。

【完結】無能な聖女はいらないと婚約破棄され、追放されたので自由に生きようと思います

黒幸
恋愛
辺境伯令嬢レイチェルは学園の卒業パーティーでイラリオ王子から、婚約破棄を告げられ、国外追放を言い渡されてしまう。 レイチェルは一言も言い返さないまま、パーティー会場から姿を消した。 邪魔者がいなくなったと我が世の春を謳歌するイラリオと新たな婚約者ヒメナ。 しかし、レイチェルが国からいなくなり、不可解な事態が起き始めるのだった。 章を分けるとかえって、ややこしいとの御指摘を受け、章分けを基に戻しました。 どうやら、作者がメダパニ状態だったようです。 表紙イラストはイラストAC様から、お借りしています。

婚約破棄 ~家名を名乗らなかっただけ

青の雀
恋愛
シルヴィアは、隣国での留学を終え5年ぶりに生まれ故郷の祖国へ帰ってきた。 今夜、王宮で開かれる自身の婚約披露パーティに出席するためである。 婚約者とは、一度も会っていない親同士が決めた婚約である。 その婚約者と会うなり「家名を名乗らない平民女とは、婚約破棄だ。」と言い渡されてしまう。 実は、シルヴィアは王女殿下であったのだ。

処理中です...