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前編
しおりを挟む「俺、クリスピア! お前の婚約者になる男だ、よろしくな!」
私たちが出会ったのは共に二十一歳であった時だ。
出会った時には既に婚約が決まっていた。そんな私たちではあったけれど、でも、それなりに仲良くしていこうと思ってはいて。だからこそ、明るく前向きに、共に歩こうとはしていた。
――でもそのうちにクリスピアが冷めて。
「俺さ、好きな人できたんだ。だからそっちと結婚するわ。ごめんな? けど、俺、自分のやりたいように生きたいからさ!」
「えっ」
「それに、お前だってべつに、相手俺じゃなくてもいいだろ?」
「えっと、その、それはつまり……?」
するとクリスピアはへらりと笑って言い放つ。
「婚約、破棄な!」
彼は非常に軽いノリでそんなことを言った。
婚約破棄とは人生に大きな影響を与えるものだ、それをこんな簡単にそれもへらへらしながら言えるなんて……どうかしている、申し訳ないがそう思ってしまう。
「えええ……」
「何だよ急に、離れるの嫌なのか?」
「婚約破棄なんて……そんな、そんな軽いノリで言うことではないのでは……」
一応そう言ってみれば。
「え、何で?」
彼はまたへらりと笑った。
「べつにいいじゃん」
「え……」
「てか、前もって伝えておいただけ偉いだろ?」
「何ですかそれ!?」
「うるせぇなぁもう! 何でもいいだろうが、放っておいてくれよ。俺はお前の子どもじゃねえんだぞ!」
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