愛している。貴方にそう言えたなら、どんなに良かったでしょう。~想定外の急展開が待っていました~

四季

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後編

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 ◆


「こんにちは、少し良いですか」

 ある朝、王子が部屋へやって来た。

「え……」
「失礼でしたね、申し訳ありません急に」

 まさかの展開に驚く。
 そして、それと同時に心臓が破裂しそうな感覚に見舞われる。

 こんなにも緊張するにはいつ以来だろう……。

「い、いえ」
「お話があるですが」
「あの、えっと……すみません、私、何かやらかしていたでしょうか……?」

 胸もとから伝わってくるバクバクという深い音はまだやまない。

「そうではなく」
「違いましたか」
「ええ。実は貴女に重要なお話がありまして」
「まさか、クビ!?」
「落ち着いてください違いますよ」
「は、はい……」

 ようやく少しばかり落ち着いてきた、というところで。

「実は先日、婚約破棄されまして」

 彼はそう明かした。

 え――、と、そう思っても口からは出せない。

「それで、相手を改めて探すこととなったのですが」
「そ、そうなのですか……」
「貴女はどうかと、考えておりまして」

 彼の口から出てきたのはまさかの言葉。

「えええええ!!」

 耐えきれず、大声を出してしまった。

「すみませんね驚かせてしまって」
「い、いえ……」

 声を出してしまったことについて責められることはなかった。

 でも、どうしても、まだ信じられない。

 嘘をつかれているのでは?
 騙して遊ぼうとされているのでは?

 なんて考えてしまう。

 彼がそんな悪質な男性でないことは知っているはずなのに。

「実は以前から貴女に興味があったのです。いつも真面目に真剣に仕事をしていらっしゃる、その姿に密かに惹かれていました」
「冗談……です、よね……?」
「いえ、本気です」
「嘘でしょう……」
「急に伝えて驚かせてしまったことは謝ります、それは事実ですし。ただ、本当に、これは冗談やら嘘やらではないのです」

 こうして私の人生は動き出す。

「共に生きてはくださいませんか」

 思わぬ方向へと。

「……はい。えっと……まだ少し頭が追いついていません、が……その方向で考えさせてください」


 ◆


 あれから数年、私は王子の妻となり共に王城にて暮らしている。

 彼はいつか王となるだろう。
 そうすれば私は王妃になる。

 私のような人間に務まるのだろうか……。

 しかし彼は「大丈夫、できる」と言ってくれているので、今はその言葉を信じて歩もうと思っている。

 愛する人からの大丈夫という言葉、それは何よりも強いものだ。


◆終わり◆
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